第128話 黄龍王の里の遺跡
翌日、リヒト達一行が最初に向かったのは中央を守護する黄龍王の里にある遺跡だ。遺跡と言っても、大森林にある遺跡とはまったく違っていた。
「おー、超でけー」
「ホンマやわ」
「さすがドラゴンの遺跡ね」
ハルとカエデとシュシュが驚きの声を上げるほど、見上げる程の巨大な遺跡だった。遺跡と言うよりも、山肌にポッカリと空いた巨大な洞窟と言ったところか。遺跡の周りだけ民家等の建物は見当たらない。こんもりと丘の様になっている。まるで、日本の古墳の様だ。
「長老! 手間掛けてすまんな!」
そう言いながらやって来たのは黄龍王グウロンだ。
肩までの金髪を無造作に伸ばしていてゴールドの瞳。少し陽に焼けた気の良いおじさんといった雰囲気だ。歩み寄りながら、長老に握手を求めている。
「グウロン様、早速参りました」
長老もハルを抱っこしたまま気さくに応じている。
「うちは一番に見て貰えてラッキーだぞ。宜しく頼む。で、長老。その子か?」
「はい、ワシの可愛い曽孫でハルと言います」
「はじめまして、はりゅれしゅ」
「おう、宜しくな! マジ小っさいな!」
「グウロン様、昨日はお疲れ様でした」
「おう、リヒト。お互いな! 今日は俺が同行するぞ。宜しくな!」
「え、グウロン様がですか!?」
「どうか皆さま放っておいて下さい。グウロン様は言い出したら聞かないのですよ。私は従者のジアンと申します。宜しくお願い致します」
「ジアン、だって見てみたいだろう?」
「だからと言ってグウロン様の来る必要がありますか?」
「だからぁ、俺がこの目で見たいんだよ。分かんねーかなぁ?」
「分かりませんね。理解に苦しみます。皆さんいい迷惑ですよ?」
「え? そうなのか? 長老、リヒト。俺が同行したら迷惑か?」
「いえ、迷惑ではありませんが……その、まさかグウロン様ご自身が同行されるとは思いませんでした」
「ほら、リヒト様もこう仰っているでしょう。本人にはまさか迷惑なんて言えませんよ」
「ジアン、お前ホント酷いよ?」
「まあまあ、ではグウロン様は1番後ろからついて来て下さい。何があるか分かりませんから」
「おう、リヒト。ありがとうな!」
黄龍王、満面の笑みだ。気の良いおじさんだ。
ドラゴン種の遺跡。超巨大遺跡だ。人化前のドラゴンが余裕で通れる程の大きさがある。ドラゴシオン王国の中央にある丘にぽっかりと空いた洞窟の様だが、中に入ると両側の壁や天井はしっかりと人口的な物で補強されていて、通路も同じ様に舗装されている。
一行は奥へと進んで行く。ハルはまだ長老に抱っこされている。ハルの両側には賑やかなネコ族が……
「しゅげー」
「な、ハルちゃんびっくりやんな」
「凄いわ。よくこんなもの作ったわね。天井までどれだけあるのかしら?」
ハルとカエデとシュシュが驚いている。
「あたし色んなところに行ったけど、こんなの初めて! 凄いわ! 感動しちゃう!」
「アハハハ! なんだ、その虎は雌なのか? 聖獣だよな?」
「失礼ね。いくら黄龍王でもそんなデリカシーのない事を言ってたら嫌われちゃうわよ」
「お、おお。すまん」
素直に謝っている。黄龍王より態度の大きいシュシュ。何度も言うが、これでも雄だ。
広い通路がずっと奥へと続いている。何処からか、冷たい風が入ってくる。
「もう少し行くと通路が2つに分かれているんだ。片方は向こう側に抜けている。もう片方は行き止まりになっている」
黄龍王、よく知っている。
「グウロン様は遺跡が大好きなのですよ」
「ほう、そうでしたか」
「長老、だって凄いとは思わんか? 何万年も昔のものなんだぞ。悠久の時を超えてこの地に残っているんだ。いや、残したかったんだ。そう思っただけでもう凄いとしか言いようがないだろう! ロマンだよ、ロマン!」
「おお! りょまん!」
おっと、ハルが反応している。ハルのロマンと言えば……
「プププ」
「かえれ、何ら?」
「だってハルちゃんのロマンて言うたらなぁ」
「あー、アハハハ!」
「りひとまれ。何ら?」
「ハル、覚えてねーのか? 箒に乗って飛ぶのがロマンだと言ってたじゃねーか」
「アハハハ! 確かに言っておったな」
「らって、しゅげくねーか? 飛ぶんらじょ?」
「ハルちゃん、そこと違うねんなぁ。箒ってとこがハルちゃんらしいと言うか、突拍子もないって言うか」
「しょお?」
「そうやで」
「なぁに? ハルちゃん飛びたいの?」
「ん、しゅしゅ。もうじーちゃんに作ってもりゃった魔法杖で飛べりゅかりゃいいんら」
「え!? ハル、杖で飛ぶのか!?」
また、黄龍王が食いついた。
「ん、じーちゃんが作った杖はしゅげーんら。飛びやしゅいんら」
「ハル! スゲーな!」
「らろ!?」
おやおや、2人意気投合しちゃってる。
「で、どっちに行きますか?」
二股に分かれた通路が見えてきたところで、ジアンが聞いている。
「あ……じーちゃん」
「ああ、先にやっちまうか」
「長老、そうだな」
リヒトを先頭に迷わず片方の通路へと入って行く。リヒトは片方の肩を回している。準備運動か?
「おい、そっちは向こう側に抜けるぞ?」
「グウロン王、先にちょっと掃除します」
「リヒト、何だ?」
雰囲気で察したのか、ルシカとイオス、ミーレにカエデも臨戦体制だ。
「こはりゅ」
「はいなのれす!」
「いくじょ」
「いくなのれす!」
コハルが亜空間から出てきた。これは久々にハルちゃんやる気な感じ。
「とぉッ!」
ハルはシュタッと長老の腕の中から飛び下りタッタッタッタッと走り出した。
「こら、ハル! 急に下りたらびっくりするじゃねーか! じーちゃん、心臓がキュッてなったぞ!」
「アハハハ! 長老、だろ? そうなるだろ? 俺も何回心臓がキュッてなった事か! ルシカ、行くぞ!」
「はい! リヒト様」
「カエデ、行くぞ!」
「はいにゃ! イオス兄さん!」
「もう、嫌だわ。みんなイケイケなんだから。シュシュ、行くわよ!」
「何言ってんの、ミーレだってヤル気じゃない」
シュシュもミーレに言われて走って行く。
「なんだ? ジアン、何なんだ?」
「さあ? 私には分かりません」
黄龍王とジアンもまたリヒト達が入って行った通路へと走って行った。
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