第7話 大森林の中
「これからお前さんの身体に合った世界で生き直すんじゃわい」
「はぁ?」
「まあ、魂の関係で身体を修復するから多少小さくなるんじゃが……(ゴニョゴニョ)お前さんの、じーさんとばーさんはよっぽど心配なんじゃなぁ。加護やスキルもとんでもない事になっとるわい。今まで辛かったろうにのお。ほんによう我慢したのお。えらいんじゃわい」
「意味不明(4回目)」
「じゃからの、地球で努力した分や我慢した分も無駄にはならんと言う事じゃわい」
「ほう」
「お前さんの保護者になる者達も見繕っといたからの、安心するが良いんじゃわい。あ、それとの。忘れるとこじゃったわい。ほほいっ」
「ピルルルル!」
自称『神』が手で合図すると、ポンッと霞の様な小さな煙が出て、そこから白い子リスが現れた。子リスはハルの肩に乗ってきた。
「なんだ?」
「ワシからのサービスじゃわい。合わん地球で辛い思いをしながらずっと我慢しとった褒美じゃわい。お前さんの役に立つわい」
「お、おう」
「そう言う事じゃわい。ワシもやっと肩の荷がおりたわい。これからは、楽しく思うままに生きるが良いぞ。何にも縛られる事なくな。お前さんはもう自由じゃ。ハルよ、よう頑張った。ほんによう頑張った……」
そしてハルは、景色が一転し身体が浮いたかと思うと何処かに急降下する感覚がした。気がついたら目の前に大型の魔物がいた。
最大種であるホッキョクグマよりもまだ大きい熊の様な魔物が、ヴヴーと威嚇し今にもハルに襲い掛かろうとしている。
「クッショ! あのじじい! 何が楽しくら! こんなちょこに落としやがって! また死ぬちょこじゃねーか!」
「グルグルグル……キュルキュル!」
「あ! あぶにゃい!」
ハルの肩にのっていた小さなリスが突然飛び出し、高くジャンプしたかと思ったら大型の魔物の頭目掛けてドロップキックを決めた!
――グオォォォー!!
魔物は脳にダメージを受けたのか、もうフラフラになっている。
「グルルー!!」
「しゅげー! よぉし! おりぇも! いっくじょー!!」
短い足で、タッタッタッタッと助走し地面を蹴り思い切り高くジャンプし、そのままの勢いで魔物に突っ込んで行く小さな男の子。身体が微かに光っている。
「たーーー!! ちゅどーーーーん!!」
――グギャォォォーーー!!!!
男の子の渾身のパンチが顔面に決まった。そして、魔物は断末魔の叫びと共に倒れた。
「ふぅー、あぶねー。おまえちゅよいな!」
「ピルル!」
小さなリスがハルの肩にのってきた。褒められて自慢気だ。
「ありぇ、なんかちっしぇーじょ? おりぇちっしゃくね?」
「ピュルー」
今更だ……今頃、やっと自分の身体の変化に気付いたハル。
「マジかよッ!」
「ピルル……」
「クッショ! あのくしょじじい! マジふじゃけんな! 何が多少ちっしゃくらよ! めちゃちっしぇーじゃん!!」
「ピルル、ピルル」
「あ? あー、怒んなってか? 怒りゅわ! てか、なんれおりぇりしゅの言葉が分かりゅんら?」
「ピルピルルルル」
「しょっか。おりぇといりゅんら」
「ピルル!」
「なりゃ、名前はなんてんら?」
「ピルュ……」
「ないんか? んー、なりゃコハリュら! ちっしゃいし、女の子らからな!」
「ピヨヨヨ!」
コハルの体がふんわりと光った。
その出来事の直ぐ後に、リヒト達と出会う事になる。
神が見繕ったと言う保護者はリヒトの事だろう。エルフの国の皇族でハイリョースエルフのリヒト。
リヒトに保護され3日間も目を覚さなかったハル。食事をとって、また深い眠りに落ちる。そりゃあ、負担も大きかったのだろう。
少し性格も年齢に引っ張られているのか、前世程人見知りや物怖じをしない様だ。結構、豪胆な感じだ。それでも警戒心は強い。
だが、神よ。転生させるなら場所とタイミングをもっと考えるべきでは?
これでは、ハルが怒るのも無理はない。ハルの中では、クソじじい確定だ。
さて、そろそろハルが起きる頃のようだ。
「……もっちゃいねー!!」
「んわぉッ!! ビックリするじゃねーか!」
どうやら、ハルの寝言らしい。それにしてもデカイ寝言だ。
「あぁ? あー、りひちょらっけ?」
「おう。どうだ? 身体は」
「ん、元気ら」
「そうか! 良かった!」
「……あー、りひと……」
「お? なんだ? どうした?」
「ありぇら……あの……ぴんちら」
「あん? なんだ? どっか痛かったりするか? なんでも言ってみろ!?」
「りひと……しっこ……」
「あ? あんだって?」
「だかりゃぁ……しっこ!」
「お!? お、おう! 抱っこするぞ!」
「1人でいけりゅ」
「まあ、いいからいいから。間に合わなかったらどうすんだよ」
リヒトに無理矢理抱っこされて連れて行かれ、無事に排泄をすます。マジ、危なかった。
ハルは初めて、明るい外の景色を見た。
「うわ……しゅげー、マジ森じゃん」
ハルがいた場所から見えるのは、広大な森。大森林だった。しかも、ハルのいる場所は普通の家ではなかった。
ツリーハウスとでも言うのか。いや、もっとずっと大きくて広い。
大樹に沿って作られた木の家。
「ピルルルル」
いつの間にかコハルがハルの肩にのっている。
「あ? えりゅふの?」
「ピルル」
「俺達エルフ族が管理し守る森だ。『ヘーネの大森林』と呼ばれているんだ」
いつの間にか、リヒトが横に立っていた。
「どうだ。デカイだろ? 綺麗だろ? この大森林の奥深くにエルフの国があるんだ」
「デカしゅぎりゅ……てか、ここは木の上なんら」
「おう、そうだ。エルフは森と共生し守る種族だからな。この大森林にベースと呼ばれる同じ様な拠点が、全部で5箇所あるんだ。俺達はこの大森林を守るガーディアンなんだ」
「がーでぃあん……かっけーな」
「だろ? カッケーだろ。アハハハ!」
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