第7話 寒椿
山積みなんは分かるんやけど、こんなにも山積みやとどこから手を着ければええのか分からなくなってくる。
でも葉月くんの場合は、実の父親にあんな事されて「人間不信気味」にさせてしまったから。
なずなちゃんだって、現に幼児退行してしまったのは事実だし
またいずれ幼児退行になってしまったらどうしようかと考えたら葉月くんも気が気じゃないんだろう。
「すいません。話せるのは、ここまでなんです。」
「辛いんなら、仕方無いやろ?無理に話さない方が、良いって事もあるんやで?」
まあ、
本当は受け売りやなくて、自分の言葉で話せば何とかなるんやけどね。
だけどすぐには、見つけられへんもんやなぁって。
自覚はしているし、そこまで頭が良い訳でもないから。
でもさ、場違いなところは無いしそこまでバカじゃない。
「わては、悠斗みたいに専門家やないし医者でもないけどこれだけは言える。大事なものや人を守りたい、例え逆になってしまう結果になったとしても自分のやりたい事は間違っていないって。」
それは否定するもんでも無いし、葉月くんにしてもなずなちゃんだって同じ事。
「ましてはそれが、加害者が居るなかでもっとも否定しないでこれでも良いわって思うてくれればこれはこれで楽なんかなぁって。」
昔やったら、否定するもんは片っ端からぶん殴っていたし悪い事もそれなりにやってたけど「半」極道になった今じゃ周りとか一般の人達を守る事しかなくて当然って一致してるんやろうなぁ~。
「加害者って言い方、きつかったかな?キツかったら、ホンマにごめん。」
事実とはいえ、葉月くんやなずなちゃんにしたら父親だしたった一人の肉親なんやから。
「大丈夫です。ただ姉貴は、責任感が強すぎるんで何でも自分で抱え込んでしまうんです。『自分が悪い』とか『守りたいものも守れない』とか思っている事が多くなって、何でも背負い込んでしまって・・・。」
少しでも葉月くんには、自分の弟には負担をかけてほしくないとなずなちゃん自身も思うたんやと思う。
当然姉弟やから、当たり前やって思うんやろうけど気持ちもわかるんよね。
赤の他人であるわてだって、葉月くん達も
「でしゃばり」やって言われとってもええ、「エゴ」やって言われとったってええ。
守りたいものも守れないのは、一番最低やしそんなん黙って放置しろって言ってるもんやないか。
そんなん一番、嫌や。
悲しいのはもう、見てられへん。
「龍さん?」
決めた、いじいじしとっても何にもならへん。
「もう、このまま考え込んだって埒があかん。家主特権で、葉月くんなずなちゃん今日からここが二人の家やっ!父親には会わせへんっ!このまま返したら、まだ酷い事されんで!」
「龍聖さん・・・本当に、それで良いんですね?」
はなから、覚悟はしてた。
後悔?・・・そんなん、最初からしてたら何にもならへんやん。
物として扱われるんやったら、ここにいた方がまだええ。
「酷い事したんは、あっちやさかい。今更言い訳しとっても、遅いんやっ❗」
女将さんは、わて・・・いや俺に『人には優しく、困ってる人には手を差し伸べて』と教えてくれた。
それは例え、極道から足を洗った人間に対してもそうやと。
極道同士の抗争で、巻き込まれそうになった一般の人達をまもるのも極道の教えだとおやっさんも教えてくれた。
-----今は、わてが救う番や。------
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