第2話

まず俺達は、食糧に困っているプレイヤーの為に食料を確保する事にした。

恩を売っておけば協力してくれるようなると考えたからだ。



「黒って意外と動けたのね」


「毎日狩りをしていればこれぐらい普通だ」


「そうかしら?」

赤と一緒に森の中を進むと暫くして敵の魔物と戦闘になる。


その魔物はゴブリン。

人間の子供くらいの大きさで肌の色が緑色をしている魔物だ。

ゴブリンは棍棒やボロボロの剣などで襲い掛かってくる。



そんなゴブリン達だが、今は息絶えた状態で地面に転がっている。


この惨状は、俺が気配を消してゴブリンに奇襲を掛け、残ったゴブリンを赤が火の玉を飛ばして倒す。

この戦いが上手くいったから出来上がったという訳だ。



「それにしてもこの森はゴブリンが多いわね。ゴブリンしか居ないんじゃないの?」


「実際そうだぞ」


「え?」


「気配を消して森を偵察したらゴブリンしか居なかったからな」

俺の1日はゴブリンを狩って寝るだけで暇を持て余していたので、暇潰しに森を偵察していた。



「なんでそんな重要な情報を誰にも言わなかったのよ!」


「誰にも聞かれなかったしな」


「聞かれなかったからって、情報を共有するくらいは出来たでしょ」


「集会の様なものが無いのにどうしろと?」

一人一人に情報共有するのは、自分の手柄を自慢している様でやりたいとは思わなかった。



「それは…そうだけど」


「まぁ、集会があったとしても俺は参加してないだろうがな」


「はぁ…あなたって捻れてるわね」


「俺からしたら他人を助けようとする赤の方が捻れてると思うけどな」


「捻れている黒から見たらそうかもね。後で貴方の知っている事を吐きなさいよ」

それから俺達は倒したゴブリンの死体を広場へ持ち帰り、食料で困っている魔物達に渡した。





俺の知っていることはあまり多くない。

俺が見たかぎりゴブリン以外の敵は居ない事。

ゴブリンの中には体が大きい奴、魔法を使う奴、弓矢を使う奴などがいる事。

広場から俺の棲家の方向に向かって進み続けると出口かもしれない白い扉がある事。

その扉の前にはとても大きなゴブリンがいた事。

これらを赤に話した。




「なんでそんな大事な情報を誰にも言わなかったのよ!」


「だから、誰にも聞かれなかったからな」


「あんたって人は…まぁいいわ。これだけの情報があれば皆んな動いてくれるかもしれない!ちょっと話してくる!」

そう言って広場に向かう赤の足取りは軽かった。


俺には何故、赤がそこまでして彼らを助けようするのか分からない。

正義心?トラウマ?それともそれ以外だろうか。

まぁ今の状況が変わるならどうでも良いか。







暫くその場で待っていると赤が戻ってきた。その足取りはとても重い。


「うまくいかなかったようだな」


「どうしてなの…出口が分かったのに動こうとしないなんて」


「人間に期待するだけ無駄だぞ」


「でも」


「それでも彼らを助けたいなら期待はせずに行動し続けた方が良い」


「期待はしない…」


「ああ、期待していたら赤が傷付くだけだ。それなら期待せず自分にできる事をやっていれば時期に彼らも着いてくるだろう」


「…」

期待するなと言われて、それが出来る人は少ない。

それが出来たら苦労はない。



「別に諦めても良いんだぞ?」


「…諦めないわ。だって諦めたら私じゃないもの」


「そうか」


「でも黒って意外と良い人なのね」


「良い人ではないな」


「はいはい、それじゃあ今日はここまでにしましょう」

彼女はどこまで諦めずにいれるだろうか。

個人的には諦めず頑張って欲しい所だ。

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