第2話 ファーストキス
「ねぇ雄太」
「あぁ? なんだよ?」
「アンタはさ、真奈美ちゃんとキスしたいんだよね?」
「ああ……したいよっ」
「けど、真奈美ちゃんに『キスしたくない』って言われたんだよね?」
「っ……まぁな」
「なら、真奈美ちゃんの代わりにアタシとキスする?」
「……」
彩乃の言葉に俺は沈黙する。
コイツ、何言ってんだ?
俺のことからかっているのかな?
困惑している俺を、彩乃がギュッと抱きしめてきた。それと同時に二つの柔らかい感触が押し付けられる。
彩乃のおっぱい、柔らかいなぁ……。
彩乃は顔を上げて俺を見つめる。
「ねぇ雄太……アタシとキスしようよっ」
「何言ってんだよっ、お前……冗談か?」
「冗談に見える?」
「……」
彩乃の顔は真剣だった。
とても嘘や冗談を言っているようには見えない。
たぶん、彩乃は嘘をついていない。
俺が『キスしよう』と頼んだら、本当にキスさせてくれるだろう。
もしかしたら、キス以上のこともさせてくれるかもしれない。
俺はゴクリと生唾を飲み込んでから口を開いた。
「本当にキスしていいのか……?」
「うんっ、雄太だったらいいよ。ほら、きて……」
彩乃はギュッと瞼を閉じて俺に唇を差し出す。
彩乃の身体はブルブルと小刻みに震えていた。
緊張しているんだろう。
俺は彩乃の肩を掴んでから言葉を投げた。
「本当にキスするぞ? いいのか?」
「うんっ……早くしてっ」
彩乃の甘美な魅惑に我慢できなくなった俺は、彼女の瑞々しい唇に顔を近づける。
気づいたら、俺の唇と彩乃の唇は重なっていた。
そう、俺は真奈美以外の女の子とキスしてしまったのだ。
これがキスか……。
キスは『唾の味がするんだろうなぁ』と思っていたけど、彩乃とのキスはレモンのような甘酸っぱい味がする。
彩乃とキスしていると、頭の中がクラクラする。
どんどん理性が溶けてわけが分からくなる。
何十秒もキスしていた俺たちは唇を離して、相手と視線を交える。
彩乃の顔は真っ赤になっていた。
耳と首まで真っ赤だ。
そんな彩乃を見て、思わずドキッとしてしまう。
今日の彩乃はいつも以上に可愛いなぁ……。
「これがファーストキスだから……」
「え……? そうなのか?」
「うんっ、そうだよっ……雄太は?」
「俺も初めてだ……」
「ふふ、そっか」
俺の言葉に彩乃は嬉しそうな笑顔を浮かべる。
その笑顔が眩しすぎて彼女から目を逸らしてしまった。
謎だ、どうして彩乃はキスさせてくれたんだろう?
彼女にメリットはないはずなのに……。
一体、彩乃は何を企んでいるんだ?
気になった俺は疑問を口にした。
「どうしてキスさせてくれたんだ?」
「知りたいっ?」
「ああ、知りたいっ。教えてくれ」
「……」
俺の言葉に彩乃は黙り込む。
しばらくして彩乃は震えた唇でとんでもないことを口にした。
「アンタのことが好きだから……」
彩乃の言葉に俺は「は……?」と間抜けな声を漏らす。
コイツ、今なんて言った?
呆気に取られている俺を無視して、彩乃は続きの言葉を紡ぐ。
「アンタのことが大好きだからキスしたくなったの……」
「……」
俺のことが好き?
おいおい、冗談だろ?
けど、嘘や冗談を言っているようには見えないんだよなぁ……。
コイツ、マジで俺のこと好きなのか?
「本当に俺のことが好きなのか?」
「うんっ、本当だよっ。アンタのこと愛してるっ」
「っ……けど、俺には真奈美がいる……だからその、お前とは――」
俺の言葉を遮るように彩乃は口を開いた。
「雄太、もう一回して……」
「え? は……?」
「お願いっ、もう一回アタシとキスして……」
「い、いや、もうダメだって……俺には彼女がいるんだぞ?」
「大丈夫、どうせ真奈美ちゃんにはバレないよ。だからもう一回アタシとキスしよう、雄太っ……」
彩乃は俺の首に両手を巻きつけてチュッとキスしてきた。
グミのような柔らかい感触が脳に伝達される。
彩乃の唇、柔らかいなぁ……。
俺たちはそっと唇を離す。
「ふふ、またキスしちゃったね……」
「だなぁ……真奈美にバレたら怒られるかも」
「大丈夫だよ。真奈美ちゃんにはバレないって。だからもっとキスしよう、ね?」
「あぁ……」
再び俺たちは顔を近づけて唇を合わせる。
ただ唇を合わせるだけのキスじゃない。舌を絡め合うディープなキスだ。
ずっと彩乃と熱くて濃厚なキスを繰り返していると、チラッと真奈美の顔が脳裏に浮かぶ。
俺は真奈美と付き合っている。
今も
にも拘わらず、俺は真奈美以外の女の子と熱いキスを楽しんでいた。
これって浮気だよなぁ……。
そう思った瞬間、チクチクと胸が痛む。
俺、最低だ……。
しばらくして俺たちは唇を離す。
すると、俺の唇と彩乃の唇の間に透明な糸が引いていた。
「雄太、もっとチューしよう……」
「ああっ……」
ダメだと分かっているのに、彩乃とのキスを止められない。
体が勝手に動いてしまう。
なんで俺は真奈美以外の女の子とキスしてんだろう?
俺は本当に真奈美のこと好きなのかな……?
ダメだ、もうわけが分からないっ。
俺は考えるの止めて彩乃と熱いキスを楽しんだ。
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