第2章 第8話 枯野

葉月くんとなずなちゃんの引越を終わらせ、また新たな生活になってきた。

最初の頃は、わてらに対しても近所の人にもなずなちゃんはビクビクしていたし葉月くん自身も周りの目が気になってそっけない態度やったけど段々と慣れてきたのか挨拶ぐらいは出来るようになってきた。

まあ、あの直後に「大学から近いし蒼空っちが遅刻しないように」と春華が引っ越してきた時は正直あきれたけど仕方無いやって思うた。

正直、シェアハウスがある場所から大学までは地下通路(ホコテン)で繋がってるから遅刻なんて無いはずやのに。

おっくうやったんやな。まあ、ええわ。

歳の事であーだこうだ言ってられへんし、返ってわてがへこむ。

散々、なずなちゃんに「40後半」って言われたんやから。

まあ歳を言ってないわてが悪いんやし、年下やからってキレるのも場違い待ったなしやからな。

悠斗の説教なんて聞きたくないからさ。

「これで全部です。でも本当に僕と姉貴が、そっちに行っても良いんですか?」

「かまへんよ。避難先なんてなかったら、間違いなく今以上に大変やったし。」

トラックから荷物を出しながら、割れ物が入った段ボールを一つずつ持った。

葉月くんの父親は酷い人だって印象はあるけど、小さい時に亡くなった母親の印象って無いんやろうなぁ?

まあ、当たり前なんやけどさ。

わてやってほんまの両親の顔なんて、忘れてしもうたから。

「それにさ・・・にぎやかの方が、ポツンっているよりまだええし寂しさなんてすぐに嘘みたいに飛んでくんやから。」

現にわてがそうやったし、おやっさんに拾われていなかったら自暴自棄になり果ててしもうたから。

あかんなぁ・・・葉月くんみてると、昔のぼんを思い出してまう。

あれ以降、収まっては来ているんやけどぼんのトラウマは酷くて暴れ倒して自分や周りの人達が傷つけられるんやないかって悠斗と話してた。

悠斗自身は『そんな事はさせない』って言ってくれたし、正直安心はしたんやけど。

でもいつまた蒼空の・・・ぼんの力が「やつら」に狙われるか分からんし、油断もできない。

かといって、警戒をしすぎて無理する訳にもいかへんよなぁ?

それに今は、俺らとは関係の無い葉月くん達もいる。

この子らの幸せを見届けなきゃ、あかんって誓ったから。

「龍さん?どうしたんですか?」

「何にも無いで?葉月くん、これからよろしゅうな。」

「はい。」

それはわかや、ぼんに対しても同じ事や。

経緯は説明できへんけど、守る観点からしたら一緒やと思うてるし山積みなのもまだまだたくさんあるのも分かってる。

分かってるからこそわてが、自分で決めた事や。

「龍さん。こっちお願いします。」

「分かった、今そっち手伝うわ。」

まぁ人数増えたけど、考えは一緒の方がええんやなぁって。

考え込んだって何にもならへん事ぐらいは、自分でも分かっとる。

分かっとるよ?でもさ、傷を負っている人を守りたいと思うんは間違っては無いで?

「エゴ」とか、「おせっかい」やって思われてもええ。

ただなそれを、わかぼんを差別したりせんでほしい。

正直、それでもそれだけでも「人の心」は壊れるんやからさ。

「それにしても、でかい荷物やなぁ~。💧」

タンスかなぁって思うぐらい、でかい荷物で中身の事は聞こうとか思うたけど。

正直聞くの、迷うやんか。

服とかやったら、まだええ。

下着類やったら間違いなく、セクハラやからなぁ~。

女の子の下着やったら間違いなく、あたふたするのは事実やし一応こっちも男やからなぁ?

40近いおっさんが、未成年の下着見て興奮したらそれこそ犯罪やんか。

「中身って、なんや?」

「下着だよ。服も入ってるし。」

あたふたしてしまうやんか。

大丈夫だって話したけど、それでも未成年やから聞いた時点で騒がしくなるやんか。

「もしかして、姉貴のだって思ってました?」

見た感じ、女の子っぽい服ばかりやったからそうかと思うたやん。

ハズイ。

「・・・変態。すいません、全部僕のです。」

びびらせんなやぁ~💧

まじで、あたふたしてしまったやんか。

でも、これを着た葉月くんって『男の娘』みたいでかわええんやろうなぁ。

ヤバイヤバイ、目覚める。

「いやらしい目で、見てました?」

だから理性ぶっ飛ぶ様な事、言わんとってや。

「見てへんよ?そんなんしたら、犯罪やんか。自分でも、分かっとるよ?未成年に手を出すなんて、葉月くんのお父さんじゃないんやから。」

あ、話したらまずかったのかなぁ?

「確かに・・・そうですよね。」

黙ってしまったのを確認して、少しやばいと考えた。

悠斗さんもこっちに気づいて、少しにらんだ。

悠斗まで、キレてしまったら厄介だって分かっているし本当に怖いから怒らせたくも無いしね。

まあすぐに葉月くんが、ニコニコしていたから怒られる事は無かったんやけどね。

一安心したなぁって。

怒られるのも嫌だし、説教三時間コースなんて嫌やからね。

「そこでサボってないで、こっちに来て手伝ってください。」

「へーい。」

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