第3話 僕の知らない
僕は基本的に外へ出ない
出る理由とか予定も無いし、特別外へ出たいと思う事はないから
ただしヘデラは仕事だからと平日の昼間は家を空けてしまう、当たり前だけれど
その間僕は絵を描いたり、本を読んでみたり、家の中で出来るような運動をしたりしている
所謂ニートとかヒモとか言われるような立場だ
一応駄々をこねて在宅の簡単な仕事はさせてもらえるようにはなった
それでも言ってしまえば高校生のバイト代程度しか稼げていない
基本的に2人のコーヒーとかお菓子代として使っているけど、家賃とか食費光熱費とかはヘデラが払ってる…
自分も何かしらの生活費を払える程度にはなりたいがヘデラには毎度毎度何もしなくていいからと言いくるめられてしまう
ヘデラもきっと分かっているのだろう
僕の鈍臭い所が人に対して迷惑をかけてしまったり、それでまた酷い扱いをされたり、だからこそ止めてくるのだろう、でも役に立ちたい
何より僕が僕を許せないから
「はぁ、僕ってこのままでいいのかな……」
と定期的に思うし、ヘデラが居ない時はこうしてため息と一緒に愚痴をこぼす、聞いてくれるのはここに来た時にプレゼントしてもらったクマのぬいぐるみの「テディ」だ
抱き抱える程度の大きさのあるこの子を抱きしめながらこうして僕の愚痴を聞いてもらう
ヘデラとここで2人で暮らせたりご飯を作ってくれるのはとても嬉しく思うしありがたい
でも自分は与えられるだけの立場でいいのか?
ただ甘やかされ飽きられるのを待つだけのような今のこの状況のままでいいのか?
そんな考えが頭の中をグルグルしていく
君にとっての僕は何?僕の存在価値って何?
答えが欲しくても彼は今居ない
今ここに居るのは話を聞いてくれるのはテディだけだ
ヘデラから貰ったからだろうけど、テディと居ると不思議とヘデラと一緒に居るような安心感がある、元々ぬいぐるみのふわふわしたこの感触には良い効果があるらしいしきっとそれだろう
早く帰ってこないかな
テディと一緒に居るのも安心するけどやっぱり恋しくなる
早く帰ってきて欲しいな
試しに携帯で
「寂しいな」「帰りどれくらいになりそう?」
と送ってみたけど、すぐ消してしまった
そうだよ仕事で忙しいはずなのにこんな事送るのは間違っているよね、なかった事にしよう
でもヘデラはそのままだと心配して色々聞いてくるだろうし怒らせてしまうかもしれない
「ごめんね」「この間買ったお菓子見つからなくて連絡しちゃった、見つかったから大丈夫」
これだけ言えばヘデラは分かってくれるだろう
大丈夫だよね
「寂しいけどテディが居れば大丈夫だよ〜よしよし、いつも一緒に居てくれてありがとうねぇ」
傍から見たら不審者極まりないが
実際にこうなると話し相手が居なすぎて無機物に話しかけるしか無くなるんだ
だから昔ここへ引っ越した時にもらったぬいぐるみに沢山甘えて沢山話しかける
そうして10分も経っただろうか、玄関から鍵を開ける音が聞こえてきた
帰るのが早い、どうしたのだろう?
体調が悪くて早退?
急いで玄関へ向かうとヘデラが居た
体調はパッと見た限りでは悪そうに見えない
「なぁ、俺に隠し事って酷くないか?」
え?バレた?
いやでも違和感のないように誤魔化したはずなのにな、どうしてだろう……
「そんな事ないよぉ…?」
ヘデラがこめかみの辺りに青筋を立てている、本当に不機嫌な時の怒った時のサインだ
こうなってからじゃもう何を言っても遅い
どこで間違えたんだろう、連絡したのがダメだったのだろうか?もうそんな事を考えても仕方ない、今は彼をなだめないと
「ここへ来る時隠し事はしちゃダメって約束したよね、全部相談してくれって、俺だけ頼れって言ったよな?なぁ……」
ダメだ本気で怒ってる、なんで?どうして?
本当にどうしよう
「……買い出しはして来たから夕飯作る。待ってて。」
「わかった……」
そう言って僕はテーブルの前に座って待つ事にした、多分ヘデラはテレビでも見て待ってろと言ってくるだろうけれど今は見ても内容がきっと頭に入ってこないだろう
こんな状況で呑気にテレビに夢中になんてなれっこない
ヘデラが料理をする音がそんなに距離は空いていないはずなのに凄く遠くの音のように聞こえてくる
ご飯が出来たとして僕はヘデラに何を言えばいいのだろう
この件について謝るべき?ただ料理を作ってくれた事に感謝するべき?早く帰ってきた事に喜ぶべき?どうしたらいいの?
あぁもう、分かんないよ……
枯れる花 ニナ @nina114514
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