第171話 蜂蜜は美味い!

 先ずは、ベアウルフを討伐だ。リレイがザックリと袈裟懸けに切り倒して先ずは1頭。それからは入り乱れて隊員達が倒して行く。手足に斬りつけ動きを止める者。首を狙ってとどめを指す者。高くジャンプして頭から一刀で仕留める者。討伐隊の皆は強い。

 

「しゅげー!」

「ほんと、エルフって怖いわ。鬼強いじゃない」

「マジ、こんなん敵う訳ないやん」

「アッハッハ! 皆強いだろう!?」

「じーちゃん、超つえー!」

「リレイとリヒトはそんなエルフの中で最強の5戦士なんだ」

「しゅげー!」

「ホントよね。リヒトは普段そんな感じしないもんね」

「いや、リヒト様は凄いで。あの魔法の使い方も飛び抜けてるもん」

「カエデ、よく見ているな」

「長老、そらそうや。最高のお手本やもん」

「おお、そうか!」


 リヒト、良かった。イケメンでカッコいい枠に設定した甲斐があった。見ている者はいるんだ。


「じーちゃん、おりぇもやりてー!」

「ハル、もう終わる」

「ええー……つまんねー」


 ヤンチャなハルさんだ。まだ身体が小さいから入り乱れている場合は危ない。

 長老の言う通り、直ぐにベア種の討伐は終わった。誰一人として怪我もしていない。疲れもしていない様だ。淡々と討伐したベア種をマジックバッグに仕舞っている。


「リヒト、楽勝だったな」

「ああ、だがハルがな」

「どうした?」

「蜂蜜を持って帰るんだとよ」

「まあ、レッドベアビーをそのままにはしておけないからな。良いんじゃねーか?」

「そうか」

「ああ、じゃあやるぞ」

「おう」


 リヒトとリレイがレッドベアビーの巣穴がある枯れ木から距離をとる。


「じーちゃん、どーすんら?」

「まあ、見ていなさい」


 リヒトが巣穴のある枯れ木を中心に結界を張った。


「エアーインパクト」


 結界の中は空気が振動し、飛んでいたレッドベアビーがボトボトと地面に落ちた。一網打尽とはこの事だ。


「あれは、空気の衝撃波をぶつけているんだ」

「しゅげー! もうでっけー蜂いないか?」

「ああ、もう巣穴の中にいるレッドベアビーも死んでるだろう」


 リヒトとリレイが巣穴を確認する。そして、剣で枯れ木を切り裂いた。


「ハル! 蜂蜜だぞ!」

「りひと! 見たい!」


 トコトコとリヒトのそばまで走って行くハル。


「ほら、抱っこしてやろう。見えねーだろ?」

「ん! りひと、早く!」


 リヒトに両手を出して早く抱っこしろと強請むハル。


「アハハハ! ハル、可愛いなぁ!」


 それを見てリレイが笑う。魔物討伐の筈なのに、平和な光景だ。


「ほら、ハル。そこに巣があるだろう」

「りりぇいしゃん、ろこら?」


 リレイの言う枯れ木を覗き込む。


「ほら、そこだよ。花粉の団子もあるな」

「あ! ありぇか!」

「ハル、待てよ。クリーン」


 リレイが巣に指を突っ込んだ。いきなり、指か!? いいのか? 手はクリーンしていたが。


「ほら、蜂蜜だ」

「おお!」


 あーん、して食べさせてもらうハル。


「う、うまい! なんらこりぇ!」

「え!? ハルちゃん! そんなになの!?」

「シュシュ、超うまい! 甘いらけじゃなくて、まりょやかなんら!」

「あたしも! あたしもちょうだい!」


 白いデカイ虎が前脚でリレイに強請む。


「待て待て! ほら、シュシュ」


 シュシュがリレイの指をベロンと舐めた。


「な! なんて美味しいの! こんなの初めてだわ!」

「らろー!?」

「リレイ様! 自分も!」


 今度はカエデだ。


「う……めちゃ美味しい! ルシカ兄さんのパンケーキとかアイスにかけて食べたら最高やろな!」

「おお、それは美味そうだ」


 リレイまで……。まるでピクニックだ。いや、親鳥が雛に餌をあげている状態か。ハルとシュシュにカエデ。賑やかし3人組がいると、どうもカッコよく締まらない。


「りりぇいしゃん、こりぇろーしゅんら?」

「巣ごと持って帰るぞ」

「やっちゃ!」

「楽しみだな、ハル」

「うん、じーちゃん!」


 ベアウルフを含むベア種の討伐は無事に終わった。終わってみればベアウルフ22頭、その他のベア種56頭も討伐していた。なのに、この余裕だ。エルフ、恐るべし。

 しかし、もしもあのまま気がつかなかったら大森林に入っている冒険者や薬草を採取している者達に被害が出る事は間違いない。無事に討伐できて良かった。

 その日の夕食にベア肉のソテー、ハニーマスタードソースが出てきた。

 

「んんまいぃ!」

「ホント、美味しいわ!」

「めちゃ美味しいなぁ」


 ハルにシュシュ、カエデの3人が大満足で食べた。デザートは梨のコンポート蜂蜜かけだ。


「んまい!」

「だめ、太っちゃうわ」

「蜂蜜めちゃ美味しいにゃん」


 ハルさん、ほっぺがテカテカに光っているぞ。ルシカ、拭いてやってほしい。


「ハル、ほらほっぺが凄い事になってますよ」


 ルシカがハルのほっぺを拭く。良かった。カピカピになるところだ。


「ハル達がいると賑やかだな」

「ん? そうか?」

「ああ。ちびっ子がいるだけで場の空気が違う」

「そんなもんか?」

「リヒトはいつも一緒だから分からないだろう」

「そうかもな」

「ヒューマンはこんなに可愛いちびっ子を攫うんだ」

「あー、あれか?」

「リヒト、リレイ、人攫いの情報を聞いたのか?」

「はい、長老。情報が回ってきていた」

「まだ掴めきれていないらしいがな」

「ヒューマンて馬鹿なのか?」

「リレイ、すべてのヒューマンがそうなのではないぞ」

「長老、分かっているが……ちびっ子は将来を担う宝だ。そんな事も分からないのかと思ってしまう」

「まだ情報を精査している段階だ」

「ああ、長老」


 長老や、ベースの管理者であるリヒトやリレイにヒューマン族による人攫いの情報が入っているらしい。情報共有は大事だ。

 何やら不審な感じがする。またヒューマンが何かやらかしたらしい。

 今すぐにどうこうといった雰囲気ではない様だ。

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