第1章 第1話 全ての始まりに新たな出逢い

 ---本当だったら、今すぐにでも「おやっさんと女将さん」を救いたかった。---

 だけど叶う事は出来なくて、あの時のわてはなんて無力なんだと思い知る。

 ぼんわかを守らなきゃならないのも分かっていたし、おやっさんは何よりも二人を好きでいたから。

 もちろん、赤の他人のわてらも家族として同じ様に見てくれた。

ここまで育ててもらったのに、他のチンピラにボロボロにされた時に助けてくれた。

 その恩を仇で返すなんて、わての・・・俺の威厳が許さない。

 今はぼんわかを、助けなきゃならんやんかっ!

 おやっさんと女将さんが、第一に守らなきゃならない二人の息子なんやから。


わかっ!ぼんを連れて、逃げてくださいっ!」

「馬鹿な事言ってんじゃねえよっ!俺らも一緒に戦いたいっ!」

「何言っとんねん!わかに何かあったら、俺がおやっさん達に顔見せ出来ないやないですか?!良いから早く逃げてくださいっ!」

「お前らも無事で、戻ってこい!」

「分かってます!」

 わかに見せられない・・・おやっさんが既にわての目の前で事切れているなんて。

「おやっさん・・・女将さん・・・わかぼんは無事やで。後は俺らが、責任もってお守りします。やから・・・お空から、見たって下さい・・・。必ず、仇は取りますから。」

 崩れ行く建物を見て、わての命も危なくなる。

 おやっさんと女将さんの遺体を置いて行くのはしのびないが、堪忍したって下さい。

 骨を拾えなくて、ほんまにすいません。

「龍さん!逃げてくださいっ!」

 頚嵐が叫んだその時、火が着いたガレキがわての目の前に落ちてきた。

 仲間も「やつら」に射殺されてる。

 こんなのぼんになんて見せられへん。悲しみにくれるぼんの顔を見るのは、勘弁やしそれじゃなくても両親が目の前で殺されてるんだ。いつ精神崩壊力の暴走が起きたっておかしくない、それだけ今の惨劇だけで知れている事。

 でも正直かばって死ぬなら、後悔はしない。

 流石におやっさんと女将さんに、怒られそうだけど。

ぼんわかが、許してくれないかも知れない。

だけど、少しは年上としての・・・血の繋がらない『』としての責任をはらせてくれや。

ぼんわかを守れるんやったら、この命散らす覚悟は出来てるんよ。

大事な人やから・・・。

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