幼馴染 II

己の幼馴染である女は、実に変な女だった。箱入り娘でお転婆娘。共に柿の木から落っこちた仲であるが、どうして、こんな己を好いているのかてんで見当がつかん。何が奴の琴線に触れたのかサッパリである。もっと他にるだろうに、例えば己の片割れだとか、己たちよりも長いこと一緒に居る男だとか。よりにもよって己とは実に趣味が悪い。着物の趣味も人形の趣味も悪かないのに、ヒトの趣味が悪い。こりゃア親御は大変だろうな。己は口角を上げながら学校や屋敷での話を聞いてやる。あの頃登って折っちまった柿が今年も実をつけただとか、大上の坊ちゃんとパピヨンにチョコレイト食べに行ったとか、学友が一番賢くって、あたしどうしたらお隣に並べるかしらだとか。そりゃお勉強しかないだろうこのお転婆め。今度一緒にパピヨンに行きましょうねと笑う顔は悔しいがまァ可愛いもんだと思った。

なんでこの御令嬢は、男でなくなっちまった己みたいな奴を好きになっちまったんだか。

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