第17話 人生最悪の日… その2

夏美が必死で同居人を揺さぶっていると、幸いにも同居人は意識を取り戻した。

そして夏美を見ると彼女に抱きつき、

「夏美~~~!!!」

と名前を呼んで泣き始めた。


夏美も一緒に

「何でこんな事したの?

 馬鹿!!!馬鹿!!!

 ううっ、うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

泣きだした。


同居人は傍目から見ると別に大丈夫そう…そう思い僕は外に出た。


同居人と抱き合って泣きながら懺悔をしている最愛の人の姿なんて

見たくないからだ…


同居人に同情という気持ちはなかった。

夏美は酷く取り乱していたが、

僕からすれば自殺を図ったと言えるほどのもの?という感覚だった。


風邪薬の大量摂取は確かに良くはないが

薬の瓶に元々入っていた数とこぼれていた数そこから概算で逆算すると、

20~30粒程度の摂取…

常習的なオーバードーズなら分かるが、たった一日程度で死に至るとは思えない。


真実は分からないが、僕は夏美の気を引くための少し危険な演技をしたのでは?

とさえ疑った。

そんな風に考えてしまうのは俺の心が薄汚れているからだろうか…

はぁ…この先、執念深い同居人を諦めさせ、夏美と付き合っていけるだろうか…


憂鬱な気持ちをを抱きながら僕は同居人のアパートに戻った。


部屋では少し冷静になった夏美とまだ調子が戻らず、

夏美に膝枕をして貰い、横たわっている同居人がいた。


夏美が不意に言ってきた。

「私達話し合ったの…

 このままじゃ、かっくんがまた危険な事を考えちゃう…

 だから私…ここに残る!かっくんの就職活動が終わるまでここで一緒に暮らす!」


「…はぁ…どうしてそういう結論になるの?

 一緒に暮らしている僕との生活はどうなるの?」

僕は半分呆れて言った。


「まーくんは、一人でも大丈夫だから!」


その言葉を聞いて僕は頭に血が上った。

「勝手に分かった気にならないでくれよ!!!

 僕がどんなに我慢しているか分かってる?

 いい加減にしてよ!!!

 最愛の人が別れた元彼の所で暮らすのが大丈夫なわけないでしょ?

 そもそも、彼の前の彼氏にかなり強引な別れ方させたって言ってたじゃない!

 そんな事を自分でやっておきながら、

 自分がその番になったらこんな騒ぎを起こすっておかしくないか?

 騒いだもの勝ちなの?」


「…で、でも…このままかっくんが今年も就職できなかったら…

 かっくんのお父さんとお母さんに申し訳が立たない!

 私…かっくんのご両親に会った事があって、

 涙ながらに支えて欲しいって頼まれてたの…」


「別れたんだよね?

 じゃあそれって僕たちとは関係ない話なんじゃないの?」


「実際にこんな事になっているし…

 そういうわけにもいかないよ!まーくん!」

夏美は一歩も引かなかった。


「僕よりも彼の方が大事だと言いたいの?」


「そんな事言ってないよ!

 これはそういう問題じゃないよ!

 分かってまーくん!!!」


「どうあっても彼の就職活動が終わるまでここで暮らして支えると?」


「うん!」


「はぁ…」

僕はため息をつくしかなかった。

もう僕にとってのベストな解は望めない。

じゃあ最悪を回避すべきと僕は考えた。

僕にとって回避すべき最悪の状況は、夏美がまたここで再び同居することだ。

そう思った僕は二人にある提案をした。


「ここで二人で同居する事は認められない!

 妥協案として、僕と夏美が暮らしている所に彼が就職活動期間の間だけ

 暮らすのはどうだろう?

 その方が僕にとってはまだマシだ!」



 


 

 


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