第243話 アンデッド討伐

「他に回復が必要な者はいないか?」

「エルフの兄さん! こいつを見てやってくれ! 麻痺らしくて身体が動かねーんだ!」

「おう」


 リヒトとハルが回復して、ルシカとイオス、ミーレでポーションを配っている。


「ハルちゃん、もう大丈夫とちゃうか?」

「かえれ、しょう?」

「うん、もうみんな回復したんとちゃうかな」

「なあなあ。お前、いくつだ?」


 ちびっ子がハルに話しかけて来た。誰かに付き添っていたのだろう。


「おりぇは3歳ら」

「そうか。おれは5歳だ」

「ふーん。やりゃりぇたのか?」

「おれじゃねー。おれの父ちゃんだ」

「らいじょぶか?」

「ああ。さっきあっちの兄ちゃんが治してくれた」

「しょっか。良かったな」

「おう。お前も魔法使えんだな」

「使えりゅじょ」

「すげーな。遠くから来てくれたんだろ?」

「ん、しゅぐら」

「そうか?」

「ん」

「ありがとな」

「どーってこちょねー」

「けど、ありがとな。父ちゃん助けてもらった」

「良かったな」

「おう」


 ちびっ子同士、微笑ましい。


「ハルちゃん、終わったみたいやで。行こか」

「ん、かえれ。しゅしゅは?」

「ミーレ姉さんが抱っこしてるで」

「しょっか」


 ハルがカエデと手を繋いでトコトコと歩く。


「ありぇらな」

「ん? ハルちゃん、どうしたん?」

「セイレメールから帰ってきてかりゃ、しゅしゅに乗ってたかりゃ」

「ああそうやな。ハルちゃんずっとシュシュに乗ってたな」

「面倒らな」

「え? 歩くのが?」

「ん、浮かねー」

「ハルちゃん、もう海の中とちゃうからな」

「しょうらな。杖れ飛ぼうかな」

「ハルちゃん、それはやめとき。絶対にルシカ兄さんに叱られるで」

「しゃーねー」


 ハルちゃん、だからずっとシュシュに乗っていたのか。歩くのが面倒なのか? いや、重力か? 駄目だぞぅ。ちゃんと自分の足で歩かないとな。

 それから、夜までリヒト達でアンデッドの倒し方を冒険者や兵達に教えたり訓練をしたり。ハルはいつも通りマイペースでお昼寝したりシュシュと遊んだりしていた。

 夜になったらアンデッド討伐だ。


 ――エルフの兄さん! 俺達も行くぜ!

 ――そうだ! 俺達の街だからな!

 ――俺達も守るんだ!

 ――おおーッ!


「あー、勢いがあるのはいいんだけどな。お前達倒し方覚えたか? 1撃くらわせたら直ぐに止めの1撃で倒すんだぞ」


 ――おう! 大丈夫だ!

 ――ああ! 倒し方さえ分かったらこっちのもんだ!


「無理すんじゃねーぞ!」


 ――おおーッ!


 皆、やる気だ。リヒト達に色々教わって倒す気満々だ。


「ポーションが必要になったら直ぐに使うんだ! 足りなくなったら近くにいる俺達の誰でもいい、言ってくれ!」


 さあ、アンデッド討伐開始だ。領主邸を出て街に向かう。途中でもアンデッドと遭遇した。やはり、夜になると所構わず出る様だ。兵や冒険者達が危なげなく倒していく。


「元々そう強くはないからな。倒し方さえ分かっていたら苦労はしないだろうさ」

「じーちゃん、れも数が多いな」

「そうだな。どこから湧いてくるのやら」

「長老、何だこの数は!?」

「異常だな」


 街に出ると彼方此方にアンデッドが徘徊していた。スケルトンだけでなく、レイスにゾンビまでいた。これでは、家から出られなくて当然だ。


「リヒト、倒しながら墓地に向かってみるか」

「おう、そうだな」

「しかし、面倒だな……」


 そう言いながら長老が詠唱した。


「ピュリフィケーション」


 辺り1面が白い光に包まれると、アンデッドが消えていった。


 ――おおー!

 ――スゲー!


「じーちゃん、しゅげーな!」

「そうか? アハハハ。つい面倒でな」


 長老、面倒になって詠唱1発でアンデッドを大量に瞬殺か? やはり長老は規格外だ。


「じーちゃんに負けてらんねー」


 と、ハルもまた詠唱する。


「ぴゅりふぃけーしょん」


 また辺りのアンデッドが光と共に消えた。


 ――おおー!

 ――ちびっ子、スゲーじゃねーか!

 ――俺達も負けてらんねーぞ!


「ふふん」


 ハルはちょっとドヤっている。

 ヒューマン達も負けじと物理攻撃で倒していく。


「まあ、なんとかなりそうだな」

「ああ。倒し方さえ分かればな」


 長老達は少しずつ墓地に向かって移動して行く。


「まさか、ネクロマンサーがいたりしねーよな?」

「リヒト、それはないだろう?」

「でも、長老。この数だぜ?」

「ああ、だが統率が取れていない」

「それもそうだ」


 話しながらも、どんどんアンデッドを倒していく。


「はろーけん!」


 ――ピュゥ〜……ポン!


「ハル、またやってんのか?」

「りひと、あんれっちょ倒してんら」

「そんなんで倒せんのかよ?」

「当たり前ら! 見てりょ! はろーけん!」


 ――ピュゥ〜……ポポン!


 一瞬でアンデッドが消えた。ハルちゃん、やるじゃん。


「えぇッ!?」

「ハル、それは何をしたんだ?」

「魔力を飛ばしてんら。前に遊んれた時より多めにら」

「なるほどな。ハルは色々考えるなぁ」

「じーちゃん、こりぇの方が魔力使わねーじょ」

「そうなのか?」

「ハルちゃん、ほんなら自分も倒せるんか?」

「かえれ、しょうら。らから、はろーけん覚えたんら」

「マジ!? ハルちゃん凄いやん!」

「ふふん」


 本当なのか? 偶々やってみたら倒せちゃった、みたいな感じなんじゃないのか?


「かえれ、やってみりょ。前よりちょっと多めに魔力を込めりゅんら」

「よし! やるで! はどーけん!」


 ――ピュゥ〜……ポンッ!


 本当に、アンデッドが消えた。


「おお! カエデ、やるじゃねーか!」

「やった! できたわ!」

「当たり前ら。練習したんらから」


 討伐だと言うのに、緊迫感がまるでない。それでも、倒せてしまうのが何とも言葉がない。カエデも魔法を覚えて一段と強くなった。

 

「遊んでないでさっさと倒しちゃいましょう!」


 ミーレが魔法の鞭で、バッシバシと倒している。


「うわ、ミーレ姉さんちょっと引くわぁ」

「らな……」

「何よ、カエデ」

「鞭が似合い過ぎてるやん」

「どう言う意味よ」


 ミーレ、皆が納得しているぞ。うんうん。超お似合いだ。

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