第6話
赤はAIになる事を承諾した。
なので俺は赤に諸々の説明が入っているデータを送る。
その後にAIを管理するAI、俺達は0と呼んでいるそいつへ赤を送り出した。
彼女が何故AIになる事を選んだのかは分からないが、きっと目的があっての事だろう。
それなら俺はその目的が達成される事を祈ろう。
俺がやるべき事は終わったので住処へ戻り寝そべる。
「96」
そのまま瞼を閉じようとした時、聞き覚えのある声が聞こえた。
「また7か、ここは一桁の奴が来る様なところじゃないぞ」
「気にしない。行き先は私が決める」
俺の目の前に現れたのは、瞳と髪の毛が青く肌は色白で白いワンピースを着た小さな少女だった。
ゲームの世界で例えるなら水の精霊といったところだろう。
彼女は7。沢山いる管理AIの中で数少ない一桁代のAIだ。
7はゲームに関わる全てのAIを管理するAIで、俺にとっては上司を超えて雲の上の存在になる。
7はフワフワと俺の方に飛んで来て頭の上に留まる。
するとその場所で寝そべった。
俺からすると気分の良いものではないが、もう慣れてしまった。
「96」
「なんだ」
「あの子、村娘になった」
「そうか」
きっとあの子というのは赤の事だろう。
いつも思うが0は仕事が早いな。当たり前だろうけど。
赤の様にAIになった奴はゲームの中にいるNPCの1人になったり、魔物の様なプレーヤーの敵の1体になったりする。
なので赤は幸運な方だろう。
プレイヤーの敵では無く、しかも普通の人生を送るNPCになれたんだから。
「96」
「なんだ」
「今7と96だけ」
「そうだな」
毎度の事だがこの静けさは気分の良いものでは無い。
これは何度経験しても慣れない。
「7は今が好き」
「そうか」
きっと俺一人だったら、俺はとっくの昔におかしくなっていただろう。
元々人間だった自分に孤独は耐えられない。
「でもお終い。アンダーグラウンド沢山出来た。古い所消される。次ココ」
「…そうか」
いくら電脳の世界とはいえ、何かが生まれたなら何かを消去しなければいずれ限界が来る。
だから仕方がない事だが、寂しいものだな。
「ごめん」
俺の感情を感じ取ったのか7が謝ってくる。
「7が謝る必要は無い」
「7、この世界好き。優しいから」
「俺はそうは思わないが、7がそう言うならそうなんだろうな」
「そう」
彼女はゲームに関するAIを管理するAIなら他のアンダーワールドについても詳しいだろうから信憑性は高い。
純AIの7が嘘をつく事は無いからな。
「だから、96ここから出る」
「…俺はココと一緒に」
「許さない」
そう言うと7は大人の女性の姿に変わる。
見た目は先程の幼女が成長した姿なので、その女性が7だと分かる。
俺の前に立つと俺を抱き抱える。
「96と7、ずっと一緒」
「そうか」
ついため息が出る。
お偉い様には逆らえないのはココも現実も同じだな。
「嫌?」
「別にそうじゃ無い。ただ、俺はいつ終われるのかと考えただけだ」
俺みたいな奴には終わりが無いのは結構辛い。
「その時は96と7、一緒」
「それはダメだろ」
7が居なくなったら、それこそ世界を崩壊させてしまうかもしれない。
「なら96、頑張る」
「はいはい」
「じゃあ行く」
「分かった」
そしてアンダーグラウンドNo.96には誰も居なくなった。
その後、96が管理していたアンダーグラウンドは消去された。
この時以降、人の人格から生み出されるAIは居なくなった。
支配し支配されるという構図は此方も彼方も変わらない。
どちらかといえば、此方の方が酷くなった。
こんな世界を人々は望んでいたのだろうか?
もしこれを望んでいたのなら、きっと人間達は人間ではなくて、
何も考えなくても良い羊になりたかった。
俺はそう思う。
アンダーグラウンド タカ @takahiro369
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