第228話 巨岩撤去 2

「うわ、マジ硬いな!」

「イオス、慎重にですよ」

「ああ、ルシカ」


 ルシカとイオスの2人が土属性魔法で固まっているマグマを崩そうとする。が……


 ――ピシッ……!


「あ、やべーじょ」


 根元に土属性魔法をぶつけた影響で巨岩に亀裂が生じてしまった。


「ルシカ、イオスちょっと待て!」

「じーちゃん、亀裂が入ったじょ」

「ああ、こりゃいかん」

「マジかよ」

「リヒト、そりゃそうだ。振動が伝わるんだろうよ」

「じーちゃん、上半分にしよう」

「そうするか」


 長老とハルの乗ったモラモラが巨岩を伝って上昇して行く。丁度、巨岩の半分位のところで止まった。


「長老様! 一旦避けて下さい!」


 どうしたのだろう? ウージンが下から叫んでいる。


「メガロドンです! こちらに突進してきます!」

「ハル、捕まっているんだぞ」

「ん、じーちゃん!」


 長老とハルがウージン達のいる下の方へ慌てて避けた。すると、皆の頭上を10メートルは超えているだろう巨体が猛スピードでドーン! と大きな音を立てて巨岩に体当たりしてきた。


「ウージン殿、あれは何だ?」

「メガロドンと言います。魚の群れを追っていたのでしょう。避けていれば追いかけてくる事はありません」


 ウージンが言った通り、メガロドンはそのまま通り過ぎて行った。だが……巨体が体当たりしたせいで巨岩に入っていた亀裂がどんどん広がっていく。


「じーちゃん! やばい!」

「ああ! ハル、しっかり掴まれ!」


 長老が大急ぎで上昇して行く。その間にもどんどん亀裂が広がっていく。

 上の方からバラバラと岩が崩れて破片が落ちてくる。


「ハル、無限収納だ!」

「おう! じーちゃん!」


 ハルが片手を向けて落下してくる岩の破片を無限収納へと収納していく。

 そのうち、メガロドンが体当たりをした部分からゆっくりと巨岩が割れ倒れだした。ゴゴゴゴと大きな音を立てて巨岩の上部が倒れていく。


「ハル! 長老!」


 思わずリヒトが2人の名を叫ぶ。


「ハル! いけるか!?」

「じーちゃん! らいじょぶら!!」


 ハルが倒れてきた巨岩を一気に無限収納へと収納していった。


「ひゅぅ~、びっくりしちゃ~!」

「ハル、よくやったぞ!」

「たいしたこちょねー」


 おや、ハルは余裕だったらしい。だが、驚いた。皆、冷や汗が出た。


「さっさと収納してしまおう。ハル、切るぞ」

「しょうらな。また来たりゃやばい」


 どうやら長老が巨岩を真横にぶった切るらしい。


「ウォータカッター」


 大きな鋭い水の刃が巨岩に向かって飛んだ。海中だから、水属性魔法は有利だ。


「ハル! 切ったぞ!」

「じーちゃん、おっけーら!」


 長老が放った水の刃が巨岩を切り裂いたであろう瞬間、ハルの無限収納へと消えて行った。


「あの2人、マジ半端ねーな」

「普通、一発のウォータカッターでこの岩を切りますか?」

「アハハハ、長老位だろう」


 下で見ていたリヒトとルシカが少し驚いている。普通は切れないらしい。

 その普通ではないウォータカッターを放った長老と、ハルが戻ってきた。


「リヒト、切れるぞ。何回かに分けよう」

「いや、長老。こんなの切れるのは長老位だぞ」

「何を言っとるんだ。これ位できんでどうする」

「えぇー、マジ無理だって!」

「え、りひとって出来ねーやちゅらったのか? 残念らな」

「ハル、言い方! 俺だってできるさ!」


 リヒトが駄々っ子に見えてきた。頼むよ。君はね、イケメンのヒーロー枠なんだ。


「まあ、やってみっか」


 そうそう。頑張ってほしい。


「亀裂が入っている部分は切ってしまおう」

「長老、どれくらいだ?」

「ハル、どうだ?」

「亀裂ギリギリんちょこれ切りょう。しょこらへんら」


 ハルが指差す。長老がハルを乗せて移動する。


「リヒト、思いっきりやれ! 切ると同時に収納するからな」

「おう! ウォータカッター!」


 長老が放ったよりは幾分か小さめだが、それでも一気に巨岩を切り裂いた。


「よし! いい感じら!」


 ハルが無限収納へ収納して行く。


「何がどうなっているのやら?」

 

 見ていたウージンが驚いて呟いている。そりゃそうだ。まさか、巨岩を切るなんて考えつかない。その上、切った瞬間に岩が消えている。ハルがタイミング良く無限収納に収納しているだけなのだが、知らない者が見れば訳が分からないだろう。ルシカが説明をしている。


「ウージン殿、長老とリヒト様が魔法で巨岩を切っているのです。それにハルがタイミングを合わせてそのまま無限収納へ収納しているのですよ」

「はあ、その……あんなに簡単に切れるものなのですか?」

「いえ、長老とリヒト様だからでしょう。普通は無理ですね」

「それでその、無限収納とは?」

「その名の通り無限に別空間へ収納できるのですよ。ハルと長老が持っています」

「無限にですか……もう、想像もつきません」

「無限収納はエルフの中でも持っている者は少ないですよ。長老の血筋でしょうかね」

「なるほど」


 とにかく、巨岩は1/3位の大きさになった。だが、亀裂が入っている。砕けてしまうと、海流で街へ流されてしまうかも知れない。流れた岩の大きさでは、民家に被害が出てしまう。


「長老、これ位の大きさなら結界を張るさ」

「そうだな、リヒト。で、根元まで切っちまおう」

「おう」


 リヒトが残っている岩を囲む様に結界を張った。これで、岩が流れて行く心配はない。


「なんと……こんな大きな結界をお1人で……!」


 ウージンがまた驚いている。


「リヒト様は魔力量が多いのです。我々では出来ませんよ」

「そうなのですか……いや、それにしても凄い」


 また、長老が岩を切る。タイミングを合わせてハルが無限収納へ収納していく。この繰り返しだ。

 途中、亀裂が入ってしまっていたので、長老が切るとやはり少しバラけた。


「大丈夫だ。結界がある」

「ハル、そのまま収納できるか?」

「らいじょぶら」


 バラけてしまった岩もそのまま全部無限収納へ収納していく。残るは問題の根元のみとなった。

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