第3話 賢者の意味
わたしはサーレットさんと一緒に木炭の窯に行く事にした。窯の場所を案内する為だ。
木炭の窯に着くとススだらけの人々の活気に満ちていた。
「よう、アリータちゃん、話は聞いている、あんちゃんには焼いたした木炭の得意先への運搬を頼むか」
「よろしく」
ぼそりとサーレットは挨拶する。賢者さんには肉体労働は不釣り合いだが人手不足の現場が一番稼げるのだ。
仕事は木炭の山を馬車の荷台にスコップで麻袋につめる。その後は馬車で運ぶ。納品の時は木炭のつまった麻袋を手で下す。
この繰り返し。
わたしから見ても、かなりの肉体労働だ。太陽が傾き夕方になると仕事は終わり、日雇いの給料をもらうと。わたしの家の三階の小部屋に戻るのであった。
***
サーレットさんと出会って、数日が過ぎていた。わたしはバザーに行きチョコレートを買う。サーレットさんにプレゼントする為だ。
北の地方では愛の象徴としてプレゼントされるらしい。しかし、肉体労働の解消に効くと聞いてのプレゼントだ。決して愛の象徴ではない。と……自分に言い聞かせるが、サーレットさんの事を想うと顔がほてる。
そして夕刻になると仕事からサーレットさんが帰ってくる。
「あぁのー、少し時間いいですか?」
「はい、大丈夫です」
疲れた表情であるが目が輝いていた。流石、国家公認賢者である。そんな眼差しに心が弾む。
「疲労回復の為に買いました、よかったら食べて下さい」
わたしがチョコレートを手渡すと、サーレットさんの背筋がピーンと伸びる。やはり、愛の象徴であることを知っている。
「ありがとう、お礼に、少し、中庭に出ないか?」
「はい……?」
なんであろう?わたし達は暗くなった中庭に行く。
「これだけの広さがあれば大丈夫だ」
そう言うと右手を空に向けて上げる。
『炎よ、集まれ』
すると、サーレットさんの右手に炎が現れる。そして、火球は空に向かって飛び放つ。上空で火球が爆発して花火になる。次々と火球が飛び花火として散っていく。
「綺麗……」
「喜んでくれて、ありがとう。賢者と言っても3級だ、これが精一杯だ」
確かに賢者さまはどんな奇跡も起こせると言われている。ゆえに国家が公認を出して、その力を管理している。簡単に言えば賢者さまは国の財産であり、国家の所有物扱なのである。
「サーレットさんにはハーモニカがあります。どんな魔法より心にのこります」
「ふ、賢者の力よりハーモニカか……」
「あ、ごめんなさい」
「大丈夫、本当のことだ。なら、一曲」
サーレットさんはハーモニカを取り出して奏で始める。
『♪~~』
心が落ち着く、これが幸せってこと?わたしがほわほわした気分でいると、自然とサーレットさんの腕にわたしの肩を当てる。一瞬、ハーモニカの音が止むが何事も無かった様にまた流れ出す。
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