第127話 調査開始

「長老、リヒト殿。お疲れ様でしたわね」

「お疲れさまでした」

 

 竜王妃と青龍王妃が部屋にいた。ルシカやミーレと一緒にお茶を飲みながらまったりとしている。こちらも仲良くなったらしい。


「イオスとカエデはまた訓練か?」

「はい、リヒト様。カエデがシュシュを怖がって使い物にならないのです」

「アハハハ。猫と虎だからな。慣れるまでは仕方ないだろう」

「彼らはよく鍛錬しておりますね。関心ですわ」

「本当に。あの猫獣人、みるみる成長しておりますわよ。見ていて楽しいですわ」


 竜王妃、青龍王妃共にイオスとカエデの事も良い様に思ってくれているようだ。


「猫獣人はカエデと言います。ヒューマン族の奴隷だったのですよ。縁があってハルに付く事となりました。カエデなりにハルを守るためにと頑張っています」

「まあ! 長老、本当ですの!? 何てことなんでしょう!? あんな小さい子を奴隷だなんて!」

「やはりヒューマン族は信用できませんわね」

「ねえ、嫌ですわねぇ」


 おやおや、奥様お2人の偏見が凄い。


「それにしても、ハルちゃんは可愛いですわね」

「本当に。とっても可愛い」

「よく寝ているわ」

「皆いっしょにね」

「ウフフフ」


 平和だ……長閑だ……


「遺跡の調査をしてくださるのですよね?」

「あら、おばば様に会うのが先なのでしょう?」

「そうだわ、おばば様が先ね」

「長老、そうなのですか?」

「ルシカ、先かどうかは分からんが遺跡の調査もするし、おばば様にも会うぞ。しかしハルは良く寝ているのぉ。可愛いのぉ」


 うん……平和だ。



「りゅしか、りゅしかのくりぇーぷが食べたいじょ」


 お昼寝から起きてハルがリクエストをしている。


「ハル、こちらの料理人の方もお上手ですから」

「ん、しょっか」

「ねえ、ハルちゃん。クレープてなぁに?」

「シュシュ、知りゃねーのか? りゅしかのくりぇーぷは超美味いんら」

「やだ、そうなの? ルシカ、あたしも食べてみたいわ!」

「シュシュ、国に帰ってからですね」

「あら、そう?」

「え? ルシカ、私達も食べたいわ」

「そうよ、食べてみたいわ」


 龍王妃2人も言う。


「厨房を借りればいいじゃない?」

「そうよね」

「え、しかし……」

「だって食べてみたいのだもの」

「ええ、是非」


 と、龍王妃2人のリクエストでルシカがクレープを作る事になった。ハルは人ごとだ。言い出しっぺなのに。


「やっぱりゅしかのくりぇーぷは美味い!」

「ホント、とっても美味しいわ!」

「キュルル!」

「アハハハ。ハル、シュシュありがとう」

「本当、美味しいわ」

「とっても美味しいですわね」

「エルフ族って何でも出来るのね。この生クリームと果物の盛り付けなんて繊細で素晴らしいわ」

「竜族は細かい事が苦手だもの」

「ルシカ、美味いな」

「ああ、美味い。甘すぎないのが良い」


 2人の妃やリヒトと長老まで食べている。


「なんだ? 甘い匂いが……」


 竜王と青龍王だ。


「赤子を見に来てみれば、皆で何を食べているんだ?」

「竜王様、ルシカがクレープを焼いてくれたのですよ」

「ほう、ルシカは料理までするのか?」

「青龍王しゃま、りゅしかの料理は超美味い」

「アハハハ。ハル、そうか」

「ん」


 ハルさんほっぺに生クリームがついている。お決まりだ。ルシカがハルのほっぺを拭いている。これもお決まりだ。


「ルシカ、私も食べたい」

「私もだ」

「竜王様達もですか?」

「美味しいですわよ」

「ええ、本当に美味しいわ」

「作って参りますので、お待ち下さいますか?」

「ルシカ、もちろんだ。悪いな」

「いえ、とんでもございません」

「ルシカ、イオスとカエデもそろそろ戻ってくるんじゃないか?」

「そうですね。ついでに2人の分も作ってきますよ」

「ああ、そうしてやってくれ」

「あー! イオス兄さん強すぎやわ!」

「アハハハ! どーよ!」


 ちょうどイオスとカエデが戻ってきた。


「あ、ルシカ兄さん! おやつか?」

「はい、カエデの分も作ってきますね」

「ルシカ兄さん、一緒に行くわ」


 ルシカとカエデがおやつを作りに出て行った。


「なんだ? カエデも料理をするのか?」

「竜王様、カエデも上手ですよ」

「リヒト殿、エルフは何でもできるのか? いや、カエデは猫獣人か」

「ルシカとカエデは料理も上手いのですよ」

「やだ、リヒト様。何で私を見るんですか?」

「ミーレ、それは言い掛かりだ」

「えー、そうですか? 今、目が合いましたよ」

「なんだ?」

「いえ、青龍王様。ミーレは料理が駄目で」

「そうか、駄目な事がある位で丁度良いぞ。ミーレ、大丈夫だ」

「え? なんか複雑なんですけど」

「アハハハ!」

「リヒト様、笑いすぎです!」


 和やかに午後の一時が過ぎて行く。


「長老、先に1箇所だけでも遺跡を見ておかないか?」

「リヒト、そうだな。あの魔石があるかどうかだけでも確認しておきたいな」

「例の魔石か?」

「はい、竜王様。無ければ良いのですが。もし魔石が見つかって漆黒になっていたら面倒ですからな」


 ドラゴシオン王国の遺跡は五大龍王其々の里にある。合計5箇所だ。1番近いのは中央を守護する黄龍王の里だ。


「黄龍王の里の遺跡を調査してみるか? 黄龍王に伝えておこう。担当者を連れて行ってほしい」

「はい、竜王様。畏まりました」



 翌日、早速遺跡の調査に出る事となった。


「ハルちゃん、また飛び出したらあかんでー」

「かえれ、しょんな事しねー」

「そうか? まあ、なんにもないやろうけどなぁ」

「ん」

「カエデ、余計な事言ってフラグ立てたら駄目だぞ」

「イオス兄さん、そう?」

「ああ、そうだ」


 その通りだ。盛大にフラグが立った気もしないではない。

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