第213話 小話 お歌

「きりゃきりゃひかりゅぅ〜 おしょりゃのほしよぉ〜

 まばたきしてはぁ〜 みんなをみてりゅぅ〜

 きりゃきりゃひかりゅぅ〜 おしょりゃのほしよぉ〜♪


 きりゃきりゃひかりゅぅ〜 おしょりゃのほしよぉ〜

 みんなのうたがぁ〜 ちょじょくちょいいなぁ〜

 きりゃきりゃひかりゅぅ〜 おしょりゃのほしよぉ〜……♪」


 ハルが長老の家にあるテラスでお風呂上がりに涼んでいる。ハルの横にはシュシュが寝そべっている。足をプラプラさせながら、口ずさむ『きらきら星』

 舌足らずな感じがなんとも可愛らしい。


「ハル、何の歌だ? 聞いた事がないな」


 長老が、果実水を持ってやって来た。


「前の世界にある歌ら。小しゃい時にみんな覚えりゅんら」

「ほう」

「前の世界は教育体制がしっかりしてたかりゃ。小さい時は保育園や幼稚園。ちゅぎは義務教育って言って小学校に6年、しょれから中学校に3年通うのが義務付けりゃりぇてんら」

「そんなにか?」

「ん、けろみんなしょのあと高校に3年通う。しょりぇかりゃ大学や専門学校に4年通う人や、2年通う人、仕事しゅる人がいりゅんら」

「ハルはどこまで行ったんだ?」

「おりぇは大学ら。りゃんばーちゃんと、いおじーちゃんの血を継いでたかりゃらりょうな。なんれも人以上にれきたかりゃ」

「皆、しっかり教育されているんだな」

「まあ、おりぇがいた国れは字が読み書きれきない人はいないと思う。識字率がほぼ100%らった。れも義務付けりゃりぇてりゅかりゃ、行くのが当たり前なんら。有り難みがねー」

「そうか」

「こっちの世界に来て思った。有難い事らったんらなぁって。魔物もいないし、おりぇが暮りゃしてた国は平和らった」

「どんな国だったんだ?」

「ん、便利」

「便利か?」

「しょう。魔法はないけろ、科学が発展した国。車や電車、ばしゅ。新幹線に飛行機。スマホ、PC、高層ビル、コンビニ、えりぇべーたー」

「ん? 何だって?」

「こことは全然違う。きっと……精霊なんていないだりょうな」

「そうなのか?」

「ん」

「帰りたいか?」

「なんりぇりゃよ。どんなに便利れも、向こうにいい思いれはないんら」

「そうか」

「しょうら」

「ハル、続きを歌ってくれるか?」

「ん……

 きりゃきりゃひかりゅぅ〜 おしょりゃのほしよぉ〜

 まばたきしてはぁ〜 みんなをみてりゅぅ〜

 きりゃきりゃひかりゅぅ〜 おしょりゃのほしよぉ〜」


 曽祖父と曽孫。と、言っても良いのだろうか。ハルの両親の血筋はないという。

 ハイエルフである祖母ランリアと、ハイヒューマンである祖父マイオルの血を強く継いだハル。

 曽祖父である長老、ラスター・エタンフレと、曽祖母であるアヴィー・エタンフレの血を濃く受け継いだ子。並んでいると、顔つきなど本当によく似ている。

 これから先、何年生きるのか。

 大切な人達との別れも経験する事だろう。だが、今はそんな事よりも肉親である長老とアヴィー先生やリヒト達の愛情をたくさん受けて健やかに育って欲しい。そう長老は切に願う。

 この子だけは絶対に奪われてなるものかと思う。

 世界樹に愛された子。

 精霊達に愛された子。

 祖父母に愛された子。

 前世では両親に虐げられ身体も弱かったが、今世では曽祖父母だけでなく皆の愛情を沢山受けて元気に生活している。


 まだまだ、ハルの冒険は続いて行く。

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