第16話 クリスマスデート
――夜――
現在、俺は真奈美とビデオ通話をしていた。
ビデオ通話なので、俺のスマホの画面にパジャマ姿の真奈美が映っている。
今日も真奈美は可愛いなぁ。
『雄太くん、もうすぐクリスマスだね』
「だなぁ」
もうすぐクリスマスだ。
去年は恋人がいなかったので、部屋に引きこもってゲームをしていた。
去年のクリスマスは寂しかったなぁ。だけど、今年は二人の彼女がいる。
真奈美と彩乃、どっちとクリスマスを楽しもうかな。
なんてことを思っていると、スマホのスピーカーから真奈美の声が聞こえてくる。
『ねぇねぇ雄太くん、クリスマスは私と二人きりで遊ばない?』
「うん、いいよ。一緒に遊ぶか」
『え? 本当にいいの? 彩乃ちゃんとクリスマス遊ぶ約束してないの?』
「うん、してないよ」
『そっか。じゃあクリスマスは私とデートしようね?』
「ああ、約束だぞ?」
『うんっ』
真奈美と午後からデートすることになった。
真奈美とクリスマスデートか。
めっちゃ楽しみだ。早くクリスマスにならないかな。
ビデオ通話を終了したあと、俺はソシャゲをプレイしていた。
ポチポチとスマホを操作していると、急に彩乃が電話してきた。
ん? なんだ?
気になった俺はゲームを中断して電話に出る。
ビデオ通話モードに切り替えると、スマホの画面に彩乃の顔が映った。
少しだけ彩乃の髪は濡れていた。たぶん、さっきまでお風呂に入っていたんだろうなぁ。
『ねぇ雄太っ。もうすぐクリスマスだね』
「え? あっ、うん、そうだなぁ」
この会話、さっき真奈美としたぞ。
まさか……。
なんか嫌な予感がする。
『雄太、アタシのこと大好きだよね? ねぇ大好きだよね? 世界で1番好きだよね?』
「う、うん、好きだよ。愛してるっ」
『だったら、クリスマスの日アタシとデートしてくれるよね?』
「そ、それは……」
彩乃の言葉に俺は返事を窮する。
やばい、これはヤバすぎる。
さっき真奈美とクリスマスデートの約束をしてしまった。
彩乃とクリスマスデートはできない。
このお誘いを断ったら、彩乃はショックを受けるだろう。
それは嫌だなぁ……。
こうなったら真奈美とのクリスマスデートをキャンセルして、クリスマスは彩乃とデートするか?
いや、それは絶対にダメだ。
真奈美が泣いてしまう。
どうする? どうすればこの状況を打開できる?
しばらくして俺は口を開いた。
「わ、悪い……クリスマスは用事があるんだ」
『用事?』
「あ、あぁ……」
俺の声は震えていた。緊張しているのだ。
『用事ってなに?』
「えーっと、それはその……」
『真奈美とクリスマスデートするんだ』とは口が裂けても言えない。
もし真実を話したら、彩乃は俺と別れて健斗のモノになってしまう。
それは困るので、俺は大好きな人に嘘をついた。
「クリスマスの日はバイトがあるんだ……」
『バイト? あれ? 雄太ってバイトしてたっけ?』
「さ、最近始めたんだ」
『ふーん、そうなんだ。知らなかったよ』
嘘だ、バイトなんかしてない。けど、彩乃は俺の嘘を真実と思い込んでいた。
俺は「はぁ……」と安堵のため息を吐く。
よかった、嘘がバレなかった……。
『ねぇバイトって何時からあるの?』
「え? あっ、その……午後からあるんだ」
『ふーん』
俺の言葉に彩乃は黙り込む。しばらくして彩乃は口を開いた。
『午後からバイトなんだよね?』
「ま、まぁな……」
『なら午前中だけアタシと遊ぼうよ』
「え? ご、午前中?」
『うん、いいでしょ?』
「……」
真奈美とは午後から遊ぶつもりだ。午前中だけなら彩乃と遊べる。
「分かったよ……午前中だけ遊ぶか」
『え!? いいの!?』
「う、うん、いいよ」
『ありがとうっ! 雄太! 大好きだよっ! 愛してるっ!』
「……俺も愛してるよ、彩乃」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます