第6章 おりぇ、ドワーフの国に行っちゃったよ!

第105話 ドワーフの国に到着

「よし、着いたな」


 長老が皆を転移させた先は、ベースの中でもリヒトが管理するベースの反対側、北西にあるベースだ。


「長老、リヒト。待ってました」


 出迎えたのが、ベースの管理者だ。

 リレイ・グリーエン。リヒトの祖父の妹の孫にあたる。ブルーゴールドの長い髪に、ブルーの瞳。背丈もリヒトと同じ位で、エルフらしい見た目だ。


「リヒト、そのちびっ子が?」

「ああ、長老の曽孫でハルだ」

「はりゅれしゅ」

「おお、賢いなぁ。俺はリレイだ」

「ワシの曽孫は可愛いだろう」

「アハハハ! 長老、可愛い過ぎますよ!」

「そうだろ、そうだろう。そっちの猫獣人がハル付きのカエデだ」

「カエデです。宜しくお願いします!」

「カエデか! まだ小さいのに偉いな!」


 こうして、ハルとカエデは少しずつエルフの国に馴染んでいくんだ。リヒトが保護する長老の曽孫。その曽孫付きの猫獣人として。


 このベースは中継点だ。ここから、ツヴェルカーン王国までは普通に馬と馬車で移動する。

 ハルはいつも通りリヒトの前に、ルシカやミーレと長老は馬に、イオスが御者になり馬車を操る。その横にはカエデが座っている。そして、馬車にはドワーフの2人が乗っている。初めての転移で驚いたのか、2人して項垂れている。


「長老、お気をつけて! リヒト、無茶すんなよ!」

「するかよ。リレイ、じゃあな!」

「ああ、また今度ゆっくりな!」


 リレイが管理者を務めるベース近くにもエルフの遺跡がある。その地下にも大きな魔石のある部屋が見つかった。長老が早急に対応した為、瘴気の靄が漏れ出す事はなかった。既に、リレイ達ハイリョースエルフが浄化済みだ。

 あと3ヶ所のベース近くにある遺跡の地下からも同じ魔石が発見された。それも、無事に浄化済みだ。

 あと残り1つの遺跡だが、それはエルヒューレ皇国皇城の地下にあった。正確に言うと、原初のエルフ族の遺跡がある真上に城は建っている。その遺跡からも魔石が発見され、既に浄化済みだ。

 リヒトが管理するベース近くの遺跡で、ドワーフの2人によって無理矢理地下への扉を開けられた。一時は瘴気の靄が溢れ出し魔物が発生したが、リヒト達ハイリョースエルフだけでなくハルとコハルがいた事と、長老の対応が早かった事で浄化は早急に済んだ。

 その際に、遺跡にあった壁画から他の遺跡にも同じ物があると発覚した事で瘴気が漏れ出す前に浄化できた。結果的には最小限の被害で済んだと言えるだろう。


 北西のベースから馬と馬車で数日移動した。都心から隣県へ移動する程度の距離だろうか。

 街道は整備され、人を襲ってくる魔物が出る事もない。街道の整備は主にドワーフ族と獣人族が請け負っているが、魔物が出ないのはエルフ族が大森林をしっかり管理しているからだ。

 魔物の生息地は主にヘーネの大森林。それに、ドワーフ族の国がある火山地帯、竜族の国がある高山地帯、それと海だ。

 火山地帯と高山地帯や海からは、ほとんど魔物は出てこない。飛行できるタイプの魔物がいるにはいるが、竜族が抑止している。

 故に、街道に出る魔物と言えば、低位の冒険者や民間人でも討伐できる程度だ。脅威というよりは、食料になっていたりする。もちろん、エルフ族にとっては相手にならない。


 目の前に、火山地帯の地形を利用した天然の要塞の様な防御壁が聳え立つ。無事に、ドワーフ族の国『ツヴェルカーン王国』に到着した。

 その入り口に、エルフが2人待っていた。1人はリョースエルフ、もう1人はダークエルフ。2人共、ハイエルフではないらしい。耳の尖り方がミーレと一緒だ。


「長老、リヒト様、お待ちしておりました」

「おお、ご苦労だったな」

「宿をお取りしております。先ずはそちらへご案内致します。長老、ドワーフ族の2人は馬車ですか?」

「ああ、そうだ」

「分かりました。入国を済ませましょう。ドワーフの2人は誓約書の件もありますので、私の補佐が付き添います」


 待っていたエルフに先導され入国を済ませる。ドワーフの2人にダークエルフが付き添う。


「あ、あの! 皆さん、本当にお世話になりました」

「ありがとうございました!」


 ドワーフの2人が頭を下げる。


「しっかり叱られてきなさい。頑張るんだぞ」

「はい! ありがとうございました」

「ありがとうございました!」


 長老が声をかけると、2人は礼を言いながらまた頭を下げた。2人はダークエルフに付き添われ街の中へ。これから2人が世話になっている親方の工房へ行くのだろう。


「じーちゃん、あの2人は罪になりゅのか?」

「罪には問われないだろう。衛兵が付いておらんだろう?」

「しょっか。良かった」

「親方には叱られるだろうがな」

「しょりぇは仕方ねー」

「そうだな」


 長老とリヒト達一行は、リョースエルフに先導され宿へと向かう。街の中に入ると蒸気や煙が上がっていて、彼方此方から鉄を打つような音が聞こえてくる。そんな鍛治工房が並ぶ通りを中央に向かって進んで行く。

 街自体も山を利用しているのか、建物は全て鉱石らしき材質でできている。エルヒューレの様な木々はない。少しずつ民家や商店、宿屋らしき建物が多くなり、そんな中でも大きな宿に着いた。


「リヒト様、俺は馬車と馬を預けてきます」

「ああ、イオス。頼んだ」

「はい。カエデはミーレに付いて行きな」

「イオス兄さん、分かった」

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