第135話 紅龍王の里の遺跡
「ハル、あらゆる分野に於いて、基礎とは礎なんだ。先ずは基本だよ。出来ない、ありえない、見えないと思い込んでいるからその結果しか導き出されない。見えないのではなくて、そこにある当たり前のものを見るんだ。見ようと意識する。そうしたら、色んなものが見えてくる」
「ん……当たり前のものを……見りゅ……」
ハルが集中している。意識を集中して見ようとしている。
ハルの眼がゴールドに光った……
「あ……おばばしゃま……!」
「見えたかい?」
「こんなにいっぱい!?」
「そうだよ、ハルは精霊に好かれているらしい」
一瞬、ハルの眼がゴールドに光ったがすぐに元に戻った。その時ハルに見えていたもの……ハルの周りに羽をもった小さな小さな人形の様な精霊達が群がっていた。口々にハルの名を呼んでいる。ハルの見える世界が変わった瞬間だ。
――ハル~!
――ハル~見えたの~?
――ハル~!
「みんな、見えたじょ!」
――やった~!
――ハルと話せるの~!
「アハハハ! 可愛いなぁ~!」
――ハルも可愛いの~!
――ハル好き~!
「おりぇが魔法をちゅかう時みんなが力をかしてくりぇてたのか?」
――そうなの~!
――ハルを助けるの~!
「ありがちょ! こりぇかりゃもよりょしくな!」
――よろしくなの~!
――嬉しいの~!
「アハハハ! ハルは余程好かれているらしい。こんなに直ぐに見えるようになるとはね」
「おばばしゃま、ありがてーよ」
「おや、そうかい」
「ん、ありがてー事ら」
ずっと声が聞こえて姿が見えている状態でも構わないのだが、とにかく騒々しい。
ハルの意識の切り替えでどうとでもなるそうだ。そんな事を色々おばば様に教わった。
気が付けば、ハルの周りには沢山の精霊達が集っていた。それも、精霊達は皆嬉しそうだ。ハルは本当に好かれているらしい。
翌日、朝早くに一行は出発した。帰りも紅龍王に乗せてもらう。おばば様も一緒だ。
「行くぞ! しっかり掴まれよ!」
「おー!! いいじょー!!」
紅龍王の背に乗って、一気に王城まで戻って行った。
「長老も居てくれるだろう? リヒトも同席しなさい」
「ああ、おばば様」
「はい、おばば様」
城に着いたら、昨日の報告会だ。もちろん、ハルの事についてもだ。
「午後から時間があれば、遺跡調査に出よう」
「長老、分かりました」
長老やおばば様達が報告をしている間、ハルさんは……おやおや、早速ドラゴンの幼体達と遊ぶ様だ。
ハルが短い人差し指を立てて、ドラゴンの幼体達に言い聞かせている。
「らめ。もう寒いかりゃ池はらめ」
「キュルル」
「おりぇ、寒いし」
「キュル」
「ん、らから庭れ遊ぼう」
「キュルルー」
まるで、保育園だ。先生がハルで、園児がドラゴンの幼体とコハルとシュシュだ。
シュシュはデカイが……
「ハルちゃ~ん! 鬼はハルちゃんよ~!!」
うん、やっぱ園児で大丈夫そうだ。
結局、報告会が長引き、その日ハル達は1日中ドラゴンの幼体達と仲良く遊んで過ごした。
皆でお昼を食べ、皆でシュシュにくっついてお昼寝をして、皆でルシカのおやつを食べた。
翌日、次に調査へ向かったのは、南方を守護する紅龍王の里だ。おばば様の家まで乗せてもらった事もあり、紅龍王の里に決まった。
紅龍王ホンロン。遺跡調査にも同行するそうだ。龍王は皆、こうなのか? 黄龍王と言い、好奇心旺盛だ。シュシュが言っていたように、ある意味イケイケだ。
「やっぱ、デケーな」
「ほんと、また大きいわね」
「さっさとやってしまうなのれす」
「やだ、コハル先輩。やる気なの?」
「まだあと3つもあるなのれす」
そうだった。まだ白龍王、青龍王、黒龍王の里の遺跡調査が残っている。と、言うかまだ2箇所目だ。始めたばかりだ。
「さっさと入るぞー」
リヒトが引率の先生の様になっている。今回は保育園ではなく……
修学旅行の引率の先生といった感じか。
遺跡の中は黄龍王の里にあった遺跡と同じだった。作られた年代が同じ頃なので、どこも同じ様な感じなのだろう。
途中から通路がまた二股に分かれている。長老やハル、リヒトが見ている。
「じーちゃん、ここはらいじょうぶらな」
「ああ、みたいだな。で、ハル。どっちに行く?」
「じーちゃん、魔石はきっと右ら」
「待て、念の為結界は張っておく」
長老が片方の通路の向こう側に結界を張る。
リヒトが先頭になって右側の通路に入って行く。
「あれ? なあなあ、あっちは行かなくていいのか?」
「ホンロン様、この遺跡は魔物が入ったりしていない様です。長老が向こう側に結界を張ってくれました。なので、魔石のある部屋に行きます」
「おう。ルシカ、そうか」
通路を奥に進んで行くと、黄龍王の里の遺跡にもあった飾りのあるプレートが埋め込まれていた。その横の壁をハルが見る。
「じーちゃん……」
「ん、そこか?」
「ん、みたいら。れもやっぱ扉がねー」
ハルの小さい手で、壁をペチペチと叩いている。
「リヒト、またそこの飾りのあるプレートだ」
「長老、分かった。せーの……」
長老とリヒトがタイミングを合わせて、そこだけ飾りが付いているプレートに乗る。と、何もない筈の壁がゴゴゴゴと大きな音をたてて両側に分かれて開いた。
「おお! スゲーな!」
「ホンロン様、入りますよ。て、言うか……」
「ん? イオス、なんだ?」
「ホンロン様はお付の人とかいないんスか?」
「ん? 従者ならいるぞ。いるけど普段はたいがい俺1人だ」
「それってお付っていうのかしら?」
「なんだよ、シュシュ」
「だって、普段は1人なんでしょう? それって従者とは言わないわよね? ねえ、ルシカ」
「さあ、どうなんでしょうね。私は必ずリヒト様の傍にいますが」
「普通はそうよね?」
「いいんだよ。俺、そーゆーの面倒なんだよ」
「えぇー、紅龍王様なのに」
「イオス、その目はなんだ」
「イオス、入るぞ!」
「はい、リヒト様。ホンロン様、行きましょう」
「ああ」
イオスが紅龍王の従者の様になっている。
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