第102話 採掘できない理由
「魔物って何の魔物なんだ?」
「それが、姿をちゃんと見た者がいないんです。姿が見えないそうです。その上、討伐に出た冒険者や守備隊も皆ボコボコにやられて毒に侵されて逃げ帰ってくるんです」
「姿が見えないと言うのは?」
「黒い煙幕の様なものを出すらしいです」
「長老……」
「ふむ……それは、普段は地中にいるのか?」
「はい、地中に潜っているらしいです。だから、最初はモグラ系だろうと思っていたんです。モグラ系ならよくいますから」
「なるほど……リヒト、彼らを送って行くか? ついでに見てみるか?」
「え、長老。ドラゴシオンにも行かないといけないんだぞ?」
「ツヴェルカーン王国へ2人を送ってからドラゴシオンだな。どっちにしろ、2人だけで帰す訳にはいかないだろう?」
「そりゃ、そうだが……」
「いえ! そんな、送って頂く訳にはいきません! これ以上、ご迷惑をお掛けする訳にはいきませんから」
「いや、嬢ちゃん。着ていた服もボロボロで装備に荷物、馬もないんだぞ。勿論、魔鉱石もだ。それに、君達が仕出かした事の後始末もせんといかん。エルフの、それも原初のエルフの遺跡を荒らした事になるのだからな。しかも、それがきっかけで魔物が溢れ出した。2人だけで帰す訳にはいかんな」
「長老の言う通りだ」
「あ……申し訳ありません」
「リヒト、陛下が動かれるだろう。そうしたら、行かない訳にはいかなくなると思うぞ」
「はぁ……長老、そうですね」
「まあ、とにかく安静にして旅に耐えられるまでには回復してもらわんとな。ルシカに言って薬湯も用意しよう」
「長老、そうですね。とにかく今はゆっくり休むといい。安心しろ、悪い様にはしないからな」
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます!」
話を聞き部屋を出てきた3人。
「長老、魔物は何か予想はついてんですか?」
「リヒト、多分……てとこだな」
「討伐しようと思ってるんだよな?」
「そりゃあワシが思っている魔物だったらドワーフやヒューマンには討伐できんからな」
「また、長老……」
「ん? 何だ?」
「ハルも一緒なんスよ?」
「むしろハルが一緒で良かったぞ。ハルの聖属性魔法は強力だからな。コハルもいる」
「そうだけど……また飛び出すぜ?」
「アハハハ! そうだな! ハルのあれは性格だな!」
「長老、笑い事じゃないし」
「大丈夫だ。ハルは強い。ワシ1人で討伐してもいいんだが……ハルにはなんでも経験させたいんだ。力をつけさせたい。それにワシがいる。ハルには指一本触れさせんよ。なんせ可愛い曽孫だ」
「とにかく、ルシカに言って薬湯を作ってもらおう。体力回復でいいッスよね?」
「ああ、それでいい。さて、ハルはどうしているかのぉ」
「長老……」
「アハハハ! 長老もハルが可愛くて仕方ないんですね!?」
「ミエーク、当たり前だ。ワシの可愛い曽孫だからな」
その頃ハルは……スヤスヤとお昼寝中でした。小さな身体をより小さく丸くして寝ている。
「おう、可愛いのぉ。よく寝ている」
「長老、お城に帰らなくていいんですか?」
「ミーレ、帰るさ。少しくらい可愛い曽孫の顔を見ても構わんだろう」
「長老、ハルちゃん可愛いもんなぁ」
「おう、カエデも可愛いぞ」
「いや、そんなついでみたいに言われてもなぁ」
「アハハハ! ついでではないぞ。カエデ、訓練しているのか?」
長老の瞳がキラリとゴールドに光った。
「はい。イオス兄さんに教わってます!」
「そうか。身体能力が伸びておるな。身体の使い方が上手くなっている様だ」
「凄い! やっぱ長老凄いねんな! そうやねん! イオス兄さんに体術教わってます!」
「そうかそうか。焦らずにな。ゆっくりでいいから確実にだ。どうもカエデはせっかちなとこがあるみたいだ」
「え……そんな事まで分かるん? スゲーな」
「アハハハ。ハルを頼んだぞ。ミーレもな」
「もちろんや」
「はい、長老」
そして、長老は一旦城へ戻って行った。
「……持っちぇこーい!……」
ブンッ! と、手を振り下ろすハル。
「……ん? おりぇ寝てた……? スパイク決めたじょ……?」
なんの夢を見ていたんだ?
「え……ハルちゃん今の寝言なん?」
「カエデ、そうなのよ。時々変な寝言で起きるのよ。ハル、もう起きる?」
「ん、みーりぇ。のろ乾いた」
「果実水でいい?」
「ん……ありがちょ」
ハルはミーレから果実水を貰いコクコクと飲む。
「ふぅ……よし。よく寝たかりゃ次はりゅしかのおやちゅら」
「アハハハ! ハルちゃん順番があるんか?」
「ん」
「ハル、食堂に行く?」
「ん、みーりぇ。行く」
ヨイショとハルは後ろ向きにベッドから下りる。
「ハルちゃん、さっき長老来てたで」
「じーちゃん? ろこ行った?」
「もうお城に帰られたわよ」
「しょっか」
「また直ぐに来られるわよ」
「ん」
ハルとカエデとミーレの3人で食堂にやって来たが……
「ありぇ、りゅしかがいない」
「そうね、いないわね」
「ほな、自分がオヤツ作ったるわ!」
「えぇー……」
「え、ハルちゃん自分やったらあかんの?」
「もう、りゅしかのおやちゅのお口になってた」
「なんやそれ?」
「おや、起きましたか? オヤツ食べますか?」
ルシカが戻ってきたぞ。手には薬湯を入れていただろう器を持っている。例のドワーフに飲ませたのだろう。
「りゅしか! 食べりゅ!」
「アハハハ、はい。直ぐに用意しますね」
「ルシカ兄さん、自分にも手伝わせて」
「もちろん、構いませんよ」
「自分、賄いしてたから料理は得意なんやけど、オヤツはなぁ。作り慣れてへんねん。なんせ、野郎ばっかやったからな」
「そうですか。では少しずつ覚えていきましょう」
「うん!」
ルシカとカエデが厨房に入って行った。
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