第229話 撤去完了

「これだな。硬ーんだ」

「りひと、根元らけに結界張りぇりゅか?」

「おう、どうすんだ?」

「結界の中で海底ギリギリのちょこれ切りゅ」

「ほう、この道に合わせてか」

「しょうら。しょりぇかりゃ、れこぼこを炎れ溶かしゅ。しょしたりゃ、平りゃになりゅらろ?」

「おう、そうすっか。切るぞ」

「いいじょ」


 リヒトが結界を張り根元から切ると、ハルがすかさず結界の中にある岩を全て無限収納へと収納する。


「あとは、溶かすのか?」

「ん、じーちゃん結界の中らけ水抜けねーかな?」

「なるほどな。海水を抜いてしまえば火属性魔法も威力は落ちないか」

「たぶん。れも、空気がねーと火は燃えねー」

「アハハハ! ハル、難しい事を知っておるな」

「ふちゅうら」

「そうか、普通か。リヒト、分かるか?」

「分かるわ! それ位は俺にでも分かる!」


 リヒトの扱いがどんどん残念になっていく。


「水を抜いて、風を加えながら火を使えばいいのよ。そうすれば火の威力も高くなるわ」

「おー、しゅしゅえりゃい!」

「ふふふ、これ位当たり前よ」

「シュシュが得意の風魔法を使うなのれす」

「あら、コハル先輩。出てきたのね」

「また、忘れられてたなのれす」

「こはりゅ、ごめん」

「仕方ないなのれす」


 コハル、出番がなかったからな。リヒトが張った結界の中にある海水を長老が全部抜く。シュシュが横から風を送る。そして、ルシカとイオスが火属性魔法で固まっているマグマを溶かして平らにして行く。道路工事の様だ。


「いい感じら」

「完璧じゃねー?」

「ふむ、なかなか上手くできたな」

「我々があんなに苦労してどうにも出来なかったのに……」

「ウージン殿、上手くいって良かったです」

「本当に、ありがとうございます!」


 無事に巨岩撤去は終わった。メガロドンが突進してくると言うハプニングはあったが、岩を切っては収納するというなかなか地味な作業だった。だが、ウージン達にとってはとんでもない力に見えただろう。


「よし、終わりだな!」

「ん、みっちょんこんぴゅりーちょ!」

「アハハハ、ハル言えてねー!」

「りひと、おりぇ1人れ乗りたいじょ」

「いや、無理だろ」

「無理か?」

「ああ、乗せてやるよ」

「えー、しょーもねー」


 ハルちゃんは何をしたいのやら。またルシカに叱られてしまうぞ。呑気なものだ。



「ハル! シュシュ! 戻りなさい!」


 ほら、また2人ルシカに叱られている。何をしているのやら?


「りゅしか! らいじょぶら! しゅしゅすぴーろあっぷら!」

「アップなのれす!」

「ハルちゃん、行くわよー!」


 はい、もうお分かりでしょう。長老やリヒト達がモラモラに乗って移動する側を、ハルとコハルはシュシュに乗って移動していた。この3人が普通に大人しく移動する訳がない。

 皆が移動するそばを、最初はまだススィ〜ッと大人しくシュシュが泳いでいた。しかし、そのうち大きく宙返りしたりし出した。

 そして、スピードアップだ。こうなったらルシカは黙っていない。


「ハル! シュシュ! いい加減にしなさい!」

「ハルちゃん、ちょっとヤバイわ」

「らな、戻りゅか」

「駄目なのれす」

「そうね。心配かけたら駄目だわ」


 そして、大人しくルシカの側へと戻るシュシュ。


「危険な事をしたら駄目ですよ!」

「ルシカ、大丈夫よぉ」

「ん、らいじょぶら」

「海の中なのですよ。何があるか分からないでしょう?」

「あい、じゃあおりぇ1人れ泳ごっかなぁ」

「ハル!」

「あい、しましぇん」

「大人しくシュシュに乗ってなさい」

「あい」


 ルシカがオカン化している。曽祖父である長老は笑って見ているのに。


「りゅしかはちょっと心配性なんら」

「そうね、ハルちゃん」

「れも、りゅしかのおやちゅはらいじらかりゃな」

「とっても大事なのれす」

「そうね、大事だわ」

「怒っておやちゅが無くなりゅのは嫌らからな」

「だめだめなのれす」

「ええ、嫌だわ」


 と、言う事でシュシュやハルとコハルは大人しくしている。只々おやつの為に。


「ハルちゃん、怖くないんか?」

「かえれ、気持ちいいじょ」

「そうよ、カエデ。楽勝よ」

「あかんわ、自分は無理やわ」

「なぁにぃ? カエデも乗せてあげるわよ」

「いや、いいわ。遠慮しとくわ」

「アハハハ! カエデは怖がりなんだな」

「イオス兄さん、ここは海中やで。怖がりと違って慎重なんや。自分は石橋を叩いて渡るタイプなんや」

「アハハハ、叩き過ぎて壊してんじゃねーか?」

「なんでやねん!」


 ハルとシュシュも少しは慎重になってもらいたいものだ。

 さて、女王と王配に報告だ。


「もう、全て終わったのですか!?」


 王配が驚きの声をあげた。隣りで女王も目を丸くして驚いている。


「はい。滞りなく終わりましたぞ」

「ウージン」

「はい、滞りなく。正に神業でございました」

「なんと! 数日は掛かるだろうと思っていたのだが」


 ウージンが巨岩撤去の様子を興奮覚めやらぬまま話して聞かせた。聞いている長老達は然程特別な事をした意識は無かったので、照れ臭いやら何やら。気恥ずかしい。


「素晴らしい……流石!」

「本当に感謝の言葉もありません」

「いや、それ程の事ではありませぬ故」


 長老は恐縮している。長老だけでなくリヒトや皆まで照れ臭そうにしている。唯一、ハルは……


「ふふん」


 自慢気だ。ハルちゃん、良かったね。


「で、撤去した巨岩ですが……」

「ああ、そうだな。どこか広い場所にでも……」

「もし、宜しければ頂いても構いませんか?」

「長老殿、巨岩をですか?」

「はい」

「それは全然構いませんが?」

「実はですな、ワシが持っている神眼と言うスキルで見ましたところ、かなりの量のミスリル鉱石が含まれておるのです。いや、こちらで使われるのでしたら勿論お返し致しますが」

「なんと! そんなスキルがあるのですか!?」

「はい。ワシ程では無くてもハルとリヒトも持っております」

「素晴らしい! エルフの方々のお力は底知れぬものがお有りだ! 女王、此度は世話になった事ですし……」

「もちろんだ……!」

「だそうです。どうぞ持ち帰り下さい」

「ありがとうございます」

「皆様、昼食をご用意しております。是非、ご一緒頂ければと思っております。撤去の様子も詳しくお聞きしたいですしな!」


 偉く持て成され賞賛されてしまい、一行は終始気恥ずかしい事この上ない。

 また、マイペースなのが唯一ハルだ。


「んまい! まいうぅー!」

「アハハハ! ハル、何だそれ!?」

「りひと、知らねーのか? 超美味いって事ら!」

「ハルちゃんは本当に海鮮料理が好きなのね」

「ばーちゃん、らって超美味い!」

「本当ね。珍しいものばかりだし、全部美味しいわね」

「りゅしか、持って帰りょうな!」

「はいはい。ハル、分かりましたよ」

「ハルくん、明日にでも漁を見てみるかい?」

「ゆーりゃんれんか! ほんちょれしゅか!?」

「ああ、一緒に漁へ出よう。ゆっくりして行ってほしい」

「ありがちょごじゃましゅ!」


 ハルちゃん、やったね! 海の幸ゲットだぜ!

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