キスの甘さ。

霜花 桔梗

第1話 旅の賢者との出会い

 今、わたしは、街のバザーに来ていた。今日は体調が良く両親の許可が降りたのだ。


 うん?何やらパン屋で揉めている。


「あんちゃん、この店の支払いは国家承認の通貨だけだ」

「そこを頼む、この砂金の粒でお願いする」

「ダメだ、銅貨3枚だ」


 遠巻きに見ていたが、あの砂金の粒は銀貨2枚にはなる。うちの家業は鍛冶屋だ、砂金の粒でもお金に変えられる。


「そこのお二人さん、わたしが仲介しましょう」

「お嬢さんが支払うのか?ま、良いだろう」

「助かったよ、お嬢さん」

「わたしの名前はアリータ、自由な踊り子をしているわ」

「僕は国家公認賢者3級のサーレトだ」

「すごい、賢者さんなの?」

「あぁ、でも見習いだ」


 賢者は『火、風、土、水、光、闇』のエレメントを全て使うことができる、この普通の魔法使いは一つのエレメントしか使えない、ゆえに誰からも尊敬の眼差しで見られる、存在なのである。


「なら、わたしの踊りをみて、この街のシンボルの時計台から建物の屋上に行けるの」


 わたし達は時計台の階段を上り始める。四階ほどの高さに登るとドアを開く。そこから、建物の屋上に着く。そこでわたしは踊りを始める。


『♪~~♪……』


 サーレットはハーモニカを取り出して。わたしの踊りに合わせて奏で始める。


 『♪~~』


 こんな快感は初めて、わたしの踊りに命を吹き込まれた感じだ。そして、踊り終わるとサーレットさんが拍手をしてくれる。大切な人からの拍手はどんなかっさいより気持ちいいモノであった。


 おっと、体がふらつく、わたしは重い病で普段は寝た切りなのだ。


「アリータ、大丈夫か?」

「はい、少し疲れただけです」

「なら、このパンを一緒に食べよう」


 サーレットは先ほど買ったパンを取り出す。


「はむはむ……」


 美味しい、わたし達はパンを食べ終わると静かな時間が流れる。何だろう、この気持ちは胸がドキドキして落ち着かない。


 わたしの手がサーレットさんの手と触れ合う。


「かー、ごめんなさい、ごめんなさい、手が触れ合ってしまいました」

「僕も不思議な気分だ、もう一度、ハーモニカを吹いていいかい?」

「勿論です」


 サーレットさんはハーモニカを取り出して、また、奏で始める。


『♪~♪』


 そのメロディーは心に残るモノであった。そして、わたしの心臓がドクドクと高鳴る。


 これが恋なの?


 誰もいない屋上の上で二人きりの時間が過ぎていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る