証言24 フェンリル(笑)(証言者:JUN)

 アトラクションの数だけ、死闘とドラマがあったのかな?

 

【全アトラクションのボスキャラクターが撃破されました】

 

 ……だ、そうだ。

 そして。

 僕らはちょうど、海のあるエリアに来てたんだけど。

 何か、途方もないデカブツが、即席の滝みたいになって飛び上がった。

 最初は軍艦でも出現スポーンしたのかと思ったけど……水のヴェールを滑らせたそれは、

 

 四足歩行の巨獣に似たフォルムの、青と黒を基調としたカラーリングの巨大メカだった。

 

 まあ、この世界観でラスボスにするなら、やっぱだよね。

《ならず者どもが! 調子に乗るのもそこまでだ!》

 パイロットであろう、威勢の良い罵声。

 そういや、このゲームじゃ僕ら側の方がならず者の無法者なんだっけ。

 気を抜くとすぐに忘れてしまう。

《この“フェンリル”が蘇った以上、お前らは死ぬしかない!》

 ホント、運営やる気なさすぎない? もう少しマシな台詞を考えようよ。

 何? クエストのシナリオ、わけのわからない会社へ外注したの? 

 まともな話を書けるヒトなら、寝ぼけててももう少し良いもの書けるでしょ。

 と言うか、言うに事欠いて“フェンリル”って、あんた。

 いや、メカの機体名だから別にどんな名前付けても自由だけどね?

 ……なーんか、引っ掛かるんだよね。彼らヴァルハラ・クルセイダーズ(笑)のネーミングセンスって。

 賭けてもいいけど、彼ら、フェンリルの元ネタろくに知らないでしょ。

 北欧神話のちょー強い狼って程度が関の山だ。

 で、どうやって倒すんだろうね? これ。

 “フェンリル”が津波もかくやの飛沫をあげて、凄まじい推進力でぶっ飛んだ。

 四足で薙ぎ倒す。

 口から火炎放射。

 バルカン砲の雨嵐。

 ま、安直に冷凍弾とか出してこなかっただけ、誉めてあげようかな。

 フェンリル=氷って、当の神話にはどこにも書いてないらしいからね。

 フェンリルとは別方向から、乾いたがした。

 あれは……ミサイルランチャーかな。凄いのが出てきたもんだ。

 巨大メカだって所詮は鉄とかの常識的な金属でできた、人工物だ。そして、複雑な機関の塊でもある。

 実在すれば全身これ、弱点だらけだろう。

 バルカン喰らって「なにぃ!? 無傷だと! なんて装甲だ!」とか、ないない。

 従って、あのミサイルが命中すればタダでは済まないだろう。

 フェンリルが、後出しの迎撃ミサイルを発射。

 ぶつかり合った弾頭二つは空中で爽やかに爆散した。

「さて、僕らはどうしよう?」

 一応、傍らの相棒に聞いてみた。

「……自分達に出来る事は、何も無い」

 ですよねー。

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