紅鼠色 #A06F70
「……こんばんは」
下手くそな笑顔を浮かべた藍は小さく挨拶をする。
「こんばんは、お久しぶりです」
そんな藍にフワッと笑いかけた
「今日も星が綺麗に見えますね」
「晴れててよかったよ」
せっかく会うのに見えないんじゃ残念だからね、と藍はそのまま寝転がった。大きく息を吸った藍はそのまま大きく息を吐いた。目を閉じた藍の横顔を紅鼠は眺める。そして何かを思った紅鼠は藍と同じように寝転がって星空を眺めた。
しばらくの沈黙の後、藍は口を開いた。
「ねえ、お願い聞いてもらっていい?」
「なんですか?」
『殺してほしい』
そう言おうとした藍は言いかけて口を再び開いたが肝心の声が出ていない。
「どうしました?」
「……殺してほしい」
絞りだされたその声はあまりにも小さくて星空に虚しく消えていった。そんな声でも聞き逃さなかった紅鼠は驚いたように身体を起こした。
「なんて、言ったんですか」
「……殺してほしい。私を」
「なんで、なんでですか。なんでそんなこと言うんですか」
目を逸らしたまま起き上がった藍はうつむいたまま言葉を繋げる。
「……ずっと、もうずっと苦しいの。みんなとの時間を壊してから、貴方を私の勝手な理由で傷つけて、生きるのがしんどいの、つらいの。お前のせいでって責めてほしかったの。みんなに責められて死ぬのが一番楽になれると思ったの。ねえ、なんであのとき私を責めてくれなかったの?」
「貴方を責める理由がなかったからですよ。貴方のせいではなかった。みんな今よりも子供だったから、だから」
「やめて、聞きたくない。私が悪かったの、私のせいだったの。そうずっと言ってるじゃん。なんでわかってくれないの?」
「なんでって貴方は、」
うるさい!という荒ぶった藍の声が響く。その声にビクッと肩を震わせた紅鼠。紅鼠の目を見た藍の目は涙をいっぱいに溜めていた。
「……貴方は、悪くなかったんですよ。みんなそう言っていたでしょう?それが俺を含めた貴方の言う『みんな』の答えなんです。それに」
言葉を止めた紅鼠は藍の目をまっすぐに見つめる。
「俺に貴方は殺せないです」
そう言ってボロボロとこぼれ始めた藍の涙を紅鼠は優しく拭う。
「私は、殺されたい。みんなに殺されたいだけなんだよ」
『だから殺して』
そう言う藍に紅鼠はごめんなさい、としか返さなかった。
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