第2話 お姫様抱っこ!?

「あ!もう、帰らないと」


 立ち上がるとやはりフラフラする。あー活動限界が近い早く帰らないと倒れてしまう。


「仕方がない、家まで送ろう」


 そんな様子を見たサーレットさんはわたしに優しく声をかける。

どうしよう、かなりの迷惑をかけることになる。すると、サーレットさんはわたしの手を握る。


 かーーー


 今度は顔まで真っ赤になる。


「お、お願いします」


 わたしの心に迷いが消えて、素直になることにした。時計台から下に降りると丘の上にある我が家を指さす。


「ホントだ、鍛冶屋に違いない」


 ぽそりと呟くと、サーレットさんはわたしを抱き上げる。


 いわゆる、お姫様抱っこだ。


「はわわわ、わたしどうなっちゃうの?」

「安心していい、国家公認賢者の資格を取る為には体力も必要だ」


 そういう心配ではない。勿論、目立ちに目立って、すれ違う人に二度見されるのであった。家の近所までくるとわたしは、お姫様抱っこから降りる。


 流石に不味いのであった。でも、ずっと抱いてもらいたい気分は抜けず、少し寂しいのであった。


「ただいま、お客さんを連れてきたよ」


 わたしが自宅のドアを開けると仕事が終わったのか、父親が作業室からあがってくる。


「おう、帰ったか、それでお客さんは?」

「こちらは、国家公認3級賢者さんだよ」


 サーレットさんは父親のバカでかい体をみてすごすごとしている。


「国家公認賢者のサーキレットです」


 もう、ガッチガッチじゃんと心の中で思うと。


 「よく言えた、俺を見て視線を逸らさないのは、流石、国家公認賢者様だ」

「それでね、お父さん、早速ですがこの砂金の粒いくらになる?」


 わたしは砂金の粒を取り出して父親に渡す。すると、父親はルーペで品定めを始める。


「銀貨2枚だな」

「やっぱりそう、はい、銀貨2枚」

「これは、さっきのパン代だけど、わたしもパンは食べたから、おまけしちゃう」

「ありがとう、助かる。実は旅の旅費が足りなくなって」

「なら、丁度いい、木炭の製造現場に人手が足りなくて、困っていたところさ、それに宿はこの家の三階の小部屋を使うかい?」


 サーレットさんは少し困った様子でいる。当たり前だ、宿と仕事の両方を手に入れたからだ。


「すまない、心から感謝する」

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