第2話 これからの事

 組の入り口から出たわての後ろの方で、建物が原型を無くすかのように崩れ落ちた。

 すぐに「やつら」に火をつけられたんだと認識したわてらの目の前で、ショックを受けているぼんこと蒼空が大声で泣き叫んでいる。

「いや・・・嫌だ・・・。何で、こんな目に会わなきゃならないんだよ?」

「蒼空?」

「お父さん・・・お母さん・・・嫌ぁぁぁっ!」

 そりゃそうや。

 生まれてからずっと、ここにいたし蒼空にしたら何でってなるのも分かってる。

 正直わてだって、こんな事になるなんて分からんかったし。

 無事やって言っても、生きてるのはわて、わか、蒼空、頚嵐しかいない。

「危ないですよっ!」

「離してっ!お父さん、お母さんが家の中にいるのに何で助けないんだよっ!」

「おやっさんと女将さんはもう・・・。」

 火を放たれる前に、銃殺されていたなんて話せる訳ないやんか。

 正直わてだって助けたかったんや・・・?

 だけどわてが行った時には、既に周りに血飛沫があった状態で。

 銃殺したやつの顔は、はっきり覚えてない。

 わても殴られて、意識が飛びかかっていたから。

 ぼんわかを置いて死ねないと思うたし、そんな事をしたら二人に顔見せ出来ない。

 蒼空も、察してしまって涙が止まらんくなってるしわか・・・龍臣も怒りが込み上がってる。

「ちくしょ・・・何でだよ。」

わか・・・。」

「母さんや親父は・・・裏切った訳じゃないんだよ。言葉の掛け違いなんて、普通だったらあって当然じゃねぇか。」

 憎いのは、わてにも分かります。

 だけど今はどうしようもできへん。

 警察を呼ぶにも、「抗争に負けた」でばっさり終わるかも知れへん。

「今は安全な場所に、逃げましょう。ぼんも早く。」

 俺がぼん・・・蒼空の顔を見た瞬間、いつもの蒼空の状態じゃない事に気づいた。

「・・・嘘だって、言ってよ?ねぇ・・・。嫌だ・・・、嫌ぁぁぁっ!」

「蒼空っ!」

 もう一度蒼空の顔を見た。

「ふぅ、やっと出てこれた。」

ぼんですか?」

 頚嵐が蒼空の顔を、確認した。

「ああ、俺はもう一人のこいつだ。安心しろ、こいつには危害なんて加えないし加える気なんてないからな。」

 --今思えば、これが全ての始まりになるなんてあの時のわてらにはまだ知るよしもなかった。--

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