第207話 デスマンモール討伐

「長老、俺とアランは先へ行くぞ」

「ああ。リレイ! 勝手に始めんじゃないぞ!」

「分かってる! 念話で確認するよ!」

「リレイは先走るからなぁ」

「アハハハ! あいつ、ワクワクしてんじゃねーか?」

「あり得るな」

「りりぇいしゃんは、イケイケなのか?」

「イケイケってか? まあ、討伐とかはノリノリだな」

「おぉ」

「アランも普段は大人しいのに、討伐になるとガンガンとばすからな」

「あの2人はなぁ。下がついて行けないんだ」

「しょんなにか?」

「まあな」


 リヒトと長老の話を聞いて、ちょっと引いているハルさん。ハルさんだって、やる気になったら突っ込むのに人の事は言えない。


「この坑道の奥だな」


 その坑道は、デスマンモールが暴れたのだろう。壁も崩れていてそこら中に鉱石が転がっている。


「巣はどこだったんだ?」

「リレイのいる方じゃないか?」

「なるほど」

「長老、リヒト様、俺とカエデは移動します」

「ああ。イオス、無理するんじゃないぞ」

「了解ッス!」


 イオスとカエデは途中にある分かれ道まで移動だ。そこに逃げ込まれない様にする為だ。


『こっちは位置に着いたぞ』


 リレイからの念話が入った。


『イオス、どうだ?』


 長老がイオスに確認する。


『もう少し待って下さい』

『了解だ。リレイ、もう少し待機だ』

『了解!』


 イオスとカエデがまだ位置に着いていないのか? ハルも坑道の真ん中でしゃがみ込んで何やらしている。シュシュがそばで警戒している。


『長老! 今確認したら、こっちの坑道の奥にもいます! 3頭ッス!』


 イオスから念話が入った。どうやら、イオスとカエデが待機する筈だった分かれている坑道の奥にもデスマンモールがいたらしい。


『イオス、こっちに追い込めるか!?』

『余裕ッス!』


 そうか。余裕なのか。ドワーフが匙を投げたデスマンモール相手に余裕と言った。


「リヒト、増えたぞ」

「ああ、余裕だ」


 また、リヒトも余裕と言った。


『リレイ、聞いていたか? 3頭増えたぞ』

『おう! 余裕だ!』


 もう、エルフはどれだけ強いんだ。皆、余裕と言っている。


『よし、やるか!』

『『「おう!」』』

「ハル、いいか!?」

「いいじょ! 終わっちゃ!」


 ハルがトコトコとシュシュと一緒に戻ってくる。


『リレイ、イオス! 追い込め!』

『了解!』

『了解ッス!』


 坑道の奥から地響きが聞こえてきた。

 リレイチームとイオスチームが其々追い込み始めたのだろう。


「じーちゃん、りひと、真ん中通ったららめらじょ!」

「ハル?」

「罠ちゅくった!」

「おう! 了解だ!」


 ハルさん、何かしたらしい。

 坑道の奥から、ドドドドッと地響きがしてきた。

 

「来るぞ」


 リヒトが剣を抜いて準備する。


「あ! 見えてきたじょ!」


 奥から2〜3メートルはあるだろう超デカイ、モグラが全部で14頭突進してきた。


「多いじゃねーか!」

「だから増えたと言っただろうが」

「いや、まぁ。そーだけど」


 ルシカが弓を構える。


「りゅしか! まらら! もっちょ引きちゅけて!」

「分かりましたよ!」


 ドドドドッ! と勢いよく突進してきたデスマンモール。長老やリヒト達を見つけてロックオン状態だ。


「もうしゅぐら」


 ハルはジッと見ている。

 デスマンモールが、前に出ているリヒトに突進しようとした時だ。

 突進してきたデスマンモールの先頭が、次々と身体の重みで崩れた地面に足を取られバランスを崩してもがいている。後方のデスマンモールはそのままの勢いでぶつかってまた崩れた地面に嵌っている。すし詰め状態だ。


「やっちゃ! あーしゅりょっく!」


 ハルがバランスを崩しているデスマンモールの足元を固めた。

 ハルはどうやら落とし穴の様なものを作って罠を仕掛けていたらしい。その上、アースロックで固めた。もう、デスマンモールは動けない。


 ――ギュオォー!!

 ――プギュー!!


 踠き、なんとか抜け出ようとしているが、そう簡単には崩せない。


「ハル! 上出来だ!」


 リヒトが剣に風魔法を纏わせて首に剣を突き立てる。


「ハル! やるじゃねーか!」


 坑道の奥から追い込みを掛けたリレイとアランが斬りつけている。


「アハハハ! こりゃあ楽勝だ!」


 長老は笑っているぞ。


「ういんろかったー! じーちゃん笑ってないれ攻撃ら!」

「アハハハ! 分かった分かった!」


 リヒトやリレイ、イオス達が斬りつける中をハルと長老のウインドカッターが飛ぶ。


「やだ、もうホント斬り放題じゃない」


 そう言いながらシュシュもウインドカッターを飛ばす。

 デスマンモールも、せめて引っ掻き攻撃で対抗しようとしてか腕をブンブン振っている。

 ハルが作った落とし穴の所為で動けない、得意の尻尾を叩き付ける攻撃もできない、踠き腕を振り回すしかない状態だ。

 そんなデスマンモールに容赦なく、ルシカが矢を立て続けに射る。すかさずリヒトが首を狙って袈裟斬りにする。

 アランとリレイが両側から首を切り落とす。

 カエデとイオスも負けていない。カエデが高くジャンプし首に双剣を突き立てるとイオスが喉元にすかさず斬りつけて仕留める。

 背中は硬い。皮膚も防具になる程硬い。だから皆首狙いだ。またカエデが首を斬りつけるが浅かった。


「カエデ! 甘いぞ!」


 イオスが一太刀で仕留める。


「はいにゃ!」


 次から次へと首を狙って仕留めていく。始まったらアッという間だった。


「宰相様、我々は何を見ているのでしょう」

「とんでもないな……」

「はい。我々は1頭抑えるだけでも必死だったのに……」


 終わってみれば、半数は首を落としていた。


「ふゅ〜、みっちょんこんぴゅりーちょ」

「アハハハ! ハル、何だそれは!?」

「じーちゃん、任務完了って事ら」


 いや、きっとそれは分かっているぞ。


「ハル、無限収納に仕舞うか?」

「ん! 親方に持って行くんら!」


 トコトコと前に出て、次々と無限収納に仕舞っていく。


「ハルは無限収納を持ってんのか?」

「ああ。恐るべき幼児だろ?」

「確かに。ハル、スゲーな」


 リヒトとリレイが感心して見ている。


「あんなちびっ子なのになぁ。さっきの罠もよく思いついたよ」

「だなぁ。ハルは突拍子もない事をするからな」

「さすが長老とアヴィー先生の曽孫だな」

「アハハハ、違いない」


 確かに、ハルだけでなく、アヴィー先生や長老もとんでもない事をやらかしたりする。血筋か? 遺伝なのか?

 長老が神眼で辺りを確認している。


「もう、潜んでいるのはいないな」

「一網打尽とはこの事やな」

「本当ね、カエデの言う通りだわ」


 ともかく、無事にデスマンモール討伐は終わった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る