第8話 ベースとこの世界の国の事

 また、リヒトに抱き上げられベースと呼ばれる拠点の中を案内してもらう。


 1階と言っても地面から木の階段がある。それを登ったところにある1階には受付と待合だろうか、木の長椅子がいくつも並べてある。カウンターの向こうには事務所の様なスペースがあり何人もエルフが働いていた。

 待合の奥には食事が取れるようになっていて、何やら売店らしきものもある。それと医務室。裏側には取調室や牢屋もあった。


「大森林にこれから入る人達をここでチェックするんだ。迷う奴もいるからな。大森林に入っても大丈夫かどうか見極めているんだ。知識と力のない奴が大森林に入ると命を落とす事になる。目的地によってはガイドや護衛の受付もしている。それに悪党もいる。密猟者もな。そんな奴等の為に牢もある」

「しょうなんら……」

「おう。だからな、小さなハルが森の中に1人でいてビックリしたんだ。オマケに超大型がそばにいたろ? 訳が分からなかった。もしも、捨てられたのなら放ってはおけないしな」

 

 なるほど。だから心配してくれていたのか。


 次は2階だ。2階はベースで働くエルフの為の食堂と厨房になっていた。あと、風呂場だ。風呂場と言っても日本にある様な風呂場ではない。シャワー室の様だ。

 それに、洗濯室もあった。厨房にはエプロンをつけたルシカがいた。


「おや、起きましたか。食事はできそうですか?」

「うん! りゅしか、腹ペコら」

「回復している証拠ですね。何か作りましょうね」

「りゅしか、ありがちょー」

「いえいえ」


 ルシカ……まるでオカンだ。エプロン姿が様になっている。

 リヒトに抱っこされたまま3階へ行く。


「ハル、お前ルシカには態度が違うじゃねーか」

「あたりまえ、飯はらいじ」

「プハハハ! 飯か!?」

 

 何を当たり前な事を言ってるんだ? と言わんばかりのハル。


「ほら。ここが俺の仕事場だ」


 3階にはリヒトの執務室があった。それと複数の個室。執務室や面談室らしい。


「りひと、もしかしてえりゃいひちょか?」

「あぁ? 偉い人かってか? まあな。ここの管理者だ。皇族だしな」


 なるほど。偉い人か。


「4階と5階がここで働いている者達の部屋だ。俺とルシカとミーアは5階。ハルが寝ていた客間も5階だ」

 

 ハルはまたベッドに下ろされる。


「りひと、おりぇもう元気ら」

「いや、何言ってんだよ。お前、3日も目が覚めなかったんだぞ。体力が戻るまで養生しなきゃな」


 意外と優しい。


「寝る前にも言ったけどな、体力が戻ったら1度エルフの国に行く方がいい。この世界で生きて行くためにもな」

「なんれ?」

「そうだな、まずお前の種族は何かだ」

「しゅじょく?」

「あぁ? あんだって?」


 だいぶ、ハルの言う事が分かるようになってはいるみたいだが、まだまだ聞き取れない事もある様だ。


「しゅじょく、て何ら?」

「あ? ああ、種族な。お前の髪色と瞳の色が特殊だと言ったろう? 分かるか?」

「ん」

「だからな、狙われやすいんだ」

「ねりゃわりぇんのか!? やっぱあのじじい、何やってくりぇてんら!」

「あぁ? なんだって?」


 もう、ハルは面倒そうな顔をしている。


「いや、いい。ちゅじゅけて」

「あぁ? とにかく、この世界の国を説明するか」


 『ヘーネの大森林』があるのは大陸の中央。そのまた中央にエルフ族の国がある。

 森の中を流れるテュクス河。テュクス河の上流、森のほぼ中央にあるウルルンの泉の真ん中にどっしりと、そして天まで届くかの様な大樹、世界樹がある。

 その、世界樹とウルルンの泉の周りに栄えるのがエルフ族の国だ。そこが『ヘーネの大森林』の最奥だ。

 ヒューマン族には決して辿り着く事のできない大森林の最奥。世界樹の根本付近に皇城がある。

 エルフの中でも、ハイリョースエルフの皇帝が治める国で、大陸では最も歴史がある国『エルヒューレ皇国』だ。


 大陸の北側の高山地帯にはドラゴンの王である竜王が治める竜族のみの国『ドラゴシオン王国』がある。


 西側の火山地帯には、ドワーフ族が開いた鉱山と鍛治の国でドワーフ族の王が治める国『ツヴェルカーン王国』がある。

 この国は、ドワーフ族8割、ヒューマン族1割、獣人族で残り1割という種族構成だ。


 南側の海や海岸の一部に、人魚族の王が治める国『セイレメール王国』がある。

 海底に王都がある特殊な国で、人魚族、魚族のみの王国だ。


 そして最後に、東側の平地、草原地帯には、ヒューマン(人間)族と獣人族の国がある。

 大平原に6層の防御壁に囲まれた多種族多民族の大国『アンスティノス大公国』がある。この大公国は、ヒューマン族と獣人族の選ばれた貴族が交代で君主位である大公につく。

 ヒューマン族4割、獣人族4割、ドワーフ族1割、エルフ族1割という種族構成だ。


 一般的にエルフと呼ばれているが、1番大きな種族の括りで言うと、正式には『エルフ族』と言う。

 その中から、皇族であるハイエルフ属と所謂平民のエルフ属に分かれ、其々にリョースエルフ種とダークエルフ種にまた分かれる。

 

 また、獣人族はもっと多種多様だ。狼種、猫種、獅子種等に分かれる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る