第18話 化鳥
翼を完全に広げたら、二
鋭い
いや、そんなことより何より。
翼や背中は
鳥と思ったが――本当に鳥なのか?
化鳥は、
それは一瞬のことで、まばたきする間もなく、化鳥は上空へ飛翔した。
その嘴には、
俺は我が目を疑った。
俺が釣り竿をしっかり握ったままでいるのは、奇跡なのか。それとも、取り落とすほどの余裕すらなかったと見るべきなのか。
何もかもがほんの
きっと見間違いだ――自分でも、そう思わずにいられなかった。
俺はぐるりと、辺りを見回した。
化鳥が来る前と何ら変わらない風景が広がっているばかりだ。本当に、何もなかったかのように。
俺は釣りに意識を戻した。
何が出来るでもない。真相など、調べようもない。
今できるのは――釣りしかなかった。
もしかすると、精神的な疲れとかが、あんなものを見せたのかもしれない。確かに化鳥がいたと断言できるだけの自信は、持てなかった。
それに、少年は俺よりずっと長くここにいる。化鳥が本当にいるのなら、彼が何も言わず、平然とここに住んでいるのはおかしいだろう。
仮にあれが現実だとしても、俺自身が襲われたわけでもない。鳥が獲物を捕っていただけだ。人を食うような奴なら、狐なんかではなく、俺を狙ったはず。
俺ももっと大物の魚を釣り上げて、小屋に戻らないと。少年のためにも――そこまで考えて、はっとした。
少年に、伝えるべきだろうか。俺が見た一部始終を。
しばし考え――やめておこう、という結論しか出てこなかった。
はたしてこんなこと、信じてもらえるかどうか。俺ですら、信じかねているのに。この人は暑さのせいで幻が見えるようになったのだ、などとは思われたくない。
もし信じてもらえたら、それはそれで――
気をつけろと注意を促したところで、気をつけようがないだろう。あんな、
それに、今朝のあの少年を思い返すと――やめておいたほうがいい、少なくとも今は。そう考えざるを得なかった。
もう少し様子を見て、本当に化鳥がいるのを確認したら、その時こそ伝えよう。対処法など、何もなくても。
俺は昼近くまで釣りを続けた。
その結果、
「よし」
俺は立ち上がり、来た時よりずっと重くなった魚籠を手に、小屋へ戻った。
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