第5話 恋人
真奈美と別れたあと、俺は自宅に戻ってきた。
玄関で靴を脱いで自室に移動する。
「あっ、雄太。おかえり」
「彩乃か……」
彩乃が俺のベッドに寝転んでスマホをイジッていた。
コイツ、なんで俺の部屋にいるんだ?
まぁなんでもいいか……。
俺は「はぁ……」と深いため息を吐く。
今日、俺は真奈美と別れた。
まだ真奈美のことは好きだけど、これ以上アイツと付き合うのは無理だ。
結婚するまでキスを我慢なんて俺にはできないっ。
つか、なんでキスしたらダメなんだよっ。
それぐらい別にいいじゃんっ……。
アイツ、本当に俺のこと好きなのか?
暗いオーラを解き放っている俺を見て、彩乃は小首を傾げる。
「真奈美ちゃんと何かあったの?」
「まぁな……」
「やっぱり、何かあったんだ。真奈美ちゃんと喧嘩でもしたの?」
「いや、喧嘩はしてないよ」
「なら真奈美ちゃんと何があったの?」
「今日、アイツと別れたんだ」
「ふーん、そうなんだ……ん? え? はあぁぁぁぁぁっ!?」
俺の言葉に彩乃は大声を上げる。
驚きすぎて口をポカンと開けていた。
「なんで別れたの……?」
「実は――」
俺はゆっくりと口を開いて、今日の出来事を彩乃に説明した。
真奈美に『結婚するまでキスはダメ』と言われたこと。
それにムカついて『別れてくれ』と告げたこと。
全てを彩乃に話す。
「そっか……本当に真奈美ちゃんと別れたんだね」
「あぁ……」
「なら、アタシと付き合わない?」
「え……? 彩乃と?」
「うんっ……アタシの彼氏になってよ」
「……」
「アタシ、雄太のためならなんでもするよ? またムラムラしたらアタシがお口でお手伝いしてあげる。あっ、アタシの身体を使ってもいいよ。なんでもしてあげるからアタシの彼氏になってよっ。アタシだけのモノになってよっ……」
彩乃の言葉に俺は黙り込む。
彩乃は可愛くて、スタイル良くて、喋りやすくて。
完璧な女の子だ。
しかも、俺のためにアレのお手伝いまでしてくれた。
この子と付き合ったら、もっと人生が楽しくなるかもしれない。
けど、俺は今も真奈美のことが好きだ。
はっきり言って、彩乃よりも真奈美の方が好きだ。
そう、俺の一番はまだ真奈美なんだっ。
そんな中途半端な状態で彩乃と付き合っていいのかな?
真奈美が好きなのに、彩乃の彼氏になるのは少しだけ抵抗感を覚える。
クソっ、俺はどうすればいいんだっ。
ずっと悩んでいると、彩乃が不安げな表情になる。
「やっぱり、アタシと付き合うのは嫌……?」
「そんなことは……ないよ」
「え……? ほんと?」
「ああ……」
俺がそう言うと、彩乃はキラキラと目を輝かせる。
喜んでいる彼女を見ていると、自然と頬が緩む。
最近の彩乃は本当に可愛いなぁ……。
「本当にアタシの恋人になってくれるの?」
「ああ……。けど、本当に俺でいいのか? 彩乃なら俺よりかっこいい男と付き合えると思うぞ?」
「雄太よりかっこいい男なんていないよ……」
「っ……そっか」
「うんっ……」
俺も彩乃も喋らなくなり、部屋全体が静寂に包まれる。
気まずいなぁ……。
この気まずい空気の中、彩乃は口を開いた。
「ねぇ……」
「な、なんだ?」
「もうアタシたちって恋人なんだよね?」
「ああ、そうだ……もう俺たちは恋人だ」
「じゃあさ、キスしてもいい?」
「え? キス……?」
「うん、ダメかな……?」
「ううん、ダメじゃないよ。キスするか」
「うんっ」
彩乃はベッドから立ち上がって、俺に近づいてくる。
こちらにやってきた彩乃は背伸びして俺の唇を奪ってきた。それと同時に柔らかい唇の感触を感じる。
相変わらず、彩乃の唇は柔らかいなぁ……。
舌を差し入れると、彩乃は驚愕に染まった表情になる。
驚いているようだ。
けど、忌避感を抱いているようには見えない。
何回も俺たちは熱いキスを繰り返す。
しばらくして俺たちは唇を離した。
彩乃の顔は蕩けており、目の奥にハートマークが浮かんでいる。
完全に発情しているなぁ……。
「雄太……最後までしようっ」
「え……? 最後まで……?」
「うんっ、もう我慢できないよっ。雄太と一つになりたいっ」
「本当にいいのか? 初めては痛いって聞くぞ?」
「うん、いいよっ。アタシのことたくさん傷つけて……アタシを雄太の女の子にしてっ……」
「彩乃っ……」
彩乃の甘い言葉に脳が蕩ける。もうダメだっ、我慢できないっ。
我慢できなくなった俺は彩乃を押し倒す。
俺の大胆な行動に彩乃は驚く。
けどすぐに彩乃は両手を広げて優しい笑みを浮かべる。
「雄太、きて……」
「あぁ……」
◇◇◇
「雄太……気持ち良かった?」
「ああ、凄く気持ち良かったよ。ありがとうな、彩乃」
俺はそう言って彩乃の頭を撫でる。すると彼女は子猫のように目を細める。
嬉しそうだった。
今日、俺たちは最後までした。
俺は初めてだったから最初から最後まで緊張したよ。
彩乃も初めてだった。
その証拠にベッドのシーツに赤い血が付着していた。
この血を見ていると、『俺たち、本当に恋人になったんだなぁ』と実感が湧く。
けど、本当にこれで良かったのかな……。
「なぁ彩乃」
「ん? なに……?」
「どうしてヤらせてくれたんだ……?」
「それはその……雄太のことが好きだから」
「……」
「大好きな人にたくさん求められたかったの……。だからアンタに体を許したんだよ」
「そっか……」
「うんっ」
彩乃は本当に俺のことが好きなんだろうな。
俺はどうなんだろう?
彩乃のこと好きなのかな?
たぶん、俺も彩乃のことが大好きだ。
彼女と一緒にいると凄く安心感を感じるし、心と身体が幸せに包まれる。
けど、俺は真奈美のことも好きだ。
真奈美と一緒にいるとドキドキする。
真奈美の顔を見ていると、頭の中が真っ白になってわけが分からなくなる。
真奈美と彩乃、俺はどっちのことが好きなんだろう……。
ダメだ。わからない、何分考えても答えは見つからない。
もういいや……考えるのはやめよう。
「ねぇ雄太」
「ん? なんだ?」
「その……もう一回シない?」
「え? もう一回……?」
「うん……ダメかな?」
「そんなに俺としたいの?」
「うん、したいっ、大好きな人とたくさんしたいよ……」
「……エッチだな、彩乃は」
「うぅぅっ……」
俺の言葉に彩乃の顔は湯気が出るほど真っ赤になる。
彩乃が上目遣いで見つめてくる。
「エッチな子は嫌い?」
「ううん、嫌いじゃないよ。むしろ、大好きだっ」
「アタシも雄太のこと大好きだよ、愛してるっ」
再び俺たちはベッドの上でたくさん愛し合った。
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