17女性は男からの視線を感じ取るらしい

元カノの澪と会って、いろいろと話したことで、気分が晴れた。


「復縁」という言葉が飛び出したときは、ちょっと焦ったけど。

冗談だったようだ。


「後輩ちゃんと何かあったら、すぐに教えなさいよー」

別れ際、澪はそんなことを言っていた。

何もあるわけがない!そう思っていたのだが。


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仕事も片付いたし、さて、帰ろうか。

俺はノートPCをパタンと閉じて、伸びをした。


帰ったら久々にFPSゲームでもしようかな。

それともマイクラかな。

平和な気分だった。

しかし俺の心の平和は脅かされる運命なのだろうか。


「あ・お・や・ま・さ~ん」

二条さんの声だった。

「なんでしょうか」

俺は椅子に座ったまま、くるっと振り返って、二条さんを見上げた。


セクハラ疑惑を盾にされても、もう俺は怯まないぞ!そんなふうに思っていた。

困ったり怯んだりするから、ドS女はつけあがるのだ。


「今日、おヒマですか」

「家でやることがあって、ヒマじゃないよ」

きっぱりと断ったつもりだったのだが。

「やることって、どうせゲームとか映画観るとかでしょ。そんなことより大事な話があるんです」


俺の神聖な時間、ゲームと映画の時間をバカにするとは!

しかし大事な話ってなんだろう。


「大事な話?仕事の話だよね」

「まぁそうです。江島さん......クマさんに関することです」

「クマさん!?」

もしかして、太郎丸事件のことを、二条さんはなにか知っているのだろうか。

「まって、ヒントくれる?クマさんの何に関する話だよ?」

「ここ最近のクマさんの行動についてです」


これ以上は二条さんも「ここでは話せない」と言った素振りを見せた。


「わ、わかった。時間は作る」

クマさんの話なら、聞かなければ後悔しそうだ。


二条さんは、社内外問わず上層部でしか知り得ないような情報も、持っていると有名だった。

もしかしたら、クマさんが本当に島流しの刑にあうのかどうかも、知っているのかもしれない。


「それじゃあ、30分から1時間後くらいに、前に飲んだ渋谷の店で待ち合わせましょう?」

「あの店?うーん......」

俺は戸惑った。

アルコールを飲むとろくなことがない。

しかも渋谷は俺の家の近くだし、またもやウチに来たがったら厄介だと思った。


「いや、待ち合わせは駅前のCAFEにしよう!」


俺の提案に、二条さんはクスッと笑うと

「そんなに私のこと、怖いですかぁ?いいですよ駅前のCAFEで。じゃ、近いからきっちり30分後」

と言って立ち去った。


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駅前のCAFEには俺が先についた。

なんとなく向かい合って座るのは危険な気がしたので、窓際のカウンター席を陣取る。

ソイラテを頼んで、カウンター席で飲み始めたところで二条さんがやってきた。


二条さんは俺のほうに視線を向け、「ちょっとまってて」と合図すると、レジに並んだ。

飲み物を買うのだろう。

列に並んでいる彼女をボンヤリと眺める。


彼女は今日はグレーのパンツスーツにストライプのシャツだった。

体のラインに沿ったスーツで、彼女のスタイルの良さが強調されているように見えた。

オーダーメイドなのだろうか。

靴は低めのヒールで、傷や汚れはない。

ストレートの長い髪もきれいに整えられている。

営業として身だしなみに気を使っているのが分かった。


スタイルがいいし美人で、社内でも人気がある。

だけど人をいじめるのが好きで、嘘も平気でつく。

そして俺にしつこく迫ってくるのは「お金が好きだから」


会計が終わり、飲み物を持った二条さんが、俺の方にやってきた。

「いま、ずっと紗英のこと観察してましたよね~。嬉しいぃ」

「別に見てないし!」

二条さんは後ろにも目があるんだろうか?

俺は慌てた。

「男に見られてるって女性には何となく分かるものなんですよ?」

二条さんは首をすくめてクスクス笑った。


「それより本題!クマさんについてなにか情報があるとか?」

「情報というより疑惑かなぁ?ホントはアルコールが欲しいとこだけど、思い切って聞いちゃおう」

「なんだよ?」


「青山さんって、クマさんと付き合ってるんですか?」

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