第20話 クズ
「ねぇ雄太っ……なんで真奈美ちゃんと一緒にいるの?」
「それは……」
俺が『実はまだ真奈美と付き合ってるんだ』と言ったら、彩乃は健斗のモノになってしまう。それは困るっ。
どうする? ここで嘘をつくか?
いや、この状況で嘘をついても彩乃は信じてくれないだろう。
クソっ、ならどうすればいいんだっ……。
黙り込んでいる俺に、彩乃は更なる追撃を加える。
「雄太っ、真奈美ちゃんと別れたんでしょ?」
「ま、まぁな……」
「じゃあどうして真奈美ちゃんと手繋いでるの? どうして過去の女とイチャイチャしてんの? ねぇどうして? どうしてなの……?」
「……」
黙り込んでいる俺を見て、彩乃は絶望に染まった表情を浮かべる。
目には熱い涙が溜まっていた。
「ずっとアタシのこと騙してたんだっ……」
「ごめんっ、本当にごめ――っ」
ペシンと乾いた音が俺の耳を劈く。それと同時に俺の頬に激しい痛みが走る。
彩乃が思いっきり俺の頬を叩いたのだ。
彩乃は俺から真奈美に視線を移す。
「……なんでアタシと雄太の邪魔ばっかりするの!? アンタマジでウザいんだけどっ!」
「邪魔してんのは彩乃ちゃんでしょ。どうしていつも私の彼氏に手を出すのかな……」
「違うっ! 雄太はアンタの彼氏じゃないっ! 雄太はアタシのモノだもんっ!」
「は? 何言ってんの? 雄太くんは彩乃ちゃんのこと股の緩い女としか思ってないよ?」
「そんなことないっ! 雄太はアタシのこと大好きだもんっ! アタシたちは両想いだもんっ!」
「だから違うって言ってるでしょっ! 雄太くんは彩乃ちゃんのことなんか好きじゃないっ! 彼は私のことが大好きなのっ!」
「雄太がアンタみたいなオナホールのこと好きなわけないでしょっ。雄太はアンタのこと都合の良い女としか思ってないから。ねぇそうだよね、雄太? アンタの好きな人は
「……」
彩乃の言葉に俺は返事を窮する。
なんて返事すればいいんだ? ダメだ、分からないっ。本当にどうすればいいんだ?
「雄太っ、今すぐ
「それは……できないっ」
「……ふーん、じゃあアタシ雄太と別れて健斗くんのモノになるから」
俺は「……ぇ……」と声を漏らす。
「健斗くんとたくさんエッチぃことしようかな。キスして、おっぱい触ってもらって、たくさんベッドの上でエッチぃことしちゃうよ? アタシ、健斗くんの女の子になっちゃうよ? 本当にそれでいいの?」
「や、やめろっ……それだけはやめてくれっ」
「なら
真奈美と別れないと、彩乃は健斗のモノになる。
嫌だっ。誰にも彩乃を渡したくないっ。だって、俺の初恋は彩乃なんだぞ……。
初恋の女を他の男に渡したくないよっ。独り占めしたいよっ。ずっと俺のこと好きでいてほしいよ。
悩んでいる俺に、真奈美が話しかけてきた。
「雄太くんっ。このクソ女のことは忘れて私だけのモノになってよ」
「すまんっ。それはできない……」
「ふーん、じゃあワタシ雄太くんと別れて他の男のモノになるよ?」
「……ぇ……」
コイツ、今なんて言った?
「私ね、結構モテるんだよ? 昨日もね、大学生に『今からホテルで遊ばない?』って言われたんだ。もちろん、お誘いは断ったよ」
「そ、そっか……」
真奈美の言葉に俺は安堵の胸を撫で下ろす。
安心している俺を見て、真奈美はニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
「もしあの大学生についていってたら、私どうなってたのかな? ホテルの中で強引に服脱がせておっぱい触ってきたのかな? ベッドの上でムチャクチャにされたのかな? ふふ、なんかゾクゾクするね」
「……」
もし真奈美がその大学生についていったら、ホテルの中で強引にキスされて、何回も身体をムチャクチャにされていただろう。
「今日もね、朝からバイトだったんだけど、イケメンのお兄さんが『連絡先交換しようよ』って言ってきたんだ。もちろん、『彼氏いるから無理です』って断ったよ。けど凄くカッコいい人だったからちょっとだけ『この人、いいなぁ』って思っちゃった」
「……」
「あのイケメンのお兄さん、ずっと私のおっぱいと太もも見てたんだよ? あのお兄さん、私とヤりたかったんだろうなぁ」
「……」
真奈美は真剣な表情で俺を見てくる。
「雄太くん、彩乃ちゃんと別れてくれないんだったら、ワタシあのイケメンのお兄さんとエッチするよ? たくさんおっぱい触ってもらって、相手のアレをペロペロと舐めて……たくさん雄太くん以外の男の子とイケないことするよ? それでいいの?」
「や、やめろっ……俺以外の男とエッチしないでくれっ」
「なら彩乃ちゃんと別れてっ」
「……」
真奈美と別れないと、彩乃は健斗のモノになってしまう。
彩乃と別れないと、真奈美は知らない男のモノになってしまう。
クソっ、俺はどっちを選べばいいんだっ。
そもそも、俺はどっちの方が好きなんだ?
真奈美より彩乃の方が好きなのか? 彩乃より真奈美の方が好きなのか?
ダメだっ、考えても答えは見つからない。
やっぱり、俺は二人のことが好きだ。この二人を誰にも渡したくないっ。だから、
「俺は彩乃のことが好きだ」
俺がそう言うと、真奈美は涙目になる。
一方、彩乃は「えへへ」と蕩けた笑顔を咲かせていた。
「真奈美のことも好きだっ」
俺の言葉に真奈美は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
彩乃はムッとした表情になる。
「俺は……彩乃と真奈美が大好きだっ。二人のことが本当に好きなんだっ」
俺は彩乃のことが好きだ。真奈美のことも好きだ。
この二人のことが大好きなんだ。誰にも渡したくない。この2人を独り占めしたい。
「だからっ、二人とも俺の女になってくれっ!」
「……」
「……」
俺の告白に彩乃と真奈美は黙り込む。
二人とも困惑している様子だった。先に口を開いたのは彩乃だった。
「えーっと、つまり雄太はアタシと真奈美ちゃん、二人と付き合いたいってこと?」
「ああ、そういうことだ」
俺の返事に真奈美は「うわぁぁ……」と呆れた声を漏らす。
彩乃は冷たい視線を俺に向けてくる。
やめろっ、そんな目で俺を見るなぁ……。
「雄太くんは本当にクズだね……」
「そうだね、雄太はクズすぎるよっ……」
「そんなこと分かってるよっ。けどお前らはそんな俺のことが好きなんだろ?」
「うんっ、クズな雄太くんが大好きだよ」
「アタシも雄太のこと好きだよ。愛してる」
真奈美は俺のことが好き。彩乃も俺のことが好き。
あぁぁ、最高だ。凄く気持ちいいっ。もっと二人に『好き』と言われたいっ。もっと2人に愛されたい。ベッドの上でこの二人を同時に相手したい。
「頼むっ、二人とも俺の彼女になってくれっ。絶対に幸せにするからっ!」
「アタシは別にそれでもいいよ……。真奈美ちゃんは?」
「うんっ、私もそれでいいよ。これからよろしくね、雄太くん、彩乃ちゃん」
「うん、よろしくね」
「ああ、よろしくな」
今日、俺に二人の可愛い彼女ができた。
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