第十四話 スズトニアの行進
「あぁ偉大なるスズトニア!
われらが行進は止められず!
寄せくる敵を薙ぎ払い!
地獄の業火で焼き払う!
神の使い!ユキロの魂!
大義は我らが総統に!」
軍歌を歌いながら、スズトニアの兵士が勇ましく行進する。
「いやぁ。素晴らしいですね。」
「兵士一人ひとりの士気が高い。」
そう呟くと、一人の男が寄ってくる。
ICAの審議官、カルロス・マタドールだ。
「皆さんお揃いで、今日は珍しい取り合わせですね。」
そこにはグルリ諸島のグマンタルのユロム・ミモルとイバムのジョッチ・グリア、ペチアのタクラ・ハティアに世界GDP2位のフェザストュールのキュリヴ・ハイルの姿があった。
ダッチはこう続ける。
「このメンバーで何か企みごとでも?」
そうニヤニヤしながら尋ねると、フェザストュールのキュリヴがカルロスの方へやってきて、小声で話しかける。
「ランライドはやりすぎたな。あれでICAの疑惑が更に深まった。それと、今のバビミアは少々手こずるだろうな。今までのようにはいかないと思うことだ。」
「一枚噛んでいるということですか?」
カルロスがキュリヴを見やる。
「スズトニアのオーダーだということは分かってる。お前が傀儡として働いてることも、、、、」
スズトニアの儀仗隊が見事な集団行動で、観客達を湧かせる。
「我々は神にこの世界を導く使命を与えられた先導者だ。貴様らが先導者の導きに背くなら、神の如き力で粉砕されるであろう。」
それを聞いたキュリヴは高らかに嗤う。
フフフ フハハハ ハハハハハ ハハハハハ
周囲の目がいっきにキュリヴに注がれる。
「君はまだそんなエスノセントリズムを信じているのかね? 愚かだな。君ともあろう人間が。それが本音かね?巨大経済圏構想も表面上は綺麗に飾っているが、実際はスズトニアの帝国主義の権化にすぎないのだな。」
「我等が主、ギユコスはそう望んでいるはずだ。」
「ならばそのまま世界に発信すればいいではないか。
それなのにまわりくどいことをしているということは、自分が考えていることが現実的でないと分かっているからだ。
つまりお前は幼い頃から教えられた自民族至上主義が壊れてしまうことがこわいんだろう?」
「だまれ。お前達にわかる言葉で教えてやってるだけだ。」
キュリヴはやれやれと首を振ると、
「まぁ今回はここまでにしよう。ここでトラブルを起こすとモヤーント総統の機嫌を損ねてしまいかねない。」
そう言うと、
「じゃあまた会おう!カルロス君。」
キュリヴはユロムとタクラ、ジョッチを連れて、別れを告げる。
カルロスは言いたい放題言われ、気分が悪そうに歯ぎしりする。
その頃スズトニアの最新ステルス戦闘機がフレアを撒きながら空を通過し、観客の感情は最高潮に達していた。
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