第237話 閑話 ハル視点 2
俺がこっちの世界に来てから色んなところへ行った。
そして、コハルだけじゃなく俺にも仲間ができた。仲間だよ。前世では仲間と呼べる様な奴はいなかった。
俺の保護者としてリヒト。リヒトの従者でルシカ、侍女のミーレ。執事見習いのイオス、それからカエデやシュシュも仲間になった。
毎日毎日、賑やかだ。特にカエデとシュシュだ。それが、慣れない筈なのに何故か心地良いんだ。心が温かくなるのが分かる。こんなの初めてだ。
誰も俺の事を色眼鏡で見たりしない。下心で接してきたりしない。それが、俺には新鮮で嬉しいんだ。
カエデは奴隷だった。初めて会った時に精霊眼で見てしまった。助けたかったんだ。前世の自分と重ねて見てしまう事があった。日本には奴隷制度なんてなかったけど、ある意味俺は母親の奴隷だったから。
リヒトがカエデの奴隷紋を消して仲間になった時、ホッとした。
俺がリヒト達と出会って変われた様に、カエデだってこれから変われるんだ。一緒に楽しく過ごすんだ。カエデも幸せになるんだ。
きっと大丈夫だ。みんなが一緒にいるから。
シュシュは死にかけているところを助けた。瀕死で今にも呼吸が止まってしまいそうだった。毒の影響と何日も食べていないせいでガリガリだったシュシュ。
今はしなやかな筋肉がついて超カッコいい。毎日一緒に寝て、遊んでおやつを食べて。シュシュは俺から離れようとしない。
コハルと同じ様に加護してくれているかららしい。じゃあ、同じ様に加護を与えたリヒトはいいのか? て、聞いた事がある。そしたらシュシュは……
「リヒトは大人だからいいのよ。あたしはハルちゃんといるの」
て、言ってた。アハハハ、シュシュらしい。コハルとシュシュ。いつも一緒だ。
遊ぶ時も、ルシカに叱られる時も一緒だ。ルシカはちょっと心配性なんだよ。
そして、俺にも家族ができたんだ。
曽祖父ちゃんと曽祖母ちゃん。蘭祖母ちゃんの両親だ。
初めて会った時から無償の愛情を俺にくれる初めての家族。
理不尽な事を言わない。管理しようとしない。束縛しない。
それどころか、曽祖父ちゃんと一緒に各国を回った。普通、こんな幼児を連れて行くか? て、とこでも連れて行ってくれた。
俺を見て涙を流した曽祖父母。一緒に笑ってくれた。嬉しい。素直に嬉しかった。
リヒトの家族も可愛がってくれる。俺とは血の繋がりも何もないのに有難い。
曽祖父ちゃんに連れてってもらって、ドワーフの国に行った。本当にいるんだ、て感じだ。
そうそう、忘れてはいけない。ドラゴンの国だ。ドラゴンの背中に乗せてもらった時は興奮したよ。だって、ドラゴンだぜ?
あのドラゴン! ファンタジーだ! 超カッコよかった! また絶対に龍王様達やおばば様に会いに行くんだ。
ファンタジーと言えば、俺の存在自体がファンタジーそのものだ。だって、転生しちゃったし、ハイエルフだし。ちびっ子だし。アハハハ、笑っちゃうよな。
俺はこの世界に来て初めて知ったんだ。
人は温かくて安心できるんだって。こんなに、冗談を言って甘えた事なんてなかったよ。俺は俺のままで、自然でいられるんだ。それが、とても嬉しい。
次はどんな場所へ行くんだろう? どんな場所だって何があっても大丈夫だと思える。だって、俺にはもう仲間がいるから。
今はそう思えるんだ。
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