第206話 作戦会議

「ハル! 来たか!」

「りりぇいしゃん!」


 リレイが従者と一緒に部屋に入ってきた。リレイの従者、ちゃんとした出番は初めてだが、実はいつもリレイのそばにいた。

 ベースでも、ベア種の討伐の時も、レッドベアビーの蜂蜜を採っている時もだ。


「俺の従者のアランだ」

「あー、はちみちゅ採ってくりぇた」

「アハハハ! ハル、そうだ」

「ありゃんしゃん、ありがちょ」

「いえ、とんでもないです」

「こいつ、人見知りだからあんま前に出て来ないんだよ。紹介が遅くなったな」

「しょうなんら」

「はい、よろしくお願いします」

「けろ、顔は覚えてりゅじょ」

「いつも俺のそばにいただろう?」

「ん、いた」

「イケメンなのに、損してるわね」

「え、え?」

「もっと堂々としなきゃ勿体ないわよ。イケメンなんだから」

「あ、え? ありがとう?」

「アハハハ! アラン、なんで疑問形なんだよ。今回の討伐も同行するからな。宜しく頼むよ」

「ありゃんしゃん、よりょしく」

「ハルくん、こちらこそ」

「宜しくね、あたしはシュシュよ」

「はい、存じております。カッコいいとベースでも評判です」

「あら、やっぱりぃ!? やっぱあたしの魅力は隠せないからぁ……」

「リレイ様、お茶どうぞ」

「アランさんも、クッキーもあるで」

「ちょっとミーレ、カエデ! あたしまだ喋ってんの!」

「いいじゃない、シュシュもクッキー食べるでしょう?」

「食べるけどぉ!」

「アハハハ! 賑やかだな」

「おう、リレイ。」


 長老とリヒト、ルシカが戻ってきた。


「どうだ? ハルが昼寝するまでに1度見ておきたいんだが」

「長老、今は引っ込んで大人しくしてますよ」

「リレイ、威圧を放ったらしいじゃねーか」

「軽く1発だけですよ」

「それで引っ込んでるのか?」

「ええ。でも絶対にまた出てきますよ」

「そうだろうな。どこに出てくるかだ。今いる場所は分かっているのか?」

「はい。坑道の奥にいます」

「出てくるのを待っていると、いつになるか分からん。しかも、どこに出てくるのか分からんぞ」

「はい。それで長老が来られるのを待っていました。こっちから仕掛けましょう」

「そうだな」


 デスマンモールが出て来るのを待っていると、地中を掘ってどこに出てくるのか分からない。

 街中にでも、出て来られると被害が大きくなる。それは、避けたい。なので、こちらから仕掛ける事になった。被害が出なくて討伐しやすい場所へ誘導するんだ。

 坑道の地図を見ながら作戦会議だ。リレイが地図を指差しながら説明する。


「この坑道の奥に引っ込んでる。俺がアランと誘い出す。途中、1ヶ所坑道が分かれているとこがあるんだ。そこには……」

「俺とカエデが立ちますよ」

「よし、イオスとカエデだな。で、最終的にはこの部分。少し広くなっているだろう? ここで仕留める。長老、リヒト、ハル頼んだ」

「おう」

「アヴィー先生とミーレは被害者を頼む。案内してもらうよ」

「分かったわ」

「分かりました」

「あたしはハルちゃんといるわね」

「ああ、シュシュも頼んだぞ」

「任せてちょうだい」

「よし、行こう!」


 デスマンモールの討伐にハル達は向かった。


「長老殿! リヒト様!」

「おぉ、宰相殿」

「我々も討伐に参加致します! 兵をお使い下さい!」

「いや、討伐は我々だけでする。兵達は民達の安全確保を頼む。まさか坑道に入っている者はいないと思うが」

「いえ、長老殿! それではあまりにも……」

「宰相殿、我々に任せてください。大丈夫です」

「しかし……いや、足手まといになりますか?」


 まあ、ぶっちゃけそうなのだろう。ドワーフの鍛えられた兵達でも、リヒト達の戦力には敵わない。


「分かりました。我々は後方支援と安全確保を。どうか、宜しくお願い致します!」

「宰相殿、アヴィーとミーレだ。被害者の治療に当たらせる。案内を頼みたいんだが」

「畏まりました。ありがとうございます」

「長老、アヴィー先生には我々がついてます」


 ロマーティとシオーレがやってきた。アヴィー先生とミーレを補佐してくれるらしい。


「そうか、頼んだぞ」


 アヴィー先生やミーレとは分かれて、リヒト達はデスマンモールのいる坑道へと向かう。


「じーちゃん、魔法れ罠を仕掛けてもいいな」

「罠か?」

「ん、足止めれきたりゃ討伐しやすいじょ」

「ハル、出来るのか?」

「ん、土魔法で足を留める」

「よし、それはハルに任せた」

「よし、やりゅじょ!」


 ハルさん、少しやる気が出てきたね。ハルは普段がテンション低めだから、やる気を出す位が丁度いい。

 デスマンモールのいる坑道に着いたら其々が配置につく。坑道の入り口付近には、ドワーフの兵達がいる。


「宰相殿直々に案内して頂かなくとも」

「いえ、長老殿。我が国の事です。エルフの方々にお任せするしかありませんが、私には見届ける義務があります。見届けたいのです」

「ほう、しかし安全な所にいて下さい」

「はい。お任せして申し訳ありませんが、どうか宜しくお願いします」

「もちろんです。なぁに、エルフ族最強の5戦士の中から2人も来ているのです。大丈夫ですよ。きっと直ぐに終わります」


 長老の言う通りだ。ベースの管理者であり、最強の5戦士の中に入るリヒトとリレイの2人がいる。長老もいるしハルもいる。シュシュやカエデにイオス。それにコハルだ。この面子で負ける筈がない。

 ドワーフの宰相や兵達に見送られて、一行は坑道の中へと入って行った。

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