第15話 別れてくれ
現在、俺は真奈美の部屋にいた。
チラッと横を見ると、私服姿の真奈美と目が合う。
彼女は俺を見て、目をトロンとさせる。
「雄太くん、今日もエッチぃことたくさんシよう……」
「ダメだ……」
俺がそう言うと、真奈美は小首を傾げる。
「なんでダメなの?」
「それは……」
真奈美の言葉に俺は返事を窮する。
俺は彩乃と約束した。そう、俺は大好きな彩乃と約束をしてしまったんだ。
真奈美と別れて、彩乃だけのモノになる。
これが約束の内容だ。
もしこの約束を破ったら、彩乃は健斗のモノになってしまう。
嫌だ、誰にも彩乃を渡したくない。
彩乃の心は俺のモノだ。あのエロい身体も俺のモノだ。
だから、
「真奈美……俺と別れてくれ」
俺がそう言うと、真奈美は「え……?」と声を漏らす。
涙目になっていた。
「……なんで私と別れたいの?」
「それは……」
「雄太くんはもう私のこと好きじゃないの?」
「そんなわけないだろっ! まだお前のこと好きだよ!」
「じゃあどうして私と別れたいの……? 何か理由があるんでしょ……?」
「……」
俺は真奈美に全てを話した。
俺の話を聞いたあと、真奈美は「はぁ……」とため息を吐く。
呆れている様子だった。
「私と別れないと、彩乃ちゃんは他の男のモノになってしまう。それが嫌だから私と別れたいんだよね?」
「ああ、そうだ……」
本当は真奈美と別れたくない。
だが真奈美と別れないと、彩乃は健斗のモノになってしまう。
それは困る……。
彩乃は俺だけのモノだ。
アイツを好きにしていいのは俺だけなんだ……。
「私を捨てて彩乃ちゃんを選ぶの?」
「ああ、彩乃を選ぶよっ……」
「ふーん、ならワタシ他の男のモノになるよ?」
「……ぇ……」
真奈美の言葉に俺は絶句する。
他の男のモノになるだと……?
おいおい、何言ってんだよっ。お前は俺だけのモノだろ……?
「他の男とたくさんキスするよ? ううん、キスだけじゃない。いっぱいイケないこしちゃうよ?」
「……」
「知らないおじさんとホテルの中でキスして、おっぱい触ってもらって、ベッドの上でエッチぃこといっぱいしようかな~。雄太くんはそれでいいの?」
「や、やめろっ……他の男のモノになるなぁっ」
「私が他の男のモノになるのは嫌?」
「嫌に決まってるだろっ……」
「なら、私と別れないでっ。ずっと私のそばにいて」
「……」
俺も真奈美と別れたくないよ。
けど真奈美と別れないと、彩乃は健斗のモノになる。
嫌だっ、健斗に彩乃を渡したくない。
真奈美と彩乃、俺はどっちを選べばいいんだ?
ダメだ、選べない。
2人とも大好きだから選べないよっ……。
ずっと悩んでいると、真奈美がギュッと俺を抱きしめてきた。
「ねぇ雄太くん。私と別れないと、彩乃ちゃんは他の男のモノになるんだよね?」
「ああ、そうだ」
「なら、彩乃ちゃんに隠れて私と付き合おうよ」
「彩乃に隠れて?」
「うん、隠れてたくさんイケないことしよ。それなら彩乃ちゃんは他の男のモノにならないよ?」
「……」
彩乃に隠れて真奈美と付き合う。
それなら彩乃は健斗のモノにならない。
いけるっ、これなら彩乃と真奈美を独占できる。
「分かったよ……彩乃に隠れて付き合おう」
俺はそう言って真奈美の唇を奪う。真奈美は俺の唇を受け入れてくれた。
何十秒もキスしていた俺たちは唇を離す。
「雄太くんっ、好き……愛してるよっ」
「俺もだよっ、真奈美」
◇◇◇
真奈美と5回もベッドの上でプロレスごっこをした。
全身に汗が浮かび上がって、ベッドのシーツはクチャクチャだ。
流石に疲れたなぁ。けど最高に気持ち良かった。
ボーっと天井を見ていると、裸の真奈美がギュッと抱きしめてきた。
「えへへ、雄太くん♪ 好きっ、大好きっ」
「俺も真奈美のこと大好きだよっ」
俺たちは唇を合わせる。
熱いキスを繰り広げていると、急にプルプルと呼び出し音が鳴る。
彩乃が電話してきたのだ。
俺たちはキスを中断してスマホに視線を向ける。
「出ていいよ」
「うん」
俺はスマホの画面をタップして電話に出た。
「もしもし、彩乃か?」
『うん、雄太の大好きな彩乃ちゃんだよっ♪』
スマホのスピーカーから彩乃の声が聞こえてきた。
「なんで電話してきたんだ?」
『アンタに訊きたいことがあるんだ』
「訊きたいこと? なんだよそれ?」
俺がそう言うと、彩乃は答えた。
『雄太、もう真奈美ちゃんと別れた?』
「それは……」
彩乃の問いに俺は黙り込む。
『もしあの約束破ったら、健斗くんのモノになるよ? 健斗くんとたくさんイケないことするよ? 雄太はそれでいいの?』
「や、やめろっ、健斗のモノになるなぁっ……」
『なら真奈美ちゃんと別れて。アタシだけのモノになって』
「っ……」
彩乃の言葉に俺はビクッと身体を震わせる。
今日、俺は真奈美と別れるつもりだった。
けど、できなかった。
それを知ったら、彩乃は俺と別れて健斗と付き合うだろう。
それは嫌なので、俺は嘘を吐いた。
「真奈美とは別れたよ」
『え? ほんと? あのクソ女と別れてくれた?』
「ああ、本当だ。ちゃんと別れたよ」
「ふふ、そっか、そっか、ちゃんとあのクソカスと別れてくれたんだね。ありがとう、雄太。愛してるよ」
「ああ、俺も愛してるよ、彩乃」
俺はそう言って電話を切った。
スマホのスピーカーから彩乃の声が聞こえなくなり、部屋全体が静寂に包まれる。
電話が終わったあと、真奈美が話しかけてきた。
「大好きな彩乃ちゃんに嘘ついちゃったね♪」
「そうだなぁ……」
「今の雄太くん、本当に最低だよ? 分かってる?」
そうだ、俺は最低な人間だ。そんなこと分かってるよっ。
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