第150話 アヴィー先生とシュシュ
翌日、アヴィー先生は長老達と一緒に裏庭から転移で帰っていった。
「さあ、今日も頑張らないと!」
ニークの新しい日々が始まる。寂しいかもしれないが、ニークなら大丈夫だろう。
また、いつでも会いに来る事ができる。
「ねえねえ、もうエルフの国に帰っちゃうの?」
シュシュが長老に聞いている。
「そうだな、ツヴェルカーン王国のロマーティからまだ連絡がないんだ」
「長老、遺跡か?」
「リヒト、そうなんだ。気になっているんだが」
「ね、なあに? 遺跡って何なの?」
そうか、アヴィー先生は遺跡の調査の事を知らない。長老が軽く説明した。その遺跡調査の事もあってドラゴシオン王国に滞在していたのだと。
「そんな事があったの!? 見てみたいわ!」
「でしょう? 凄かったんだから!」
「シュシュ、そうなの!?」
いかん、賑やかしチームが増えている。
長老は再度、ロマーティにパーピを飛ばしてみる。
「大丈夫そうなら、いい加減1度国に戻りたいんだが」
「長老、そうなんだよ。俺もベースの事が気になる」
「ねえねえ、リヒト。ベースってなあに?」
「シュシュ、知らなかったか? ベースとはだな……」
リヒトがシュシュに説明しました。
「よく大森林の中を見回っているエルフの人達がそうなのかしら?」
「なんだ、シュシュ。大森林に来た事あんのか?」
「入った事はないわよ。だって見るからに強そうなエルフがいつも見回っているから入らなかったのよ。それに魔物もいるじゃない」
「そうだ、このままだとシュシュが国に入れないぞ」
「リヒト、何? 虎は入っちゃ駄目なの?」
「ちげーよ。国には結界が張られているんだ。それを通る為にパス替りの魔道具がいるんだよ」
「え、そんなのがあるの? みんな持ってんの?」
「もってりゅ」
「自分ももらって持ってるで」
「やだ、あたしどーすんの?」
「ワシが作ろうか? それとも一時的にハルの亜空間に入るかだな」
「え、亜空間は嫌よ。見たいもの」
「シュシュは目印も付けていないしな。ワシが作るか」
「目印ってなあに?」
「ん、こはりゅ」
「はいなのれす」
コハルは亜空間がお気に入りらしい。いつも入っていて呼ばなければ出てこない。
「こはりゅの首輪ら」
「そうなの? 可愛いじゃない。あたしも欲しいわ。このチャームにも意味があるの?」
「俺の家の紋章だ。シュテラリール家が保護しているって証だな」
「やだ、カッコいいじゃない。ねえ、長老。あたしもこんなのがいいわ」
「シュシュは煩いなのれす」
「先輩、そんな事言わないで。とってもお似合いだわ」
「当たり前なのれす」
ちょっと自慢気なコハル先輩。
「なあに? シュシュよりコハルの方が先輩なの?」
「あたちは聖獣でも神使なのれす!」
「コハルちゃんの方が格上なのね?」
「そうなのれす! シュシュはまだ聖獣になりたてなのれす! ピヨピヨのヒヨッコなのれす!」
「まあ!」
「コハル先輩、ヒヨッコはやめて! 恥ずかしいわ!」
確かに。その堂々とした風格とキャラはヒヨッコには見えない。
「あ……じーちゃん」
「ああ、ハル。パーピが来たな」
「え、ハルちゃん分かるの?」
「ばーちゃん、精霊が教えてくりぇた」
「精霊が!?」
「パーピも大きな意味れ精霊の一種なんら」
「ハル、そうなのか?」
「ん、じーちゃん。しょうらって。昔はエルフも精霊と話しぇた名残りらって」
またハルさん。サラッと凄い事を言ったぞ。ハルとコハルのちびっ子コンビは時々無自覚で重要な事を言う。
「ハルちゃん、それは……今までもしかしたらそうじゃないかな〜? て、不確かな事だったのよ。凄いわ。昔からの大きな謎を解明したのよ! て、ハルちゃん! 精霊の声が聞こえるの!?」
そうだった。これもアヴィー先生は知らなかったんだ。
「おばばしゃまに教えてもりゃったんら」
「ハルちゃん、おばば様ってドラゴンのおばば様かしら?」
「しょうら」
「まあ! お会いしたのね!?」
「ん、おばばしゃましゅきら」
「いい方だもの」
それよりも、長老のパーピだ。タイミングから考えてツヴェルカーン王国のロマーティだろう。
「リヒト、ツヴェルカーン王国に寄るぞ」
「長老、やはりそうなるか」
「ああ。ロマーティとシオーレが確認した。浄化が必要だそうだ。ロマーティ1人では無理だったらしい」
「あー、そりゃロマーティ1人だと無理だな」
「リヒト、アヴィー、ツヴェルカーン王国の王が会いたいそうだ」
「王が?」
「アヴィー先生、あれじゃないか? ドラゴシオン王国と協定を結んだからだろう?」
「そうらしい。ツヴェルカーン王国も協定を望んでいるそうだ」
「そうなるわよね。普通はそうよ。大国と協定を結ぶ方が安全だもの。なのに、アンスティノス大公国は何を考えてんのかしら」
「今の大公は望んでいるらしいぞ」
「長老、そうなの?」
「ああ。ドラゴシオン王国と協定を結んでから協議を重ねているらしい。だが、ヒューマン族の反対があるんだそうだ」
「反対する意味が分からないわ。ヒューマンに何ができるのよ」
アヴィー先生、なかなか厳しい事を言う。
とにかく一行はツヴェルカーン王国に向かって進路をとった。
「長老、リヒト様……え!? アヴィー先生!?」
「ロマーティ、久しぶりね」
「な、な、なんでアヴィー先生が!?」
「何よ、ロマーティ、私がいたら都合が悪い事でもあるの?」
「え!? あ、ありませんよ! なんでいるんですか!?」
「アンスティノス大公国にいたんだ。これから帰るとこだったんだよ」
「リヒト様、先に言っておいて下さいよ」
「アヴィー先生、お久しぶりです」
「シオーレ、久しぶりね。変わらないわね」
「アヴィー先生もお変わりなく」
「シオーレ、何しれっと挨拶してんだよ」
「ロマーティ、動揺しすぎです」
この2人もアヴィー先生の教え子だ。ロマーティが変に動揺しているが、シオーレは平静だ。
ロマーティはツヴェルカーン王国の駐在大使。シオーレは大使補佐だ。どうやら、2人は学友らしい。リヒトも一緒にアヴィー先生から教わったと言っていた。同年代らしい。
一行はツヴェルカーン王国の入国を済ませて、ロマーティとシオーレの案内で城へ向かう。ツヴェルカーン王国の国王に拝謁する為だ。
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