第137話 黒龍王の里の遺跡
この遺跡も同じ造りになっていた。途中から通路がまた二股に分かれている。そこで長老やハルとリヒトが見ている。
「じーちゃん、左にいくじょ!」
「お、ハル。ヤル気だな」
「飯ら」
「アハハハ! ハル、食い気か!」
「こはりゅ」
「はいなのれす!」
「ハル待て! 飛び降りるなよ! じーちゃんが下すからな!」
長老、よっぽど懲りたらしい。黄龍王の里にある遺跡では、ハルが突然長老の腕の中から飛び降りたことがあったからだ。
長老が言葉通り、ハルを下す。
「じーちゃん、勢いがちゅかねー」
「ハル、勢いで毎回飛び降りられたらじーちゃんの心臓が持たねーぞ」
「しゃーねー」
意味不明……どうやらハルは『とぉッ!』と飛び降りたかったらしい。確信犯だ。
「こはりゅ、いくじょ!」
「はいなのれす!」
タッタッタッタとハルが駆けて行く。リヒト達もそれに続く。
「本当にハルちゃんはやんちゃさんなんだからぁ」
「シュシュ、私達も行くわよ!」
「やだ! ミーレもイケイケじゃない!」
「アハハハ! カエデ、行くぞ!」
「はいな! イオス兄さん!」
皆さん充分イケイケですよ。先頭のハルはもう攻撃している。
「ちゅどーん!!」
「アハハハ! ハル、その掛け声なんなんだ!?」
「りひと、勢いら!」
ハルとコハルがジャンプして魔物を蹴りつける。リヒトとルシカが剣で切り倒す。
さて、ハルが討伐している魔物ですが……
お分かりですよね? そうです。ハルの大好きなお肉です。ヒュージラビットです。だから、ハルさんは張り切って討伐しています。
「どっしぇーい!!」
「ハル! お前剣はどうした!?」
「あ! りひと、わしゅれた!!」
「また忘れたのかよ!」
本当にハルさん、せっかくエルダードワーフの親方が打ってくれたのに。
「ダント、皆楽しそうだな」
「ヘイロン様、手伝わなくても良いのですか?」
「必要ないだろう。もう終わる」
「なるほど。エルフの方々はお強いと伺っておりましたが、こうまでお強いとは」
「まだ全然本気ではないだろう。見なさい、ハルは笑っているぞ」
「おや、本当ですね」
ハルさん、本当に笑ってました。
「アハハハ! りゃくしょー!!」
「ハル! 最後まで油断すんじゃねーぞ!」
「こはりゅ! いけー!」
「いくなのれす!」
最後にコハルが回し蹴りを決めた。ヒュージラビットだって超足癖が悪いと言われている魔物だ。どうやらコハルは、それ以上に足癖が悪かったらしい。
「おっけーぐりゅぐりゅ。りゅしか、持って帰りょうな!」
「はいはい、分かりましたよ」
ルシカが倒したヒュージラビットをマジックバッグに収納している。全部持って帰るつもりらしいぞ。
「ヘイロン様、ヒュージラビットはよく遺跡内に入ってくるのですか?」
「長老、そうなのだ。そちら側から入ってくるから、いつも討伐しているんだ。それに、ここは北だからな。ヒュージラビットだけでなく、冬になったら吹雪いて雪も入ってくる」
「では、こちら側だけ結界を張っておきましょう」
「そうしてくれると助かる」
長老が出口に向かって手を翳すと目にはみえない透明な結界が張られた。
さて、遺跡調査のメインだ。もう片方の通路に入って行く一行。最奥で止まる。
「じーちゃん……」
「ハル、そこか?」
「みたいら。れもまた扉がねーな」
ハルの小さい手で、壁をペチペチと叩いている。
「リヒト、そこの飾りのあるプレートだ」
「長老、分かった。せーの……」
長老とリヒトがタイミングを合わせて、そこだけ飾りが付いているプレートに乗る。と、何もない筈の壁がゴゴゴゴと大きな音をたてて両側に分かれて開いた。もう慣れたもんだ。
広い部屋に入って行く。やはり壁画が描かれている。原初のエルフ族とドラゴンが瘴気の靄を浄化しようとしている。
そして、同じ様に部屋の奥には巨大な魔石が設置されている。
「ありぇ、ここはまら真っ黒じゃねーな」
「ハル、とにかく浄化だ」
「ん、じーちゃん。こはりゅ」
「はいなのれす」
「ぴゅりふぃけーしょん」
「ピュリフィケーション」
長老や、ハル、リヒト、コハルとで手を翳し浄化する。すると、目も眩む様な白い光が黒くなった大きな魔石を包み込み消えていった。
光が消えるとそこには、黒い巨大な魔石が浄化され透明に輝くクリスタルが現れた。
「ん、みっちょんこんぴゅりーちょ」
やはり、ちゃんと言えてない。
「で、ハル。どこだ?」
「ん……こっちら」
ハルが誘導される様に何もない壁へと歩いて行く。そして、またハルが何も描かれていない壁をペタンと触った。すると……蜃気楼の様に壁画が現れた。
「ここが2番目なんだよな?」
「ん、しょう精霊が言ってた」
その壁にあった壁画は、エルフ族、ドラゴン、それに緑色の髪をしたハイヒューマンが魔石を持ち合って巨大な魔石に加工している場面が描かれていた。
「なるほど、確かに2番目だな」
「ん、じーちゃん」
「これがその壁画か……」
「はい、ヘイロン様」
「長老、本当にハイヒューマンが描かれているな。この髪色はそうだろう」
「はい、最初見た時は驚きました」
「確かに、これは貴重だ。私の年代だとハイヒューマンはもう伝説の種族だからな」
「そうですか? 確かに存在していたのですよ。ヒューマン族とは比べ物にならない能力を持っておりました」
「そうか……」
そう、長老が言う通り確かに存在していたのだ。だからハルがいる。ハルはハイヒューマンの血を継ぐ唯一の存在なのかも知れない。
「ありがとう、助かった。昼飯を用意してある。食べて行ってくれ」
「有難うございます」
遺跡調査をして、お呼ばれしてと言う流れになっていないか?
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