第十三話 市街戦


一方その頃バビミアの沿岸部から上陸した都市部制圧部隊も苦戦を強いられることになる。


「民間人が誰もいねぇな。」

「いいじゃねぇか戦いやすくて、、、」


そんな会話が兵士達から聞こえてくる。

「それはあちらも同じということだ。」

隊長がそう釘を刺す。

兵士達の間に沈黙が走る。

「まぁ、ICAの軍事力なら余裕でやっちゃうんじゃないっすか?」


その兵士は複数のICAの自走対空砲を眺めて呟く。

だが、隊長は

「油断は禁物だ。なぜなら今までの国と違って、奇襲が読まれる可能性があるのと、あともう一つ、それなりの軍事力をもっているからな。」


そんなことを話しながら、バビミアの深奥部へと向かう。

ここまで何も起こらないと逆に不安が募ってくる。

「隊長。不気味ですね。静かすぎますし。」

「勘がいいな。私も同じ考えだ。おそらくどこかで待ち伏せしているんだろう。」

部隊の中で緊張度が増す。


ブウゥウウウウン


奇妙な音が聞こえてくる。

「なんすかね?隊長。」

「おそらくドローンだろう、上空を警戒!!」

隊長がそう呼びかける。

そして、

自走対空砲がビルとビルの間を通ったその時だった。

チュドォオオオン

前列一両目の自走対空砲がその左の横っ腹に強烈な一撃を受け、右横から火を吹かせる。

すると前方の奥の方から巨大な車サイズのドローンが4機、右横と左横のビルの影からプロペラの轟音を轟かせ、現れた。

ドローンは2門の空対地砲を抱え、もはやりんごのようなサイズのカメラをそれぞれ両目の位置に装着されていた。

ウィイイイイン

そしてその2つの眼と銃砲がこちらを向く。

「ヤッベ。」その刹那2両目の自走対空砲がボロボロに破壊され、その周りにいた兵士はミンチになる。すぐさま3両目の自走対空砲が応戦し、ドローンのプロペラを破壊し、墜落させるが、その後方に控えたドローンが機体の下に格納されていた筒状の物体を展開し、その中から誘導ミサイルが放たれる。

そのミサイルは見事に至近距離にいる3両目の自走対空砲を粉々にし、残るは1両のみになる。

「クッソ。紙飛行機を使えっ!」

生き残った数人で紙飛行機(手投げ式自動追尾ドローン。手から紙飛行機のように飛ばすので紙飛行機と呼ばれている。)を用意し、それぞれカメラの照準を合わせる。

照準の青緑の枠の色が赤色に変わる。

「ロックオン完了!!」

「投射!!!」

紙飛行機を放ち、ビルの中へ立てこもる。

紙飛行機は宙を舞いながら機銃を躱し、後ろに回り込んで、着弾した。

ドゴオオォオオオオ

ドローンは空中で爆発し炎上しながら勢いよく落下してくる。

その衝撃で砂埃が舞い上がった。

残った1両が後ろに下がりながら、最後のドローンを撃墜し、すべての巨大ドローンが撃破される。


「やった!」

「片付けたぞ!」


ビルに逃げ込んだ俺達は歓喜する。だが喜んだのも束の間、、、

最初に1両目を破壊したであろう敵の戦車が現れ、一瞬で装甲を破壊する。

味方の最後の自走対空砲はなすすべもなく2発目を撃ち込まれ大破した。


部隊全員言葉を失う。

だが隊長が「諦めるな!」

とみんなを鼓舞する。

「あの戦車を片付ければこちらにも勝気がある。下にいる戦車にグレネードを投げ、襲撃しよう!」

隊長が提案すると

みんなも覚悟を決めたのか

「分かりました隊長!」

それぞれが携行しているグレネードを一個ずつ取り出し、隊長の指示を待つ。

戦車は悠々とそんな気も知らず路上を移動する。

「俺の合図で投げるぞ!!5,4,3,2,,,,」

「隊長?」

すると、横では隊長が息絶えていた。

兵達は呆然としてしまう。だがすぐに我に返ると、「狙撃か?」

みんな伏せて窓の下に隠れる。

が、しかし突如手榴弾が投げ込まれ、俺達の近くで爆発する。

兵士の一人は今までの走馬灯のようなものが駆け巡っていた。

俺は生まれて間もない頃に内戦で両親を失い、

孤児で難民キャンプにいた。俺はICAに引き取られ、俺はそこで訓練をつみ、ICAの傭兵になった。俺はICAには感謝してる。傭兵になるという確約だけでここまで育ててくれたことに、、、だが、所詮俺は一兵卒、ICAにとってはただの捨て駒。8万人の兵士の一人にすぎない。自分のやってることが正義かどうかは分からない。ICAの野望に加担しているだけかもしれない。おそらく胸をはって生きてきたとはとても言えないだろう。もし神に会えるなら、その時に聞きたい。


「俺は、何のために生まれてきたのか。」

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