第8話 謀反、出陣、そして……
「俺の名は、
炉の五徳には、
少年によると、薬を
物事を人へ説明するのはあまり
いささか不安を覚えつつも、俺はじっと耳を傾けている少年を正面から見ながら、ここに
新柄家の家臣だった
そして
沖沼は、元々は麻岐の
国衆は、古くからずっと麻岐の各地で勢力を張っていた有力者。向こうから見れば、新柄家やその
実際、
それでも今は、沖沼も含めてみんな新柄家の家臣となり、忠実に働いていた……と思っていたんだが。
何か不満や
新柄家は嫡男だった新三郎様が跡を継ぎ、沖沼
敵は三百にも満たない
いや。実のところ、俺はそう思ってなかった。何か、嫌な胸騒ぎがしていたんだ。
その予感は当たった。笹羅山で砦に攻め込もうとしていた俺たちの背後から、別の
沖沼の手の者ではない。沖沼以外の国衆の軍勢だ。中には、西の隣国である
新柄軍は、総崩れした。
新柄軍の兵は次々に倒れていくし、脱走する者も
このまま戦っていても勝ち目はない、いったん退いて体勢を立て直そうという決断が下され、槻伏まで退却することになった。
総大将がどこにいるかを分かりにくくするために、三手に分かれて退却した。
俺は新三郎様の隊に加わるように言われたんだが――退却の途中で、
一通り語り終えると、
「俺は、いわゆる『落ち武者』だ」
と、やや
薬鑵の口から、細く湯気が立ちのぼり始めた。それとともに、薬特有の苦そうなにおいも漂い、鼻先をかすめていく。
いつの間にか、日差しの色や小屋に差し込む角度が少し変化している。それは日暮れの近さを思わせた。
真昼に比べて熱気の
俺はまっすぐに少年を
「俺がここにいては、そなたにまで危害が及びかねん。俺を
と断って、疲労や痛みでだるい体を、そろりと立ち上がらせた。
黙ってこっそり立ち去る、ということも考えた。
だがそうしたら、少年が俺を探し回りかねない。それを別にしても、この周辺に追っ手や落ち武者狩りがいるかもしれないと教えて、警戒を
それゆえ、こうして事情を話したのだ――。
少年はかすかに表情を
「お待ちください。そのお怪我で山歩きは、危険過ぎます」
「そんなことは言ってられん。そなたを危険な目に
「あなたを狙っている者ではなく、お味方があなたを探しに来る可能性もあるのではありませんか? むやみに動き回るより、ここにおられたほうがお味方も見つけやすいはずです」
「味方」という言葉に、俺はどきりとし、動きを止めた。
「『味方』は、いない」
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