第3話 少年
こちらに背を向けて、人が立っている。
俺は必死に、爺様に追いつこうとした。それなのに、爺様は振り向きもせず、どこかへ行ってしまう。
手を伸ばし、遠ざかる背中に懸命に追いすがっても、一向に追いつけない。
「待ってください! 爺様」
と言っているつもりなのに、まったく声が出ない。
そのうち俺は、何だか変だな、と気づいた。
爺様は、もうこの世にはいないはずだ。
その途端、世界がぐるりと反転した。
すべてが
代わりに、俺を呼ぶ声がする――ああ、あれは父上だ。
「何をしている、
父上、俺の話も聞いてください。これには事情が――と言いたいのに、声にならない。
世界はますます
かたん、と何かを置くような音が聞こえる。
ゆっくりと目を開けると、見慣れない光景が目に飛び込んできた。
建物の中のようだが、天井すら無く、屋根裏が見える造りになっている。
ここと似たような所を、どこかで見たような――と考えていると。
「目を覚まされましたか?」
という、若い男の声が聞こえた。
声がしたほうに顔を向けると、人がこちらに近づいてくるところだった。
髪は
だが、そんなことより何より――。
「……天人?」
そう思ってしまうぐらい、整った美しい顔立ちの少年だった。
目鼻も口元も絶妙な形と
これほど
ただ、美しいのは美しいが――その
冷淡というより、
少年は俺のかたわらに静かに座り、
「お加減はいかがですか?」
と、たずねてきた。
俺ははっとした。自分がずっと寝たままなのに気づいたのだ。
起きないと――と思ったのだが。
「!」
上半身を起こそうとしたら、左肩に激痛が走った。
どうにか
「横になったままで構いません。ご無理をなさらずに」
と
少年は俺の様子をざっと見て、
「簡単な手当てはしておきましたが、
と、感情を
自分の左肩に目をやると、布が
いったい、何がどうなっているんだろう。
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