第5話 触らぬ神に祟りなし

思い出せないことがある。


そのことについて考えようとするとスマホが鳴ったり人に声をかけられ用事を頼まれたりくしゃみが出て鼻水が止まらなくなったりする。だから考えることができないまま、忘れてしまう。


それでも時折思い出し、考えようとしていたのだ、当初は。しかし、そのたびになんやかんやで思考は中断させられ、考えるのを忘れてしまう。


で、とうとう何を考えようとしていたのか思い出せない始末となった。ただ何かを考えようとしていた、ということだけを覚えているばかり。


思い出せないはがゆさのせいか、とても大切なことだったような気がするのだけれど……。


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