第19話 夏美の居なくなった日々…
手紙にはこう書かれてあった。
「一緒に居られなくなって…本当にごめんなさい!
いつもいつもまーくんに辛い思いをさせてしまって…ごめんなさい。
でも、まーくんはしっかりしてるし、精神的にも強いから一人でも耐えられる。
かっくんは…本当にダメなの…
暫く支えて、彼が独り立ちできるまでサポートします。
私だって本当はまーくんと離れ離れになりたくない…
でも就職するまでは私も我慢します。
きっときっと戻ってきます。
それまで…さようなら…」
僕は手紙を握りしめ、独り泣き叫んだ。
・・・
それから毎日数回メールを交換を続けた。
夏美が元気に暮らしている事が知れて最初は嬉しかった。
でもそのうちメールの頻度は少なくなっていき、
毎日1回の交換になっていった。
何で?と質問すると
彼女は専門学校に行く準備をしているとの事だった。
専門学校って…そのお金はどうするの?と質問すると
同居人の親が出してくれるのでそれに甘えると返事が来た。
それはどういう事?就職活動が終われば戻るって話じゃないんだっけ?
そんな事受け入れたら戻らないって事になるじゃないか!!!
と返事をした所で初めてメールが途絶えた…
その日初めてメールが届かなくなった…
僕はメールを送り続けた。
どういう事が説明してよ?
何でメールの返事くれないの?
ここを出て行ったのはもう二度と帰って来ないって事だったの?
…また…嘘をついたの?
…騙される方が悪いって言いたい?
…もう…何もかも嫌になった…さようなら…
最後にそう書いたがやっぱり返事は来ない…
本当に僕は何もかも嫌になった。
気づくと台所から包丁を取り出してそれを握りしめている自分がいた…
何をしているんだろう?不意に我に返り、僕はブルブル震えていた…
ここまで育ててくれた両親の顔が浮かんだ…
こんな事はいけない…そう思い、
包丁を放したかったが、手が硬直して中々放せなかった。
冬の日の真夜中で暖房もつけてなかったという事もあり、
心身共に寒かった。
布団に包まり、眠れず、ずっとずっと震えていた…
深夜、外から車が止まる音がした。
ドカドカと階段が上る音が聞こえ、僕の部屋のドアが開いた。
そして
「まーくん!!!無事なの!?」
夏美の声がした。
布団をはがされ、僕の無事を確認しにきた。
僕はブルブルと震えながら夏美を見た。
夏美は目に涙をためて
「まーくんまでこんな事しないでよ!!!
まーくんは強い人でしょ!?
まーくんまでこんな事しだすと私もう…どうしたら良いか分からないよ!!!」
そう言って俺を抱きしめた。
そしてその日一日だけずっと僕の傍に居てくれた。
色々と話をした。
僕が危険な行動をほのめかすメールを送ったから深夜レンタカーを借りて、
僕の様子を見に来てくれたらしい。
その日は専門学校の見学日と交流会でメールも途絶えただけらしい。
ただ、専門学校に行くお金を同居人の親に借りるのは、
向こうの親から息子の面倒を見て貰っているお礼という風に言われたらしい。
でも、その好意の裏には、もう同居人と結婚する前提がある事を俺が伝えると
夏美は断る事を納得してくれた。
良く言えば純粋、悪く言えば世間知らず…夏美の危うさは相変わらずだと思った。
同居人とはどういう話で戻って、今日はどういうつもりで泊まれたのかは
聞いても答えてくれなかった…
本日以降メールのやり取りも頻繁にできなくなるとも言われた…
多分、僕に言えない嘘を夏美はついていると思った…
今回僕も凄く迷惑をかけて世話になったし、
僕自身余裕もなかったので、それ以上は追及しなかった…
同居人の就職活動が終わるまでサポートする、それが終わったら戻って来る。
その夏美の意思を信じるしかなかった…
いや…僕はあの時…夏美の意思に縋っていた…
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