第1話

「_______となります。………朝霞さん?」


「あっ、えっと、はいっ大丈夫です。わかりました」


「お辛いとは思いますが妹さんとよく相談されてお決めになってくださいね」


現実感とは無縁の場所に立っている、そんな気分であった。妹が不治の病を患った。現代医学ではどうしようもない、というやつだ。

様々な副作用に悩まされるができる限りを尽くし延命治療を行うか、残された時間を家族と過ごすことにあてるか、それを決めるようたった今医者に言われたところである。

両親が早死にしている私たちにとって姉妹とは唯一の家族であった。両親のいない生活、大変なことや寂しい思いをすることもあったが二人で支えあい生きてきた。私にとってかけがえのない大切な存在であった。そんな妹が倒れたのは一月ほど前のこと。いつものように学校を終えアルバイトに向かおうとしていたその時病院から妹が小学校で倒れ搬送された、と連絡があった。私が病院に着いた時には既に妹の治療は済んでいたが依然原因不明の高熱などに悩まされていた。度重なる検査の結果、難病であると判明したのがつい先ほどのことだ。

妹になんと伝えたら良いのか。まだ十一歳の子になんと伝えたら。もう死んでしまうことが決まっているかのような話、そんな話をとても私の口からは伝えられない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

タイトル(未定) 藍堂 才花 @ajimu_7

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る