12月22日 朝

 翌朝。迷は、部屋にいても息苦しくて億劫だからと、家の周辺をぶらぶらと歩くことにした。日が出ていたので昨日の晩よりかは暖かったが、それでも寒い事には変わり無かった。


 今朝乾燥機にかけたばかりのマフラーを首に巻き、昨日と同じコートを身につけ、玄関に向かう。


「あ、昨日鍵掛けるの忘れてた」


 昨日は自暴自棄になっていたため気づかなかったが、どうやら鍵を閉めるのを忘れて爆睡してしまったらしい。


 一応空き巣にあっていないか確認する。3段の木の引き出しがついた棚を確認する。いつも1番下の段に、大切なものをしまってあるのだ。


「通帳に、小遣い……それに印鑑とパスポートと……よかった、全部ある」


 ほっと胸を撫で下ろした迷は、改めて家を出ようと腰をあげた。


 と、その時。グリ、と足で何か固いものを踏んだ感触がした。足を退けてみると、床には黒色の小さいビニール製の袋があった。口は可愛らしいピンク色のリボンで結ばれている。


「なんだ、これ」


 身に覚えのない持ち物だった。床から拾い上げ、まじまじと見る。何か買い物をしたのだろうかと、迷は少し首を傾げた。


 商品名とかは書いていなさそうなので、コンビニとかで買ったとか、そういう感じではなさそうである。


 とりあえずリボンを外し、中を確認してみることにした。


 中から出てきたのは……個包装の、茶色い固形物だった。固形物と言っても、見覚えのある立方体形。それが7、8個入っていた。


「チョコ?」


 そういえば、もうそろそろクリスマスの時期な気がする。ああ、もしかしたら、街で無料配布みたいなのをやっていたのかもしれない。店のクリスマスシーズンの商品を買って欲しくて、試食サービス的な感じ。


 それにしては、袋の色が黒色というのはなんとも微妙であるが。


 試しに1つ、口に放り込む。


「………?なんか変な味」


 チョコってこんな……味だったっけ?


 味を表現しようとするとなんか難しい。だが少なくとも、普通のチョコとはなんか違うような……。チョコレートの種類が違ったりとかするのだろうか。


「まぁ、いっか」


 ついでにもう1つチョコを食べて、迷は鼻歌を歌いながら家を出た。

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