11問目 こっそり

 一方、見事彩と親太郎を閉じ込めた四郎と法史は離れた所から教室を見ていた。実は数十分前に既にドアを開けて、いつでも出られるようにしていたのだが、未だに二人が出てくる様子はない。二人はただただ廊下の曲がり角から顔を覗かせて二人を待っているだけだった。

「親太郎さん、うまくいっているのかな」

「もし、姉さんを泣かせていたら、ただじゃすまないけどね」

 四郎は姉のいる教室を見ながら殺気を出した。

「こっちだって、親太郎さんに何かあったら、ただじゃすまないぞ」

「張り合わないでくれる?面倒だから」

「いいではないか。友達っぽい」

 隣からワクワクしている雰囲気を察し、四郎は溜息をついた。

「あっ、出て来た」

 教室のドアが開き、四郎は出していた殺気を引っ込めながら出てくる二人を見つめた。先に出て来た姉の目は赤くなっており、泣いていたのが明らかだった。

「あの野郎」

 四郎は舌打ちをした。しかし、その後に出て来た親太郎も明らかに泣いた後だった。

「この場合、どうするんだ?両方、泣いたな」

 様子を見る四郎の頭の上から同じように二人を見ている法史に四郎はまた溜息をついた。姉の泣いている姿は見たくないが、あの清々しい顔から悪い涙ではなさそうだ。

「しょうがない。ここから離れるよ。バレてしまっては大変だ」

「わかった」

 今日まで現役で派閥リーダーをしていた彩と影のナンバー2の親太郎のことだ。すぐに自分達の存在に気づくだろう。何を言われるか、わからないし、こんなところを弟と後輩に見られたくはないだろう。そう思い、二人は静かにその場を後にした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る