第104話 武器を作ってもらう?

「え、よろしくね。こんな小さな子もですか?」

「君達を送ってからドラゴシオン王国にも行くんだ。それで同行する」

「ドラゴシオン……竜族の国にですか!?」

「そうだ。野暮用があってな。それで、君達の処遇だが……」

「はい……どんな処罰でも受けます」

「気になるだろうから話しておこう。君達自身には、謝罪文と誓約書だけで済む。今後2度とこの様な事はしないと誓約書にサインしてもらう」

「それだけですか? そんな……それでは……」

「君達はまだ若い。それを考慮しての事だ。しかし、国に対してはそれだけでは済まない」

「は、はい」

「国に対しても誓約書を書いてもらう。今後、遺跡には手をつけないと徹底してもらう為だ。我々にとっては大事なものだからな。それと、今回の賠償としてエルヒューレ皇国への技術提供だ」

「技術提供……?」

「ああ。君達ドワーフの技術は高い。その技術をこの国の職人に提供すると協定を結んでもらう。これは、決定事項だ。君達がした事の詳細も、それに対してのこちらの被害や要望も既にツヴェルカーン王国には通達し承諾を得ている」

「は、はい……」

「まぁ、君達はこっぴどく叱られるだろうな。だが、命があっただけ儲けもんだ。命を落としていても、不思議ではない状態だったのだからな」


 彼らがした事に対しては寛大な処置だ。それでも、国に迷惑を掛けた事には違いない。


「そんな……ジャーノどうすんだよ! 親方に破門されちまうぞ!」

「ヴォルノ、仕方ないわよ。覚悟を決めなさい」

「君はジャーノと言ったか」

「はい、ジャーノです」

「歳はいくつだ?」

「わたしは15歳です」

「そっちの子はヴォルノと言ったか?」

「はい。俺は18歳です」

「2人共、まだ大人とは言えん。君達の親方がどう判断されるかはワシには分からんが、それでもだ。運良く助かった命だ。命があれば何度でもやり直せるんだ。それを忘れたらいかんよ。どんな罰を言い渡されても、腐ってはいかん。より精進するんだぞ」

「はい……はい。ありがとうございます」

「はい、ありがとうございます」


 長老は種族に関係なく懐が深い。


「じーちゃん、おりぇとかえれの短剣作ってもりゃおっか?」

「ハル、そうか?」

「ん」

「え……? 私達でいいの?」

「ん、おりぇまら武器持ってないんら。かえれは10歳の猫獣人なんらけろ、まら持ってないんら。できりゅ?」

「私達でいいなら是非作らせて欲しいわ!」

「アハハハ、ハル。良い子だ。ま、それも含めて親方に話をするんだな。しっかり謝ったら親方もそう邪険にはできまいよ」

「ありがとうございます!」

「俺……本当に迷惑かけたのに……」

「自分の軽はずみな行動が多くの人に迷惑を掛けたんだと分かっただろう?」

「はい。もう、嫌と言う程分かりました」

「それを学べたのなら良かった。これからはしっかり考えて行動するんだぞ」

「はい……」

「ハルくんて言うの?」

「ん」

「ハルくんは何歳?」

「おりぇは3しゃいら」


 プクプクの短い指を3本立てて見せる。


「まだ小さいのに、もう武器を使うの?」

「まら、使った事ねーよ。らって持ってねーし」

「そうね。まだ必要ないんじゃない?」

「ジャーノ、護身用だ。ハルは真っ先に突っ込んで行くからな」

「え……!?」

「じーちゃん、おりぇしょんな事しねーよ」

「そうか? そんな事あるだろうよ」

「えー、しょっかぁ?」

「アハハハ、そうだぞ」

「え……? え? ハルくん戦うの?」

「黒いモヤモヤが出た時もおりぇじーちゃんと出たじょ」

「信じらんない……!」

「そうだろう? だが、これでもハルは強いんだ。君達2人より余裕で強いぞ」

「マジかよ!? 俺、3歳児に負けてんのかよ!」

「アハハハ! ヴォルノは鍛治師になるのだろう? 強くなくてもいいだろうが」

「それは関係なく普通にショックですよ」

「アハハハ、そうか? まあ、ハルは特別だ。君達が出してしまった瘴気も浄化したんだ」

「え……普通にスゲー」

「ふふん」


 おや、ハルさん。少し自慢気だ。


「長老様、本当に色々お気遣い頂いてありがとうございます」

「構わんさ。先ずは早く元気になりなさい」

「はい、ありがとうございます」


 ドワーフの2人が元気になり、ツヴェルカーン王国に向かう事ができる様になったのはそれから数日経ってからだった。

 長老はドラゴシオンだけでなく、ツヴェルカーンの問題が増えた事もあり、忙しくなったのだろう。ハルと一緒にドワーフの2人と会った日以降ベースまで来る事はなかった。そして、出発の日。


「あ、じーちゃん!」

「ハル、元気にしとったか?」

「ん、じーちゃん忙しかったのか?」

「色々、野暮用があってな。リヒト」

「はい。準備はできてますよ。ミエーク、頼んだ」

「任せとけ。安心して行ってこい。ハル、気をつけるんだぞ」

「ん、ありがちょ」


 ベースの広場にユニコーンではない普通の馬と馬車、そしてドワーフの2人とリヒト達が集まる。


「出来るだけコンパクトになってくれるか?」


 長老が指示をだす。ハルはリヒトに抱っこされ、カエデはイオスの手を握っている。ベースにいる間、毎日イオスに訓練をつけて貰っていたせいか師弟の様だ。ドワーフの2人は意味が分かっていない。

 そして、長老が杖を出し皆が入る様に半円を描いた。すると、キラキラとした光が現れ、消える頃には長老達の姿も消えていた。

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