第256話 閑話ークリスマス

1番最初に投稿した時はちょうどクリスマスでした。季節外れにはなりますが、そのまま投稿します。


   ◇ ◇ ◇


「じんぐっべぇ〜りゅ じんぐっべぇ〜りゅ しゅっじゅがぁなりゅう〜♪」


 ここはヘーネの大森林にあるベースの1つだ。ハルが歌を歌いながら何かしている。

 どうやらクリスマスツリーに見立てて、木に飾りを付けているらしい。シュシュの背中に乗って。

 ハル手作りの飾りなのだろう。不恰好で小さくて、飾りには見えないかも知れないが、ちゃんと星形になっている。


「ハル、何しとるんだ?」

「じーちゃん、くりしゅましゅら」

「ん? 何だそれは?」

「前の世界れのいべんちょら。1人の神が降臨した日を記念しゅりゅおまちゅりら」

「ほう、神か」

「ん、おりぇがいた国の神じゃないんらけろな」

「自分の国の神ではないのに祝うのか?」

「ん。いべんちょら」

「ほう、変わった事をするもんだな」

「ケーキ食べて、チキン食べて、良い子達はさんたくりょーしゅから、ぷれれんとをもりゃうんら」

「平和な国だったのだな。ハルは何を貰ったんだ?」

「貰ったこちょねー」

「ハル……」

「何なの? ハルちゃん、可愛そうじゃない!」

「いいんら。気にしてねー」

「そうか。じゃあじーちゃんがプレゼントを用意しような!」

「ハルちゃん、良かったわね!」

「ほんちょか!?」

「ああ、何が欲しい?」

「ん〜……なんもねーな」

「ないのか?」

「ん、ねーな」

「ハル、じゃあプレゼントできんぞ?」

「みんられ一緒にりゅしかの飯食えるのが1番いいな」

「ルシカの飯か? いつも食っているだろう」

「けろ、しょりぇが1番いい」

「そうか、じゃあアヴィーも連れてこよう」

「ん。じーちゃん、ありがちょ!」

「ハルちゃんたら、欲がないんだから」

「らって、しゅしゅ。みんな一緒に食べりゅのが1番いいじょ」


 早速、長老はアヴィー先生を迎えに転移して行った。

 前世、プレゼントを貰った事がないとハルは言った。しかも、気にしていないと。何て不憫なんだ。泣けてくるぞぅ。


「ハル、鳥を捕まえてきたぞ!」


 リヒトが狩に出ていたらしい。リヒトもハルの為にクリスマスをするつもりなのだろう。


「りひと、デカイ!」

「リヒト、それアウルベアじゃない!」

「ああ、もも肉が美味いぞ!」

「あたし大好物よ!」

「ベア? 熊なのか?」

「鳥と熊だ」

「ま、いっか。けろ、デカイな」

「おう。ベースの皆で食べれるぞ」

「いいな、しょりぇ」

「だろう? 今日の夕飯は皆でパーティーだ!」

「おう!」

「ハルちゃん、あたしも食べたいわ!」

「当たり前ら! しゅしゅも一緒ら」


 クリスマスのチキンの代わりにアウルベア。何て発想だ。シュシュの好物らしい。


「ルシカに言って丸焼きにしてもらおうぜ!」

「丸焼き!?」

「素敵! 丸焼きなんて絶対に美味しいわ!」


 ハルとシュシュが目をキラキラさせている。まあ、ハルが嬉しそうだらから良しとするか。

 2人とシュシュは仲良くベースに入って行く。さて、そのルシカはと言うと、厨房にいた。


「リヒト様、どうでした?」

「ああ、アウルベアを狩ってきたぞ!」

「それは凄いですね! ハル、美味しいですよ」

「しょうなのか?」

「ええ、丸焼きにしましょう。皆で食べても残る位ですね」

「しゅげーな! りゅしか、いい匂いがしゅりゅじょ」

「ええ、クリームシチューを作ってました。ハル、好きでしょう?」

「しゅき! やっちゃ!」


 良かったなぁ、ハルちゃん。嬉しそうだ。


「ハルちゃーん! どこ行ってたんや!?」


 カエデがやって来た。


「かえれ、しゅしゅと外にいたんら」

「何してたん?」

「木に飾り付けしてたんら」

「え? 木に? 何で?」

「カエデ、クリスマスって言うのよ」

「シュシュ、それ何なん? 新しいおやつか?」

「違うわよ! 美味しいものを食べるの!」


 シュシュ、分かっていない。食べるのがメインじゃないぞ。神が降臨した記念のお祝いだぞ。


「ちょっちちげー」

「でもハルちゃん。みんなでアウルベア食べるんでしょう?」

「そうらけろ、ちげー」

「ま、細かい事はいいじゃない!」

「ん、いいけろな。ちげー」


 ちょっと、腑に落ちないハルちゃん。


「ルシカ、今日は外で食べようぜ。丸焼きしなきゃなんねーし」

「そうですね」

「俺、準備しとくわ!」

「りひと、おりぇも手伝うじょ!」

「自分もや!」

「あたしも行くわ!」

「おう!」


 リヒトが、張り切っているぞ。大丈夫か?

 それから外に出て、皆で羽を毟って、血抜きしてと丸焼きの準備をしていた。


「しゅげーな! この羽も使えそうら」

「ああ、売れるぞ」

「売れんのか!?」

「ハルちゃん、アウルベアは羽も肉も売れるんやで」

「しょうなのか?」

「そうやで。羽も高値で売れるし、肉は美味しいし。お金になる魔物やな」

「へぇ〜」


 おや。もう長老がアヴィー先生を連れて戻ってきたぞ。


「ハル、来たぞ」

「ハルちゃん! イベントですって?」

「じーちゃん、ばーちゃん!」

「なんだ、長老にアヴィー先生。知ってたのかよ?」

「いや、知らなんだ。さっき、ハルに聞いたんだ」


 それにしては、戻ってくるのが早い。


「ハルちゃん、プレゼントを持ってきたわ」

「ばーちゃん! おりぇにか!?」

「もちろん、そうよ!」

「めちゃ、嬉しい! ありがちょ!」


 正確には、子供が寝ている間にサンタクロースが枕元へ置いておくのだぞ。


「ハルちゃん、良かったわね!」

「しゅしゅ、ありがちょな」

「え? 何? 何?」


 そうだ、カエデは何も知らない。


「カエデちゃんにもあるわよ」

「え? 何で? 誕生日とかとちゃうし」

「かえれ、くりしゅましゅら! みんなで美味しいの食べりゅんら。良い子は、ぷれれんとを貰えりゅんら」

「そうなん!?」

「だからね、カエデちゃんにもプレゼントよ」

「嬉しいにゃぁ!」


 その日の夕食は、長老とアヴィー先生も一緒にベースにいる者全員でアウルベアの丸焼きを食べ、ルシカのシチューを食べた。


「んまいなぁ……」

「やだ、ハルったら夢でも食べてるわ」

「ミーレ、ハルは今までプレゼントを貰った事がないんだそうだ」

「え? 長老。でも、クリスマスって子供はプレゼントを貰うんでしょう?」

「それが、貰った事がないと言っていた」

「こんなに可愛い子に……」

「ワシ達がその分も可愛がってやるさ。可愛い可愛いハルだからな」

「そうですね」


 ハルはどんな夢を見ているのか? この世界にやって来て幸せだと思っているだろうか?

 リヒト、ルシカ、カエデ、シュシュ、長老、アヴィー先生が見守る中、ミーレに抱かれて眠るハル。

 クリスマスらしい感じは、ハルがちょこっと飾り付けた木位しかないのだが。

 ハルの希望通り、皆で賑やかな夕食だった。リヒトが張り切ってアウルベアを狩ってきたから、ご馳走だった。ハルもほっぺを膨らませて沢山食べた。今は、夢の中だ。

 ハルを大切に思う者達に囲まれて。今世は、どうか幸せに。

 Merry Xmas !

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