4問目 異変
親太郎とのやり取りを四郎に見られ、彩は散々家族にからかわれた。友達が少なく、あまり社交的じゃない彩に仲の良い男の子がいたなんて家族は誰も知らなかったのだ。
「どこよ、彩の彼氏」
「違うってば」
「照れなくてもいいじゃんか」
入学式と派閥説明会を終え、カメレオンに所属した彩を挟む姉二人、
「連絡は?」
「あたしも向こうもまだ携帯買ってもらえてなかったから交換していない。しかも、クラス違うし、お互い忙しいみたいで合格発表以来会えていない」
派閥が決まっているのに派閥説明会に参加したが、あまりの人で親太郎の姿すら見つけることができなかった。
「そう落ち込まないの。チャンスはあるわ」
お姫様のような髪型をする美黒は彩を抱きしめた。
「そうだよ。落ち込むなって」
パンクロックスタイルな木ノ爬も彩の肩に手を置いた。
一方、親太郎は同じクラスの
「え、派閥に入らない?マジかよ、何で」
「親太郎、森さんのこと知っているか?」
「あれだろ?この学年のプリンセスって名乗っているやつ」
「そう。俺、あの人の傍にいたい」
顔を赤く染める友人に親太郎は言葉に詰まった。
「大丈夫なのかよ」
「さっき、彼女に告白した。傍にいさせてほしいって」
「は?もう?」
桃太郎の行動力に親太郎は目を丸くした。白雪への憧れに背中を押され、勢いのまま桃太郎は白雪に「傍にいさせてほしい」と告白していた。
「白雪さんはリーダーになりたいんだって。そのために屈強なナイトが欲しいらしい。だから、俺、派閥には入らない。白雪さんを守りながら、一番のナイトになる」
白雪は傍にいさせる条件として、自分をリーダーにするために強くなること、派閥に入らないとなると敵も増えるから自分を守ることを桃太郎に言った。彼はその条件を嬉々として吞んだ。
「おいおい、マジかよ。冗談だろ?」
「そんなわけないだろう。俺はやる」
「一人で大丈夫なのかよ」
「何とかなる」
桃太郎の瞳は燃えていた。その瞳が心配だった。憧れに強い想いを向け、恐れずに突き進む姿は勇ましいかもしれない。しかし、同時に怖い。憧れがなくなった時、突き進めなくなった時、彼はどうなってしまうのか。親太郎はそう思ってしまった。彼がどんな姿に成長するのか、友人として純粋に応援したい、見守ってやりたいと思う反面、どこかにある桃太郎の脆さが不安だった。
「よし、俺も一緒にやるよ」
何かあった時は自分が支えてやろう。その気持ちが強かった。
「いいのか?」
「お前一人じゃ、大変だろ。俺がお前をサイキョウのナイトにしてやるよ」
親太郎は拳を桃太郎に突き出した。
「ありがとう」
桃太郎は瞳を潤ませた満面の笑みで、親太郎の拳に自身の拳を合わせた。
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